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【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、学園で無自覚に無双する〜  作者: 茨木野
第4章

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59.勇者、神すら殺す



 黒幕である学園長を、俺と弟は追いつめている。


「奥の手すら使わせてくれないとは……見事ですよ……ユリウス君」


 右腕を失い、学園長アリシアは、額に脂汗を浮かべて言う。


「それほどまでの理不尽な強さを持ちながら……なぜ、世界に破滅をもたらそうとしないのです?」


「簡単だ。そんなもんより、弟の成長を見守る方が万倍も楽しいからな」


「兄さん……」


 俺は弟の頭をなでる。

 ガイアスは笑みを浮かべる。


「……どうやってもあなたは、魔族(わたし)のものとならないのですね」


 ゆらりとアリシアが立ち上がる。


「わたしのものにならないのなら、壊してやる……!」


 学園長は右手に指輪をはめる。

 その手を自分の心臓に突き立てた。


 ザシュッ。


「わが……命を……対価に、顕現せよ……【秩序の女神】よ!」


『なにっ、神だと!?』


 その瞬間だった。


 アリシアの体を中心として、立体的な魔法陣が出現する。

 

 赤黒く輝くと、魔法陣のなかから、3メートルほどの巨大な骸骨が出現する。


 ただし上半身だけだ。


 腕は10本。

 それぞれに剣や鉈など、10種の異なる武器を持つ。


「な、なんて膨大な魔力……立っているだけで……辛い……これが、神……?」


【オロォオオロオオオオオオオオオ!】


「は……ははぁ……! どうだ、これが【秩序の女神ホーラ】だぁ……!」


 アリシアがその場に崩れ落ちながら言う。

「そんな……魔族は神すら使役するなんて……」


「いや、そんな力は持っていなかったな。おそらくさっきの指輪の効果だろう。【誰か】からもらったんだろうな」


【オロォオロオオオオオオオオオ!】


 女神ホーラは、大鎌を振り上げる。


 回避行動を取ろうとする。

 だが、突如体が動かなくなった。


「いや、【時間停止】か」

【オロォロロォオオオオオ!】


 止まった時間の中で、ホーラの鎌が俺を袈裟に斬る。


 ガキィイイイイイイイイン!


 時がまた動き出す。


「なっ!? ば、ばかな……時間を止めたのに、どうして動ける……!」


 虫の息のアリシアが、目をむいて言う。


「え、時間停止対策くらい、事前に用意しておくのは常識だろ?」


「2000年前どんだけ殺伐としてたんだよ、兄さん……」


 世界が停止すると同時に、自分の周囲に反魔法の結界が展開するよう組み込んであったのだ。


「よっと」


 俺は魔剣を振るう。


 スパンッ……!


 女神ホーラが、一刀両断される。


「やったか!?」


【オロォオオオオオオオ!】


 ホーラの体が、まるで逆再生するかのように、元通りになる。


「そんな……!」


「はっはー! ホーラは時間と秩序を司る……! いくらユリウスの攻撃が強力だろうと、時間を戻せばダメージがゼロだぁ!」


 アリシアが勝ち誇った笑みを浮かべる。


 魔族は生命力が段違いなので、瀕死の重傷を負ってもしばらく生きているのだ。


【オロォロロォオオオオオオオ!】


 ホーラは10の武器で、俺めがけて、目にもとまらぬ斬撃を放つ。


 ガキンぐしゃっバゴンッずばんっドガンッ!


「ホーラの持つ武器はすべて【神器】! 一撃で相手を即死させる武器だ! この速度で、この手数。かわせるわけがなぁい!」


 ぐぉ……! とホーラが武器を持ち上げる。


 10の武器が、また俺めがけて振り下ろされる。


「死ねぇえええええええ!」


 俺は魔剣を構えて、【攻撃反射パリィ】を放つ。


 パリィイイイイイイイイイイン!


「なっ、なにぃいいいいいい!?」


 ホーラの武器をすべて弾き返す。


 バランスを崩した秩序の女神は、仰向けに倒れる。


 ずずぅううううんッ…………!


「そ、そんな馬鹿なことがあるか!? 神器による神速の連続攻撃を、一度のパリィで弾き返すなど!?」


「え、たった腕10本程度で何言ってるんだ? 腕が100本や1000本のやつ、神には普通にいるだろ?」


 愕然とした表情のアリシア。


「す、すでに神との戦闘経験があるというのか……!」


「もちろん。倒し方も心得ているよ」


 倒れている神に向かって、俺はゆっくりと歩く。


「は、はんっ! 馬鹿馬鹿しい! 神を倒すことなど不可能! なぜなら!」


「神は神にしか殺せない。けれど神は人間を殺せるからだろ?」


「なっ……!?」


 驚愕するアリシア。


「あ、あり得ない! 勇者がいかに強かろうと、おまえはただの人間だ! 神を殺すことなど不可能だ!」


 一方でガイアスは、確信めいた表情で言う。


「馬鹿だね、学園長。兄さんに、敗北の二文字はないんだよ。だよね?」


「おうよ。【霊装展開】」


 その瞬間だ。


 カッ……!


 聖なる光が、天井を突き破って、俺に降り注ぐ。


 まばゆい光は俺の体を照らし、服と髪の毛を変化させる。


 学生服から、タキシードのような純白の衣装に。


 髪の毛は長く伸び、日輪のごとく輝く。


「な、なんだその姿はぁああああ!?」


『これぞ【霊装】を身に纏った、勇者ユージーンの真の姿だ』


 俺の体は浮いている。

 神格化した俺は、この世界を縛る重力の枷から外れたのだ。


「殺せぇえええ! ホーラぁあああ!」


【オロォオオオオオオオ!】


 女神が大鎌を振り上げる。

 こりもせず時間を停止させる。


 だが魔法陣は展開させない。

 必要ないからだ。


 ゴオォオオオオオオオオオ!


 空間を削り取るような強烈な一撃を放ってくる。


 俺はその軌道を完璧に見切り、人差し指を立てる。


 鎌は俺の指めがけて、まるで吸い込まれるかのように振り下ろされる。


 ビタッ……!


「な、なんだ今のは!? まるで未来を予知してたかようだ!」


「ああ、【予知の精霊】の力を使わせて貰った」


「精霊!?」


「霊装は人の身で神の姿になる技術。世界に存在する精霊と一体化することで、俺の肉体は今神と同等となった」


 俺の体には今、数多くの精霊たちが宿っている。


「俺は9999の精霊と契約している。おのおの特殊な力を持っていて、彼らの力をすべて使えるんだ」


「は……はは……もうなんでもありかよ、兄さん……」


 俺は右手を前に突き出す。


「終わりにしよう」


 コォオオオオオオオオオオオ!


 俺の体から聖なる光が噴出する。


 それは俺の右手に宿り、純白の光る剣へと変化する。


「く、くそおぉおおお! 殺せぇええ!」


 ホーラが10ある武器を合体させて、超巨大な鎌を作る。


 俺は剣を構えて、祝詞のりとを唱える。


「精霊よ、悪鬼滅殺の刃となりて、はらたまい、清めたまえ」


 俺は光の剣を両手で構えて、天に掲げる。


 ゴォオオオオオオオオオオオオ!


 それは強大な光の柱となって、地上をあまねく照らす。


「【神滅天光剣】」


 ズバァアアアアアアアアアアアアン!


 黄金の巨大な波動となりて、前方へ向かって射出される。


 太陽のエネルギーをそのまま凝縮したかのような一撃は、あらゆるものを滅する刃。


 直線上にいた女神は無論、アリシアすらも飲み込む。


 さらには地下ダンジョンにいたすべての敵を消し飛ばし、もっと言えばダンジョンすらも消滅させる。


 光は突如として消える。


 すると、壊れた壁や天井は、何事もなかったかのように元通りになった。


『破壊と創造、ふたつの属性を持つ最終奥義だ。殺す必要のないものはこうして再生される。まこと、見事な奥義だ勇者よ』


 すべてを終えた俺は、霊装を解く。


 後ろで腰を抜かしている弟の元へ行く。


「立てるか?」


「……ちょっと、無理」


 俺は弟をお姫様抱っこする。


 普段は嫌がるのだが、今日ばかりはおとなしくしていた。


「なんかもう……次元の違う強さだね、兄さん」


「え、こんなの普通だろ?」


 ガイアスは俺を見上げると、苦笑していう。


「やっとわかったよ。勇者神にいさんからすれば、これが普通なんだね」

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― 新着の感想 ―
[一言] そもそも論として魔神とて神の字を使ってる以上神だよな?ソイツを殺した時点で神殺しでしょ(笑)
2022/01/22 20:59 退会済み
管理
[気になる点] 右腕を失ったのに、どうやって右手に指輪をはめるんですか? [一言] 弟君がどんどんブラコンになっていく……。 主人公もだけど。
[気になる点] 話の最初では右手を失ったとあるのに、その後すぐに指輪を右手にはめたと言うのは矛盾が生じていると思うのですが如何でしょうか?
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