49.勇者、拳豪の前で弟と模擬戦し驚かれる
弟と約束を交わしてから、2週間後。
今日の1限目は、実技の授業だった。
教練室にて。
「今日は実技の授業に、拳豪【ケンゴ・ミカヅチ】様が見学に来ていらっしゃる! 失礼の無いように!」
実技の先生の隣に、筋骨隆々の大男が立っている。
胴着を着たこいつが、現【拳豪】か。
「諸君! 世界最強の武闘家に見てもらえることなどそうそう無いぞぅ! 今日はみっちりしごいてやるからな、覚悟しておけ!」
「「「はいっ!」」」
同級生達は拳豪にたいして、尊敬のまなざしを向けていた。
「では諸君! まずは君らの実力を知りたい。2人ひと組で組手するように!」
こうなると大抵、俺の周りにはぽっかりと人が空く。
「ふんっ! 相変わらず不人気だね、兄さんは」
弟のガイアスが、俺に近づいてきた。
「まったく、しょうがないな。ボクが相手してあげるよ」
「おお、助かる。持つべき物は優しい弟だな」
「なっ!? へ、変なこと言うなよぶち殺すぞ!?」
何はともあれ、俺たちは組み手をすることになった。
「……やべえ2人が組み手すんぞ」
「……退散退散。命が惜しい」
なぜか知らないが、同級生が俺たちから離れていく。
「おいおい、どうしたおまえらぁ? そんな端っこに寄っちゃって!」
拳豪が俺たちに近づいてくる。
「む? 貴様らはやる気があるようだな! どれ、組み手を【間近で】見せて貰おうかな」
ざわ……ざわ……。
「もっともこの世界最高の武闘家であるワタシの目にかなうレベルの組み手を見せられるとは、到底思わんがな」
ごちゃごちゃ言ってる拳豪を放置して、俺は弟と相対する。
「ルールはどうする? 得物は?」
「素手でいいでしょ。一本勝負」
「ではワタシが審判を務めよう。試合……開始!」
ガイアスが闘気を練り上げる。
ゴォオオオオオオオオオオオオオ!
「なっ!? お、闘気!? なぜこんな高等技術を!?」
ダンッ……!
「せやぁあああ!!」
闘気で身体強化したガイアスが、俺めがけて飛び蹴りをかます。
俺は半身をひねってそれを交わす。
ドガァアアアアアアアアアン!
「な、なんだ今の威力ぅ!? 壁が粉砕したぞ!? し、しかもそれを避けたあの黒髪はなんだ!?」
ガイアスは一見自爆したように見える。
「「「せやぁ!」」」
パシッ……!
「ぬわぁ!? こ、今度は【影分身】!? 武の奥義のひとつじゃないか!?」
3人に分身したガイアスが、囲んで連打をかけてくる。
パシッ! パシパシッ!
弟の繰り出す拳や蹴りを、俺は素手ですべてさばく。
「信じられぬぅ! 分身を3体同時に、しかもあんな超高速で動かすなんて! ば、化け物か!?」
「くそっ! 当たらない! チクショウ!」
ボッ……!
シュッ……!
ドガンッ……!
「【獅子掌底】に【流水手刀】、【蟷螂落とし】!? ど、どれも拳豪の奥義ではないか!」
どの技も闘気で体が強化されており、一撃の重さ、早さは桁はずれ。
「くっそぉ! 一発も当たらない……なら!」
たんっ……! とガイアスが俺から離れる。
「なんだ、あの金髪少年、次は何をするつもりなのだぁ!?」
驚く拳豪をよそに、ガイアスは目を閉じて、両手を開く。
「……右手に、魔力。左手に闘気」
莫大な量のそれらを、左右の手にそれぞれ宿す。
「は、はは……まさかあの少年、【禁術】を使うんじゃないか?」
「おう、そうだぞ」
「……いや、まさか、あれは2000年前の拳豪以来、誰も使えていない超高難易度の秘奥義。こんな学生風情が」
弟が両手を胸の前で、パンッ! と付き合わせる。
その瞬間。
ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
体から、銀のオーラが噴出した。
「ぬわぁあああああああ!」
近くに居た拳豪は、天井付近まで吹っ飛んだ。
壁際にいた同級生達は難を逃れたが、飛ばされないよう必死だ。
俺は突っ立って、弟が技を完成させるのを待つ。
「こ、これはまさしく禁術! 魔力と闘気を合成させることで、闘気以上の身体能力を発揮させる禁断の術! こんな古の奥義、使えたものがいたなんて!」
「くっ……! ボクが術を発動させるまで待ってやがって!」
「まあまあ、どれ手合わせと行こうか」
ダンッ……!
俺たちは空中で、拳をぶつけ合う。
がきぃいいいいいいいいいん!
「な、なんだぁ!? 一瞬で消えただとぉ!?」
ドガッ! ボグッ! がきん! しゅばばばば! ガキガキガキガキン!
「み、見えん! は、早すぎて動きに追いつけぬ! なんだあいつらはぁあ!?」
「くそっ! 禁術を使っても、生身の兄さんに全く通じないなんて! 化け物め!」
「いやおまえもだよぉおおお!」
その後、俺はガイアスの攻撃を全てさばいた。
弟は体力と魔力切れで、その場で動けなくなる。
「ぜぇ……! はぁ……! くそっ! また勝てなかった!」
「いやぁ、お疲れ。良い感じだったぞ。もっと禁術発動を早くできるよう慣れれば上出来だ」
弟は悔しそうに地面を手でたたく。
「で、どうだった? 拳豪さんよ」
その場でへたり込んでいる拳豪に、俺は尋ねる。
「ふ、ふたりとも! ぜひともワタシの弟子にならぬか!?」
拳豪が俺たちの前で、
「え、やだ」
「結構です。ボクには兄さんがいるから」
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