46.勇者、弟の訓練にゴブリンの巣へ行く
俺が魔族ゴクウを倒した、翌日。
休日だったので、弟の修行として、近くの森まで来ていた。
「今日のトレーニングは【ゴブリンの巣の討伐】だ」
俺たちは洞窟から、少し離れた茂みの中にいる。
「……【ゴブリンの討伐】の間違えだよね?」
「え、ゴブリンの巣へ潜って、殲滅してこいって意味だけど?」
「そんなサラッと恐ろしく難しいこと言うなよ!」
2000年前の世界じゃ、ゴブリンなんて駆け出し冒険者でも倒せる程度だったし、今の弟なら余裕だろう。
「兄さんは、手伝ってくれないの?」
「え、なんで手伝うんだ?」
「もういいよ! 少しは心配してくれるかと期待したボクがバカだった!」
ガイアスは茂みから出て、巣の前まで向かう。
「ぎぎっ?」「ぐぎゃがっ!」「ぐぎぎぎっ!」
巣の前には見張り役のゴブリンがいた。
その数は10。
「【風刃】」
びょぉおおおおおおおお!
巨大な風の刃は、10体のゴブリンを一撃で消し飛ばした。
「え、なんで魔法使うんだ? ゴブリンくらい睨んだだけで殺せるだろ」
「人間と化物を同じ尺度で考えないでよ! くそっ! 腹立つな!」
肩を怒らせながら、ガイアスが巣の中へと向かう。
「巣の中は迷路みたいになってるから気をつけろよ。通路からいきなりゴブリン出てくるからなぁ」
「わかってるよ、いちいちうるさい! 【火球】!」
ドガァアアアアアン!
俺と弟は、巣の中を余裕で歩いて行く。
出てくるゴブリンを、ガイアスが双剣や魔法で倒す。
「ゴブリン程度いくら倒しても、まだ兄さんには遠く及ばない、ちくしょう!」
「まあ焦るなって」
「くそ! もっともっと強くならないと!」
敵に囲まれることもあったが、ガイアスが双剣で瞬殺していく。
「そういや、最近ヒストリアを学園で見ないな。連絡とか取ってるか?」
「いいや。ボクあいつともう別れたし」
「え、そうなの? いいのか?」
「どうでも良いよ。今は兄さんと一緒に修行してる方が……」
何かを言いかけて、ガイアスは口を閉じてうつむく。
「俺と修行してる方が、なんだって?」
「知らないよ! ばかっ!」
会話してる最中も、ガイアスによるゴブリン殲滅は行われていた。
「ゴブリンに捕まってた人、結構な数いたな」
「その人ら全員、魔法で回復させて転移魔法で街まで送り届けて、帰ってくるとか。わかってたけど相変わらずの人外っぷりだよね! くっ!」
ややあって。
俺たちは巣の一番奥までやってきた。
「確かゴブリンの巣には、【ゴブリン王】っていう親玉がいるんだよね」
「そうだな。ま、そうは言っても魔族より弱いし、おまえなら余裕で倒せるよ」
俺は弟の頭をポンとたたく。
「別に兄さんに言われなくてもわかってるよ。というか、いちいち触んないでよね」
「え、じゃあいつもみたいに手で払えばいいじゃんか」
バシッ!
「いくぞ馬鹿兄貴!」
「え、何キレてんの?」
王の居る部屋へと、俺たちはやってくる。
「ぐははは! 良く来たな人間どもぉ!」
「あれ? 魔族だ」
見上げるほどの大きさの、巨大すぎるゴブリンがいた。
「ゴブリン大王だ。ゴブリン王が進化した姿。中級の魔族だな」
「ここまで来たことは褒めてやろう! だがしかぁし! 貴様らの進撃はここまでだ!」
ガイアスはギリと歯がみして、俺を見る。
「……兄さん、あとお願い」
「え、戦わなくていいのか?」
「中級魔族は、今のボクじゃ、悔しいけど勝てない。チクショウ……」
俺は弟の頭を撫でる。
「落ち込むな。自分の力量をきちんと把握できるようになってる。成長してるよ」
「……うるさい! さっさと片付けろ!」
俺はガイアスのもとを離れ、ゴブリン大王を見やる。
「どうした小さき人間よ? 2対1でも全然かまわんぞ?」
「え、おまえ2人もいるのか? 別にいいぞ、2対1でも」
ビキッ! とゴブリン大王の額に血管が浮く。
「兄さん、そいつたぶん、兄さんとボクの2人って言いたかったんでしょ?」
「え、そんな馬鹿な。いくらなんでも戦力に差があることもわからないくらい、愚鈍ってわけじゃないだろ?」
ビキビキッ!
「人間の分際で、調子に乗るなぁあ!」
ゴブリン大王が、その無駄にデカい拳を振り上げる。
キンッ……!
俺は創生した剣を、仕舞う。
ボトボトボト……!
「中級の魔族を、一瞬で大量のサイコロステーキ状に切り刻むとか。どうなってるんだよ!」
「え、単に1秒で1万回剣を軽く振っただけだけど? こんなの普通だろ?」
「あんたが普通だったこと1つもないんだよ!」
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