220.矛盾
結界の中、俺は理事長とゲームしてる。
エア・テレビゲームをな。
脳内でレースゲームをしてる。
お互いにキャラクターのスペックをあらかじめ決めておいて、脳内で戦わせる。
「常人には理解できないあそびでしょうねえ」
「だろうな」
ここでガイアスが居ればツッコミを入れてくれるだろうが、まあ、居ない者はしょうがない。
「ところでユリウス君。どうして私を殺さないのですかぁ?」
レースの途中で、理事長がなんか行ってきた。
「確かにこの結界内では暴力が無力化される術式が組まれてますが、それもあなたならどうにかできるでしょおぉ?」
そう、できる。
結界内の条件を書き換えることなんて、俺には簡単にできる。
まあ、すぐさま理事長が上書きしてくるからってのもあるが。
それでも……やっぱり、こいつを殺すことはたやすい。
しかもやつは今俺の間合いにいるうえ、結界で自らを逃げれないようにしてる。
「こんなにわかりやすく、首を差し出してるのにぃ、殺そうとしないのですね。それは優しさからですか?」
……理事長の声からは、こちらの真意を測ってるような、慎重さを感じられた。
こいつでもわからないことがあるんだな。
「ま、端的に言うと……あんたに、悪意を感じないからだ」
「…………」
理事長から、にやけ笑いが消えた。
そこを……いや、底を見抜かれるとは思ってなかったのかな?
「あんたはうさんくさいよ。どう見てもね。暗躍もたくさんしてる。でも……なんでかな、あんたからは悪意を感じないんだ」
こいつが初めて学園に来たとき、言っていた。
こいつの望みは世界平和だと。
何を嘘を……と最初は思った。
けれど、どうにも……その言葉は嘘ではなかったように感じる。
「……なるほど。さすが勇者神だ」
真面目な顔になるルシフェル。
どこか……うれしそうに微笑んでいた。
だがまたいつもの、にやけ面に戻る。
「そのとおり。私が望むのは、ずっと変わらないですよぉ。世界を平和にするため」
「そのためなら、ほかはどうでもいいと? たとえ世界を滅ぼしても?」
「ええ」
矛盾してるよ、ほんと。




