21.勇者、弟より優れてることに両親が気づく
帰宅後。
俺は夕飯を食べに、食堂へと向かった。
すでに両親と弟が席についており、食事を始めている。
「さすがはガイアスだ!」
「ほんと、わがカーライル家の誇りよあなたは!」
しかしガイアスの表情は晴れない。うつむいて、震えている。
「お? なにかあったのか?」
俺は食堂の端っこにおいてあった椅子をもって、ガイアスの正面に座る。
「……貴様、何をしてる?」
親父が一転して、不機嫌そうに俺に尋ねる。
「家族なんだから、顔を突き合わせて食事するのが普通だろ?」
「何を言ってるのかしらこの子は! あんたなんてうちの子じゃないわ!」
おふくろが俺に侮蔑の視線を向ける。
「ユリウスよ、貴様はカーライル家の名を受け継ぐにふさわしくない、駄目な息子ということだ」
一方で両親が、ニコニコしながらガイアスに言う。
「学園から聞いたぞガイアス。特待生になったのだってな!」
ぎりっ! とガイアスが苦い顔をして、歯噛みする。
「このような偉業はわがカーライル家が始まって以来だ!」
「あなたを産んだこと、誇りに思うわ! あの屑兄は産んで後悔したけれど!」
「ちがう……」
ガイアスが、悔しそうにつぶやく。
「やはりガイアスは我が家に栄光と勝利を導く【予言の子】だったな」
「ちがう……!」
弟は立ち上がって、声を荒らげる。
「特待生になったのは、ボクじゃない!」
弟は吐き捨てるように言うと、乱暴に椅子を蹴飛ばし、食堂を出て行った。
「特待生になったのはボクじゃない、ってどういう意味でしょう、あなた?」
「俺が特待生ってことだけど?」
「何を言ってるんだできそこないの癖に!」
「ガイアスより劣るおまえが、特待生になれるわけがないでしょ! 身の程を知りなさい!」
そのときだった。
「旦那様、学園から書状が届いております」
シャルロットが、食堂に入ってきて、親父に手紙を渡す。
「学園から通知書が届いたぞ! どれ、『ユリウス=フォン=カーライルを特待生に任命する』……え?」
「あ、あなた! 何かの間違いよね!? ガイアスでしょう!?」
「いやちがう! ここにユリウスの名前が!」
なんか驚いている両親をよそに、俺は食事を終える。
「シャルロット、お弁当作ってくれない? 弟のやつ飯食わずに部屋戻ったからさ」
「かしこまりました」
俺はシャルロットとともに、部屋を出て行こうとする。
「ま、待つのだ、ユリウス!」
親父は立ち上がると、俺のそばまでやって来る。
「い、いやぁ! 特待生にまさか選ばれるとはなぁ! さすがわがカーライル家の長男!」
「ゆ、ユリウス! あなたは私たちの誇りよ! あなたを産んだことを神に感謝するわ!」
うんうん、と笑顔で両親が、俺の手を握って来る。
「さぁユリウス! 一緒に食事をしよう! 自慢の息子よ!」
「特待生に選ばれたときの話聞かせてちょうだい!」
「え、やだ」
ぽかんとする両親をよそに、俺は言う。
「ガイアスが飯まだだからよ、弁当届けてやんないとダメだろ」
「あんな出来損ないの弟など、どうでもよいではないか!」
「自分の息子が腹空かせてるってのに、なんだよその態度は?」
仮にも親が、ひでえこと言いやがる。
もともと好きでもなかったけど、ちょっと今のは軽蔑するわ。
「俺、これから自分の部屋で飯食うからな」
俺はメイドとともに、食堂を出ていく。
「待ってくれ、自慢の息子よ!」
「それはガイアスのことだろ?」
俺の腕に、両親が縋りつく。
「あなたはこの家を継ぎ、私たちに繁栄をもたらす素晴らしい息子なのよ!」
「それも弟のことだろ? 俺のことはほっといてくれ」
彼らの腕を払って、俺は食堂を出て行くのだった。
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