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ブラックシープ~人形姫との下僕契約~  作者: 狭山ひびき
Act.1 人形姫との下僕契約

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ルブラン教会の謎 7

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 シュゼットはゆっくりと瞼を持ち上げた。


 あたりは薄暗く、ひんやりとしている。


 小さなランプが部屋の隅におかれているが、それだけでは部屋の中をくまなく照らすほどの明かりはない。


(縛られては……、ないようね)


 教会で妙な薬をかがされたのち、シュゼットは意識を失った。どのくらい意識を失っていたのかはわからないが、どうやら状況は芳しくなさそうだ。


 シュゼットは上体を起こし、周りを見渡した。薄暗いが、見えないような明かりではない。そして、何気なく自分の右横を見た途端、彼女は大きく息を吸い込んだ。


「……人形? いえ、違うわ……」


 シュゼットの隣には、何人もの少女が横たわっていた。一瞬死体かとも思ったが、少女の一人が瞬きをしたのを見て、そうではないと判断する。


 シュゼットはそろそろと彼女たちに近づいた。


「ねえ……」


 遠慮がちに話しかけてみると、少女たちの視線が一斉のシュゼットに向いた。しかし、視線は向くものの、少女たちは何も言わず、またぼんやりと何もない虚空を見つめてしまう。


(……何か変だわ)


 シュゼットは恐る恐る、近くのそばかす顔の少女の腕に触れてみた。温かい。そのことに少しほっとして、そのまま話しかける。


「ねえ、ここはどこなのかしら?」


 しかし、少女は緩慢に首を動かしてシュゼットを見、それから何も言わずにまたぼんやりした。


「ねえ、……ちょっと、大丈夫なの?」


 シュゼットがなおも彼女に話しかけたとき、部屋の外でガタンと音がした。


 誰かが来る。シュゼットは咄嗟に、壁に寄りかかると、彼女たちと同じように、まるで人形のようにぼんやりとすることにした。


 しばらくして、部屋の扉がギィっと音を立てて開き、二人の男が入ってくる。浅黒い肌に、真っ黒な髪。船乗りのように筋肉質で大きな体。見たことのない男たちだった。


 男たちは食事を手にこちらに近づいてくると、少女たちの前に座って、その口にパンや水を詰め込みはじめる。


 少女たちはもぐもぐと反射条件のように口を動かし、男たちが口に詰めたパンを咀嚼しては飲み込んでいた。


(……なに、これ)


 ほかの少女たちと同じようにぼんやりと動かない体制のまま、シュゼットは愕然とする。


 やがてシュゼットも同じように口の中にパンを詰め込まれ、パサパサのパンを吐き出しそうになるのを我慢しながらどうにか飲み下した。


「おい、そういえばそこの金髪の子には薬を飲ませておけって言われたぞ」


「ああ、あの薬か。ちょっと待て、上にあるはずだ」


「分量を間違えるなよ。間違えればそのまま息が止まるからな。せっかく高く売れそうなのに、殺しちゃ意味がねぇ」


「わかってるって」


 男の一人がにやにや笑いながら部屋の外に出て行く。


(薬ですって……?)


 シュゼットはふとローデル男爵邸で発見された薬のことを思い出した。フォリオに調べさせたところ、投与したマウスが死蝋しろう化して死んだという薬だ。


 シュゼットの背筋に冷や汗が流れ落ちたが、目の前に大柄な男が控えている状況で、逃げ出せるはずもない。


(まずいわ……)


 シュゼットは戻ってくる男の足音を聞きながら、人勢で初めて訪れた、絶体絶命というこの状況に、思考回路が凍り付くのを感じた。



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