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ブラックシープ~人形姫との下僕契約~  作者: 狭山ひびき
Act.1 人形姫との下僕契約

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ルブラン教会の謎 6

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 ローデル男爵は、やつれた顔で、しかし鋭くトムキンスを睨みつける。


 ローデル男爵を支えるアークの背後には、額に血の跡をにじませているルドルフ警部の姿があった。


「もう逃げられないぞ、トムキンス」


 愕然とした表情を浮かべたまま立ち尽くしていたトムキンスに、ローデル男爵は冷ややかに告げる。


「ちょっと一緒に来てもらおうか」


 ローデル男爵のうしろで、ルドルフ警部がそう告げた瞬間、トムキンスはハッと我に返ったように突然シオンにつかみかかかってきた。


「シオン!」


「大丈夫」


 アークが咄嗟に動こうとしたが、それよりも早く、シオンはトムキンスの腕をかいくぐってその鳩尾に膝蹴りを入れる。ふらついたトムキンスの腕をひねりあげて、床に押さえつけた。


 騒ぎを聞きつけてきたメイド頭のジルはローデル男爵の顔を見て飛び上がるほどに驚いたが、押さえつけられているトムキンスを見、縄を持ってきてほしいとシオンに言われると、慌てたように縄を取ってきた。


 ルドルフ警部によると、隠し部屋を見つけて入ったところ、キャロルの遺体と、縛り上げられたローデル男爵が床に転がされていたという。驚いているときに、背後からトムキンスに殴りかかられて、ローデル男爵ともども閉じ込められていたらしい。


 シュゼットの手掛かりがあるかもしれないので、もう少し詳しい話が聞きたかったが、ローデル男爵が自力で立てないほど消耗しており、急いで医者に診せた方がいいため、聴取は後にすることになった。


 もちろん、トムキンスへの聴取は行われるが、それはルドルフが一度警察署へ連れて行き、そこで行うという。


 シオンはそこでトムキンスと別れ、城の医官に診せるため、アークとともに馬車に乗り込んだ。


 城を選んだのは、彼もまた、今回の事件の当事者であり、何かの情報を持っているに違いないからだ。場合によっては、回復を待って逮捕ということもあり得る。


 馬車に乗せられているとき、ローデル男爵は静かだったが、一度だけ、うめくように「キャロルは?」と訊ねてきた。


「夫人の遺体は、一度城へ運ばせていただきますが、のちほど丁重に埋葬させていただきます」


 シオンが告げると、ローデル男爵は淋しそうに、しかしホッとしたように笑った。


(やはり……、ローデル男爵は、夫人を愛している)


 それはおそらく、キャロルが死んで二年たった今でも、だ。


(だめだ、わからないことだらけだ……)


 こんなときシュゼットがいれば、あの生意気な口で何かしらの見解を語ったのだろうか――、シオンは眉を寄せて、馬車の窓から流れる景色を見つめる。


(どこに行ったんだ、シュゼット――)


 胸の中に広がる言いようのない不安に、シオンは奥歯をかんだ。



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