蛇の意味 3
お気に入り登録、評価などありがとうございます!
今回は短いので、19時にも投稿します。
「やあ、ロッシュ―――、じゃなくてシオンだったかな。待っていたよ」
リビングに行くとそこには先客がいた。それは、賭博場で同じテーブルにいたグレイで、彼は庭に面した窓の近くで葉巻をふかしていた。
「グレイはよく来るんだよ。あそこでは、俺の正体を知っている数少ないヤツでね。貴族ではないが、グレイは実業家でね。貿易関係の仕事をしている」
驚いたシオンにローデル男爵がにやにや笑いながら告げる。
グレイは葉巻の火を消すと、不躾にシオンをじろじろ見やって、「ほー」と感心したような声を出した。
「そうしてみると、本当にいいところのお坊ちゃんなんだな。あの時は薄汚れた格好をしていたが、今日はいいもの着てやがる」
シオンが今日来ていたのはシンプルなシルクのシャツに黒いズボンだった。だが、有名店で、体格に合わせてきっちり採寸されて作られた服はそれなりに値が張り、商売をしているグレイにはすぐに品の良さがわかるらしい。
グレイはふと商売人の顔になって、
「どうだい、先月、いい翡翠を手に入れたんだ。シオンになら特別安くしてやってもいいぜ」
「考えておきますよ」
シオンは苦笑いを浮かべてそう答えると、リビングのソファに案内されて紅茶と茶菓子を出してもらっているシュゼットを見やってから、「チョコレートに夢中になっているからしばらくおとなしそうだな」とほっとした。
「今日はチップはないから、賭けは銅貨でだ」
シュゼットたちから少し離れた窓際のテーブル席に座り、ローデル男爵がそう言いながらカードを切りはじめる。
椅子腰を下ろしたシオンは、用意してきた銅貨が入った袋をテーブルの上におき、トムキンスが出してくれたウイスキー入りのコーヒーに口をつけた。
「今日は勝たせてもらうぞ」
ローデル男爵がそう言いながら、裏返しにしたカードを配っていく。
残りをテーブルの中央において、それぞれが銅貨を三枚テーブルの上に積んだところで、勝負が開始した。




