表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
258/271

キサラの妹


「円が失踪?」

 深夜スマホが鳴り響く。

 迷惑な奴は誰だと確認すると表示されていたのは円のマネージャーだった。

 目を擦り寝ぼけながらスマホを取ると、常に冷静な彼女がパニックに陥っていた。


「円が会見場から居なくなって、ホテルにも戻って無くて、連絡も全くつかなくて、そっちに、学校に連絡来てない?!」


「いや、今何時だと思ってるの?」

 時計を見ると現在深夜2時……イギリスとは確か時差+8時間だったから向こうは夕方頃だ。

 円がイギリスでデビューする件は予め聞いていた。

 トップシークレットなのだが、私は彼女から聞いていたのだ。


「今スタッフに周囲を探して貰ってる」


「警察には?」


「まだ、でもマスコミにはバレかかっている、後1時間待って見つからなければ一応体調不良って事で記者会見はキャンセルにするけど……」


「じゃあそれだとデビューも延期になるね」


「まだ仮契約の段階だけどあの子がドタキャンなんてあり得ない、もし円が……どうしよう、キサラ!」


「落ち着いて義姉さん」

 焦る義姉に対して私は久しぶりにそう呼んだ。


 そう私達は義理の姉妹なのだ。

 だから今回の話は予め知っていたのだ。


 そして……それだけでは無いもう1つの理由、こんな時に彼女が私に連絡してきた理由、それは……円は私の腹違いの妹だからだ。


 円は彼女の母親が私の父と不倫をして生まれた子供なのだ。


 それが理由で母は離婚、そして再婚した相手の連れ子が彼女だった。


 勿論その事を円は一切知らない。


 

 元役者の父は昔、円の母親と不倫をした。


 そして隠し子として産み、その後発覚、しかし既に人気が出ていた白浜縁は一切相手を言わずに私生児として押し通した。


 その後数年間二人の関係は続いたが破綻した。

 その間殆ど家に帰って来ない父に私の母も愛想が尽き離婚する。


 そして白浜縁は売れ続け、その反対に父は売れなくなり芸能界から消えていった。


 そこで終わっていれば私は円が妹だとは知らずに済んでいた。

 しかし偶然私が入ったアイドルグループに円も入ったのだ。


 当初は妹だとは知らなかった。

 もちろん母も知らない事だった。


 でもグループ解散を告げられた時、その理由を私は聞いてしまう。


 私と円が姉妹だという事を。


 円の出生がバレてしまう可能性があるとの理由でグループは解散せざるを得ないと当時のマネージャーと事務所社長からそう聞かされた。


 さらに、彼女の母親から二人の関係は知らせるなと念押しされた。

  

 事務所は白浜縁の大手事務所の傘下に入り、マネージャーも円と一緒に白浜縁の大手事務所移籍した。


 そのマネージャーが私の義理の姉、現円のマネージャーだった。

 大手事務所と白浜縁の圧力には勝てない、しかも私がこの事を秘密にし引退すれば全て丸く収まる。

 

 そう思った私は夢を諦め芸能界を引退し、必死に勉強に励んだ。


 そしてそんな嫌な記憶が薄れかけた時、マキを通して円から連絡が来る。


 もう会う事は無いと思っていた妹。


 彼女は芸能界から引退同然の身でいた。

 しかも表向きは学業に専念するとされていたが、実は宮園翔という男の事故の責任を取るというなんとも言えない理由でという事を知った。


 それを聞いた時、私の中である思いが沸き上がる。


 それは姉妹愛という感情だった。


 円の為に私はまず宮園翔君の事を調べた。

 単純に彼の妹から根掘り葉掘り聞き直接彼とも話した。


 そして思った……円はバカな子だなってね。

 当事者でも無い、飼っていた犬のせいで起きた事故の為に私が諦めた芸能界を捨てるなんて。


 グループに居た頃から、容姿も才能も円には勝てないってそう思っていた。

 だから私は辞めた事に後悔はしていない。


 私は姉妹の事を隠し円に近付いた。


 そこで見たのだ、あの輝いていたあの子が、実は普通に恋する普通の女の子だったって事を。


 だから私は見続けた。

 宮園翔という、陸上に心を奪われた男に心を奪われた円。

 そして彼を陸上に戻し、また芸能の道に戻る決心をした円……いや、円は本当に戻ろうとしたのか?


 ひょっとしたら……初めから姿を消すつもりだった?


 でも、何故今? 母親に対しての反発? 翔君の為?


 円は芸能界に戻るべきだと私は思っている。


 でも決めるのは円、私は姉として応援するだけ。


「義姉さんとりあえず、宮園翔君、彼に何か知ってるか聞いてみるわ、学校に連絡が来たら直ぐそっちに連絡する」

 

「お願い……します」

 憔悴しているかの様なか細い声で、その一言だけ言うと彼女は電話を切った。 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=55608073&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ