最終話 最終決戦編
鬼黒の黒歴史
借入金返済期限まで、約1ヶ月を迎え、
ブラウン商事の期限内完済が、
いよいよ現実味を帯びる中、
鬼黒は、復讐に燃える黒田を使って、
最後の作戦に打って出る。
果たして勝利の女神は
どちらに微笑むのか!
<ヘルスケアセンター 事務室>
[運野]
最近、うちの前にオープンした
ラーメン店「腹黒家」
すごい人気だねぇ。
[土山]
昼時になると、毎日、
行列ができてますね。
行列の中には、うちのお客さんも、
多数いるみたいですね。
[花子]
有名な、家系ラーメンが、
プロデュースしているらしいです。
[運野]
一度、食べてみたいが、
あの行列じゃ、無理だね。
[土山]
ラーメン店が昼休憩に入る直前、
2時頃なら、大丈夫じゃないですか。
僕は、留守番していますから、
どうぞ、二人で行ってきて下さい。
[花子]
あら、土山君、ありがとう。
[運野]
それじゃあ、お言葉に甘えるとするか。
午後2時すぎ、運野と花子の二人は、
ラーメン店「腹黒家」に向かう。
土山の言うとおり、この時間になると、
客はほとんどいなくなっていた。
二人は無事、ラーメンを食べ終わるのだが。
<腹黒家 店内>
[運野]
なんか、腹の調子が悪くなってきた。
何か、あたったかなあ。
[花子]
大丈夫ですあ。
私は、なんともないですけど。
[運野]
ちょっと、トイレに行ってくる。
<腹黒家 男子トイレ>
[運野]
あれ、紙がない。
隣の個室にも、全ての個室にない。
どういうことか。
[黒田]
紙なら、ここにある。
[運野]
黒田! どうしてここに?
[黒田]
ハッハッハァー。
この店は、ブラック銀行の系列会社が、
経営しているんだ。
俺が、バンダナとマスクをしていたから、
お前は、気が付かなかったようだな。
さあ、紙が欲しけりゃ、土下座しろ。
[運野]
断る。
[黒田]
土下座しろ、運野。
俺に謝れ。
[運野]
う〜、漏れそう、苦しい。
[黒田]
楽になりたかったら、
さあ、土下座しろ。
<腹黒家 店内>
店内で、運野を待つ花子。
[花子]
部長、遅いなぁ〜。大丈夫かしら。
まさか、男子トイレに
入るわけにもいかないし。
困ったわ〜。
とりあえず、
部長の携帯に電話してみよう。
花子、電話するが、応答なし。
[花子]
こうなったら、店員さんにお願いして、
トイレに様子を見にいって
もらいましょう。
花子、店員を探すが、
あいにく、誰もいない。
店の厨房に入って探すが、誰もいない。
すると、厨房の片隅に、
超強力下痢止め薬「ストパッパ」の箱が
山積みにされているのを発見する。
[花子]
なに、これ?
もしかして、これをラーメンの中に?
最近、うちのヘルスケアセンターで、
改善前の症状に戻ってしまう
お客さんが見受けられる
ようになってきて、
不思議に思っていたんだけど、
もしかして、これのせい?
花子、店内の、ある表示に目が留まる。
[花子]
あれ、火元取扱責任者 黒田宅家!
もしかして、この店は・・・?
一方、この頃、
ブラック銀行 頭取室では、
鬼黒頭取と土屋敷社長との頂上対決が
繰り広げられていた。
<ブラック銀行 頭取室>
[土屋敷]
久しぶりだな、強。
[鬼黒]
今日は、何の用だ。
もう、借入金返済期限の先延ばし
には、応じられないぞ。
[土屋敷]
いや、頼み事をしに来た訳ではない。
お孫さんの小学校入学祝いだ。
はい、これ。
土屋敷、おもむろに、鬼黒の机上に
「ウンコ漢字ドリル」を置く。
鬼黒、顔色を変え、
[鬼黒]
キサマー!
[土屋敷]
どうやら、お前のウンコ恐怖症は、
まだ、治っていない様だなあ。
[鬼黒]
よくも、俺の黒歴史を思い出させて
くれたなあ。
あれは、小学6年生の時だった。
みんなで登校していたある日のこと、
列の先頭を歩く俺は、
後輩たちの安全を見守るため、
後ろ向きに歩いていた、その時、
大きい、犬のウンコを踏んでしまい、
さらに、そのウンコに足を滑らせ
尻餅をつき、体中、ウンコだらけに
なってしまった。
それを見たお前は、笑い、さらに
その時の様子を
「グニョ、ベチャ、サー」などと
表現して、皆に言いふらした。
その後も、やたらと、ウンコネタで、
俺をディスりまくった。
あの時の恨みは、一生忘れない。
お前を俺のシモベにしてやろうと、
心に誓ったのだ。
[土屋敷]
そんな昔のことを、
まだ恨んでいたとは。
その時、鬼黒の机上の電話が鳴る。
[鬼黒]
はい、鬼黒だが。
[黒川]
頭取、大変です。
只今、臨時株主総会が開かれ、
大株主の末夢玉子が
「黒のパンツ」の損失の責任を追及し、
頭取解任の動議を提出しました。
他の株主からも、釈明を求める声が
上がっているとのことです。
至急、総会への出席をお願いします。
[鬼黒]
わかった。車の用意をしろ。
すぐに向かう。
[黒川]
了解しました。
[土屋敷]
どうした、何かあったか?
[鬼黒]
まさか、お前と玉子が、
ツルンでいるんじゃないだろうな。
[土屋敷]
なんの話だか、
よく理解できないのだが。
[鬼黒]
もういい。急用ができた。
お前をかまっている場合じゃ
なくなった。
[土屋敷]
そういうことなら、
私はこれで、失礼するよ。
土屋敷、退室する。
扉には、いつの間にか
ウンコマークが描かれた
紙が貼られていた。
鬼黒、恐怖のあまり
扉を開けることができない。
[鬼黒]
うぅ〜、ウンコ〜。
くっそー、土屋敷のヤツ、
いつの間に、こんなものを。
<腹黒家 男子トイレ内>
片手にトイレットペーパーを持ち、
執拗に、運野に土下座を迫る黒田。
[黒田]
さあ、早く、土下座しろ。
実は、当店オープン以来、
ヘルスケアセンターの客と
思われる人には
ラーメンに、超強力下痢止め薬
「ストパッパ」を入れておいた。
皆、便秘になり、そろそろ、
クレームの嵐が起こることだろう。
会員数は、激減するハズだ。
逆にお前のラーメンには、
便秘にめちゃ効く薬を入れておいた。
だから、お前は今、
もよおしている訳だ。
[運野]
卑怯な真似を、しやがって。
薬物混入、犯罪でしょう?
[黒田]
黙れ、毒物ではないから、
大した問題ではない。
来月には、お前は俺の配下に下るのだ。
だから、サッサと、土下座して
これまでのことを、詫びろ。
その時、腹黒家の店員が
慌てた様子で、やってくる。
[店員]
店長、大変です。
保健所の抜き打ち検査が入りました。
至急、立会いをお願いします。
[黒田]
なにぃ〜!
黒田、トイレットペーパーを床に落とし、
慌てて、店内へと向かう。
[運野]
ハァ〜、助かったあー。
<ブラック銀行 頭取室>
頭取室の扉に、いつの間にか貼られた、
ウンコマークのため、
扉を開けることができない鬼黒。
携帯で、車で待機している
黒川を呼び出す。
[鬼黒]
悪いが、頭取室に来てくれ。
[黒川]
どうかなされましたか?
[鬼黒]
訳は、後で話す。
[黒川]
わかりました。
今、すぐに、そちらに向かいます。
しばらくして
[黒川]
失礼します。
[鬼黒]
入れ。
[黒川]
実は、警察の方が2名、今、一緒に
お見えになってます。
[鬼黒]
警察?
警察官は、扉を開け、警察手帳を見せて、
[警察官A]
警察の者です。鬼黒強頭取ですね。
[鬼黒]
そうですが。
[警察官A]
ラーメン店「腹黒家」の
薬物混入疑惑の件で、
お話を伺いたいと思います。
署に、御同行、願います。
[鬼黒]
いや、私はこれから、
株主総会に出席しないと・・。
[警察官A]
黒田が全て、ハキましたよ。
[鬼黒]
わかりました。
鬼黒、警察官に連行されていく。
もう一人の警察官が、
扉に貼られた、ウンコマークを見て、
[警察官B]
銀行の頭取室に、なんで、
こんなものが、貼られているんだ?
さらに、頭取の机上には、
「ウンコ漢字ドリル」が。
もしかして、ここの頭取は
ウンコフェチか?
だったら、いっその事、
ウンコ銀行に改名しちゃえばいいのに。
預金通帳、キャッシュカードにも
ウンコのマーク。
おっと、こんなバカなこと
言っている場合じゃない。
仕事、仕事。
臨時株主総会に提出された
鬼黒頭取解任の動議は可決され、
薬物混入疑惑も相まって、
鬼黒は、銀行を辞めることになった。
そしてついに、ブラウン商事は、
期限内に借入金全額返済を果たす。
<ブラウン商事 財務部 事務室>
[運野]
社長、また新たに、ブラック銀行から
融資を受けたと聞いたんですが、
本当ですかあ?
[土屋敷]
もちろん、本当だ。
[花子]
せっかく、全額返済したばかりなのに。
[土屋敷]
会社経営というものは、
常に拡大を目指して、
活動しなければならない。
止まってしまっては、
そこで、おしまいだ。
もちろん、拡大を目指して、失敗して、
そこで終わる場合もある。
だが、失敗を恐れて、止まることは
許されない。
[土山]
じゃあ、また、場合によっては
乗っ取られる危機にさらされる
ことも、あるのですね。
[土屋敷]
もちろん、その可能性はある。
しかし、その時はまた、
運野君の運の強さと、
君たち、若い二人のガッツで
また、乗り切れると信じている。
みんな、これからも
頼りにしているぞ。
(三人同時に)
ハイ!
< 部長 運野良夫 完 >




