第四話 風俗編
ブラック銀行の逆襲
借入金期限内全額返済の
足がかりを築いた、ブラウン商事。
だが、それを、指をくわえて見ている
ブラック銀行ではない。
これまで、静観していたブラック銀行は、
遂に、その本性をむき出しにして
なりふり構わず、ブラウン商事に
襲いかかる。
運野たちブラウン商事は、
これにどう立ち向かっていくのか。
ブラウン商事の運命は、いかに!
<ブラック銀行 会議室>
[鬼黒頭取]
ブラウン商事のヘルスケア事業が
好調のようだ。
このままだと、あの会社を
乗っ取ることが出来なくなる。
なんとか、しないと。
[黒川 一]
ヘルスケアセンターの正面に、
風俗店を出すというのは
どうでしょうか。
[鬼黒]
風俗店?
[黒川]
はい。
ヘルスケアセンターの客の大半は
主婦です。
ちょっとした託児施設もあるため、
子連れの客も多いと聞いております。
目の前に、いかがわしい風俗店があれば、
それを嫌って、客足が遠のくのでは
ないでしょうか。
[黒岩副頭取]
さすが、Z世代。
うちの期待の新人だ。
[鬼黒]
でも、あんあ場所で、
風俗店に客は入るのか?
[黒川]
ご心配なく。
今、SNS上で話題の
フェロー・フェロ助氏とコラボします。
彼は、風俗界の風雲児と言われ、
今、最も勢いがあります。
彼が手掛けた店とあらば、
遠方からでも、客は来ます。
[鬼黒]
わかった。後は君に任せる。
早速、取り掛かってくれ。
[黒川]
かしこまりました。
その後、ヘルスケアセンターの正面に、
フェロ助とコラボした風俗店
「ヘルス スーパーフェロモン」が
オープンする。
オープン後、黒川の目論見通り、
ヘルスケアセンターの客は、
減りはじめた。
<ヘルスケアセンター 事務室>
[運野]
最近、客が減ってきているなあ。
[土田花子]
あの、風俗店のせいですよ。
[土山盛男]
チキショー、
せっかく頑張って、
お客さん増やしてきたのに。
あんな連中のせいで。
[運野]
なんとか、しないとなあ。
業界で有名な、フェローなんちゃらが
やってんだって?
[土山]
はい。
フェロ助は、
男が興奮するツボを徹底的に研究し,
その成果を惜しみなく
店の経営に取り入れています。
フェチにも、造詣が深いです。
逆に、男が萎えるポイントについても、
しっかり押さえており、それらの要素を
極力、店から排除しています。
[運野]
萎えるポイントねぇ〜。
カミさんのカミナリとか?
[土山]
彼のブログを見る限り、
例えば、魔女とか、それと・・・
あと、部長が好きなウンコもあります。
[運野]
いや、別に好きなわけじゃないけど。
[花子]
土山君、バカに詳しいじゃない。
普段はけっこう
お世話になってるんじゃないの。
[土山]
なってねぇーよぉ。
[花子]
あら〜、ムキになっちゃって。
[土山]
こいつ〜、言わせておけば。
[運野]
おい、おい。
高校生じゃあるまいし。
今日はもう遅いから
二人は、先に帰って。
[土山]
部長は?
[運野]
俺は、月刊誌『快便生活』の
編集作業が少しだけ残っているから、
それを片付けてから、帰るよ。
[土山]
了解しました。
[花子]
お先に失礼します。
[運野]
仲良く、帰れよ。
[花子]
大丈夫ですよ。
高校生じゃ、ありませんから。
二人は揃って退社。
正面には、風俗店
「ヘルス スーパーフェロモン」がある。
嫌でも、その前を通らざるを得ない。
この日、店の前では、フェロ助が自ら
客引きをしていた。
[フェロ助]
よっ、ヘルスケアセンターのお兄さん、
どうですかぁ。
[土山]
お断りします。
[フェロ助]
エヘヘェ、
フェロモンたっぷりの娘が
たくさんいるよ。
[土山]
黙れ、なにがフェロモンだ。
女性はココロだ、ココロ!
[花子]
わー、土山君、見直しちゃったわ。
[フェロ助]
それでは、俺のフェロモン攻撃を
受けてみろ。
巨乳モミモミビーム!
[土山]
うわぁ〜。
[フェロ助]
トドメに、桃尻プリプリビーム!
[土山]
うわぁ〜、悶絶〜!
土山、気を失い、
その場に仰向けになって倒れる。
[フェロ助]
エヘヘェ、
どんなキレイ事も
フェロモンの前では、無力なのだ。
[花子]
土山君、大丈夫、しっかりして。
[フェロ助]
エヘヘェ、
盛男の股間が、モッコリしてるよ。
[花子]
キャー!
(花子、目を背ける)
[フェロ助]
君も、もっと努力して、
エロく、なりなさい。
男は度胸、女はエロケだぁ。
[花子]
なによぉ、そんな変な話、
上から目線で言わないでよ。
[フェロ助]
エロくなったら、うちの店で
使ってあげても、いいよ。
少なくても、今よりは、稼げるよ。
[花子]
謹んで、お断り致します。
[フェロ助]
あんな、ショボい会社に
一生いるつもりか。
[運野]
ショボい会社で、悪かったなあ。
[花子]
部長ー!
[フェロ助]
出たなあ、ブラウン商事の糞部長、
俺には、キサマのウンコネタなんて、
通用しないぞ。
[運野]
まあまあ、
ヘルスどうし、仲良くしましょうよ。
一緒に、トランプでも
いかがですか。
[フェロ助]
トランプ?
[運野]
このトランプは、海外で買った
無修正、ヌードトランプだ。
フェロモンたっぷりだぞ〜。
[フェロ助]
そういうことなら、ぜひ。
[運野]
では、この中から一枚引いてくれ。
[フェロ助]
では。エヘヘッ。
フェロ助、ヨダレを垂らしながら
一枚引いて、めくる。
[フェロ助]
うわぁ〜、ババを引いてしまった。
フェロモンとは、対極をなす、
俺の苦手なババ魔女の絵柄。
萎えてしまった〜。
フェロ助、カードをその場に捨てて
店内へと逃げ込む。
運野、土山のそばに駆けつけ
[運野]
大丈夫か、土山君。
土山、気絶したまま、返答なし。
[花子]
私、これから駅前に行って、
タクシー探してきます。
[運野]
よろしく頼むよ。
花子、駅へと向かう。
[運野]
土山君、しっかりしろ。
土山、ようやく目覚める。
[土山]
すいません。もう大丈夫です。
[運野]
今、土田君が、駅前に
タクシー探しに行ってるから。
[土山]
いや、その必要はありません。
もう、ちゃんと歩けますから。
[運野]
そうか。
じゃあ、土田君に連絡をとり、
そのまま、帰宅してもらおう。
運野、花子に連絡する。
[土山]
すいません。
こんな、みっともない所を
見せちゃって。
[運野]
いやいや、若くて健康な証拠だよ。
羨ましい。
それより、さっきの君の言葉
「女性はココロだ」ってやつ、
結構、彼女の心に響いたんじゃ
ないかな。
[土山]
さあ、それはどうだか。
まあ、響こうが、そうでなかろうが、
僕には、どうでもいいことです。
[運野]
そうか。
[土山]
本当は、僕もフェロモン大好きです。
でも、フェロ助のことが
ムカついたんで、つい、あんな事
言ってしまったんです。
[運野]
じゃあ、このトランプあげるよ。
俺が持っていても、万が一
妻に見つかったら、
面倒なことになるからね。
[土山]
じゃあ、ありがたく、頂きます。
[運野]
鼻血出すなよ。
[土山]
はい。
運野、フェロ助が捨てたカードを拾う。
[運野]
フェロ助は、この絵柄が
ひどく苦手な様だなあ。
そうだ!
この絵柄を描いた大きな看板を
うちの敷地内の、風俗店から
よく見える場所に立てよう。
フェロ助は、毎日、不快になるハズだ。
二日後、ババ魔女の看板が、立てられる。
案の定、風俗店は、
フェロ助の指示により、撤退した。
ヘルスセンターには、
再び客足が戻りはじめた。
街を一望できる丘の上に
一人たたずむ、黒岩右近。
[黒岩]
おのれ、運野め。
次こそは、
キサマを、完膚なきまでに、
叩きのめしてやる。
せいぜい、首を洗って待っておれ!
< 第四話 風俗編 完 >




