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部長  運野 良夫  作者: 犬 文男
4/7

第四話 風俗編

ブラック銀行の逆襲

借入金期限内全額返済の

足がかりを築いた、ブラウン商事。

だが、それを、指をくわえて見ている

ブラック銀行ではない。

これまで、静観していたブラック銀行は、

遂に、その本性をむき出しにして

なりふり構わず、ブラウン商事に

襲いかかる。

運野たちブラウン商事は、

これにどう立ち向かっていくのか。

ブラウン商事の運命は、いかに!



<ブラック銀行 会議室>

 

[鬼黒頭取]

 ブラウン商事のヘルスケア事業が

 好調のようだ。

 このままだと、あの会社を

 乗っ取ることが出来なくなる。

なんとか、しないと。


[黒川(クロカワ ハジメ]

 ヘルスケアセンターの正面に、

 風俗店を出すというのは

 どうでしょうか。


[鬼黒]

 風俗店?

 

[黒川]

 はい。

 ヘルスケアセンターの客の大半は

 主婦です。

 ちょっとした託児施設もあるため、

 子連れの客も多いと聞いております。

 目の前に、いかがわしい風俗店があれば、

 それを嫌って、客足が遠のくのでは

 ないでしょうか。


[黒岩副頭取]

 さすが、Z世代。

 うちの期待の新人だ。


[鬼黒]

 でも、あんあ場所で、

 風俗店に客は入るのか?


[黒川]

 ご心配なく。

 今、SNS上で話題の

 フェロー・フェロスケ氏とコラボします。

 彼は、風俗界の風雲児と言われ、

 今、最も勢いがあります。

 彼が手掛けた店とあらば、

 遠方からでも、客は来ます。


[鬼黒]

 わかった。後は君に任せる。

 早速、取り掛かってくれ。


[黒川]

 かしこまりました。



その後、ヘルスケアセンターの正面に、

フェロ助とコラボした風俗店

「ヘルス スーパーフェロモン」が

オープンする。

オープン後、黒川の目論見通り、

ヘルスケアセンターの客は、

減りはじめた。



<ヘルスケアセンター 事務室>

 

[運野]

 最近、客が減ってきているなあ。


[土田花子]

 あの、風俗店のせいですよ。


[土山盛男]

 チキショー、

 せっかく頑張って、

 お客さん増やしてきたのに。

 あんな連中のせいで。


[運野]

 なんとか、しないとなあ。

 業界で有名な、フェローなんちゃらが

 やってんだって?


[土山]

 はい。

 フェロ助は、

 男が興奮するツボを徹底的に研究し,

 その成果を惜しみなく

 店の経営に取り入れています。

 フェチにも、造詣が深いです。

 逆に、男が萎えるポイントについても、

 しっかり押さえており、それらの要素を

 極力、店から排除しています。


[運野]

 萎えるポイントねぇ〜。

 カミさんのカミナリとか?


[土山]

 彼のブログを見る限り、

 例えば、魔女とか、それと・・・

 あと、部長が好きなウンコもあります。


[運野]

 いや、別に好きなわけじゃないけど。


[花子]

 土山君、バカに詳しいじゃない。

 普段はけっこう

 お世話になってるんじゃないの。


[土山]

 なってねぇーよぉ。


[花子]

 あら〜、ムキになっちゃって。


[土山]

 こいつ〜、言わせておけば。


[運野]

 おい、おい。

 高校生じゃあるまいし。

 今日はもう遅いから

 二人は、先に帰って。

 

[土山]

 部長は?


[運野]

 俺は、月刊誌『快便生活』の

 編集作業が少しだけ残っているから、

 それを片付けてから、帰るよ。


[土山]

 了解しました。


[花子]

 お先に失礼します。


[運野]

 仲良く、帰れよ。


[花子]

 大丈夫ですよ。

 高校生じゃ、ありませんから。


二人は揃って退社。

正面には、風俗店

「ヘルス スーパーフェロモン」がある。

嫌でも、その前を通らざるを得ない。

この日、店の前では、フェロ助が自ら

客引きをしていた。


[フェロ助]

 よっ、ヘルスケアセンターのお兄さん、

 どうですかぁ。


[土山]

 お断りします。


[フェロ助]

 エヘヘェ、

 フェロモンたっぷりの娘が

 たくさんいるよ。


[土山]

 黙れ、なにがフェロモンだ。

 女性はココロだ、ココロ!


[花子]

 わー、土山君、見直しちゃったわ。


[フェロ助]

 それでは、俺のフェロモン攻撃を

 受けてみろ。

 巨乳モミモミビーム!

 

[土山]

 うわぁ〜。


[フェロ助]

 トドメに、桃尻プリプリビーム!


[土山]

 うわぁ〜、悶絶〜!


土山、気を失い、

その場に仰向けになって倒れる。


[フェロ助]

 エヘヘェ、

 どんなキレイ事も

 フェロモンの前では、無力なのだ。


[花子]

 土山君、大丈夫、しっかりして。


[フェロ助]

 エヘヘェ、

 盛男の股間が、モッコリしてるよ。


[花子]

 キャー!

(花子、目を背ける)


[フェロ助]

 君も、もっと努力して、

 エロく、なりなさい。

 男は度胸、女はエロケだぁ。


[花子]

 なによぉ、そんな変な話、

 上から目線で言わないでよ。


[フェロ助]

 エロくなったら、うちの店で

 使ってあげても、いいよ。

 少なくても、今よりは、稼げるよ。


[花子]

 謹んで、お断り致します。


[フェロ助]

 あんな、ショボい会社に

 一生いるつもりか。

 

[運野]

 ショボい会社で、悪かったなあ。


[花子]

 部長ー!


[フェロ助]

 出たなあ、ブラウン商事の糞部長、

 俺には、キサマのウンコネタなんて、

 通用しないぞ。


[運野]

 まあまあ、

 ヘルスどうし、仲良くしましょうよ。

 一緒に、トランプでも

 いかがですか。


[フェロ助]

 トランプ?


[運野]

 このトランプは、海外で買った

 無修正、ヌードトランプだ。

 フェロモンたっぷりだぞ〜。


[フェロ助]

 そういうことなら、ぜひ。


[運野]

 では、この中から一枚引いてくれ。


[フェロ助]

 では。エヘヘッ。

 

フェロ助、ヨダレを垂らしながら

一枚引いて、めくる。


[フェロ助]

 うわぁ〜、ババを引いてしまった。

 フェロモンとは、対極をなす、

 俺の苦手なババ魔女の絵柄。

 萎えてしまった〜。


フェロ助、カードをその場に捨てて

店内へと逃げ込む。


運野、土山のそばに駆けつけ


[運野]

 大丈夫か、土山君。


土山、気絶したまま、返答なし。

 

[花子]

 私、これから駅前に行って、

 タクシー探してきます。


[運野]

 よろしく頼むよ。

 

花子、駅へと向かう。


[運野]

 土山君、しっかりしろ。


土山、ようやく目覚める。


[土山]

 すいません。もう大丈夫です。


[運野]

 今、土田君が、駅前に

 タクシー探しに行ってるから。


[土山]

 いや、その必要はありません。

 もう、ちゃんと歩けますから。


[運野]

 そうか。

 じゃあ、土田君に連絡をとり、

 そのまま、帰宅してもらおう。


運野、花子に連絡する。


[土山]

 すいません。

 こんな、みっともない所を

 見せちゃって。


[運野]

 いやいや、若くて健康な証拠だよ。

 羨ましい。

 それより、さっきの君の言葉

 「女性はココロだ」ってやつ、

 結構、彼女の心に響いたんじゃ

 ないかな。


[土山]

 さあ、それはどうだか。

 まあ、響こうが、そうでなかろうが、

 僕には、どうでもいいことです。


[運野]

 そうか。


[土山]

 本当は、僕もフェロモン大好きです。

 でも、フェロ助のことが

 ムカついたんで、つい、あんな事

 言ってしまったんです。


[運野]

 じゃあ、このトランプあげるよ。

 俺が持っていても、万が一

 妻に見つかったら、

 面倒なことになるからね。


[土山]

 じゃあ、ありがたく、頂きます。


[運野]

 鼻血出すなよ。


[土山]

 はい。


運野、フェロ助が捨てたカードを拾う。


[運野]

 フェロ助は、この絵柄が

 ひどく苦手な様だなあ。

 そうだ!

 この絵柄を描いた大きな看板を

 うちの敷地内の、風俗店から

 よく見える場所に立てよう。

 フェロ助は、毎日、不快になるハズだ。


二日後、ババ魔女の看板が、立てられる。

案の定、風俗店は、

フェロ助の指示により、撤退した。

ヘルスセンターには、

再び客足が戻りはじめた。



街を一望できる丘の上に

一人たたずむ、黒岩右近。


[黒岩]

 おのれ、運野め。

 次こそは、

 キサマを、完膚なきまでに、

 叩きのめしてやる。

 せいぜい、首を洗って待っておれ!


    < 第四話 風俗編  完 >



 

 







 


 

 



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