第四章4-28王城
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
ティアナ大奮闘開始!
4-28王城
ファルさんに案内されてこの神殿の司祭様に会いに行く。
「これはこれは、ティアナ殿下ではないですか!?」
ファルさんの案内にそのままくっついていったので、ファルさんが紹介する前に司祭様はティアナを見つけてくれた。
年のころ五十に差し掛かりそうな初老の女性で、見るからにファーナ教の司祭様ですという感じで温和な雰囲気な方だ。
既に顔見知りのようで、手間が省けそうで助かる。
「お久しぶりです、エネマ司祭様。訳有って急用で戻りました。急ぎの為、ゲートを使いました。どうぞお許しください」
「何をおっしゃられます、殿下。もともとあのゲートは国の物、許すも何もありません、どうぞ頭を上げてください」
そう言ってティアナの手を取る。
「私も噂くらいは聞いています。その件でのお戻りでしょう? でしたらお急ぎですね?」
「はい、話が早くて助かります。すみませんが、馬は借りられますか?」
「はい、ただ、この神殿には早馬はいないので、荷運び用の馬車ならありますがそれでもかまいませんか?」
普通の神殿に荷馬車があるだけでも上等だ。
ここからあたしたちの足だけで王城に戻るとすれば結構かかる。
荷馬車の方がまだ早い。
「ええ、もちろんです、ありがとうございます。エネマ司祭様」
ティアナはそう言ってエネマ司祭様に感謝する。
「ファル、ちょうどよかった。ことは急を要します。馬車の準備をしてきなさい」
「あ、はいっ、わかりました!」
そう言って見習い神官の彼女は慌ててパタパタと走り去った。
ティアナはその様子を見てから少し声を落としてエネマ司祭様に聞く。
「それで、司祭様、ガレントの被害はどうなっています?」
もし戦闘が起こっていればこういった神殿の司祭たちは協力要請を受ける。
それはケガをした者や近隣の村からの避難民の一時的な受け入れをするからだ。
「幸い今のところは戦闘も起っていない様子。国からの明確な支援要求は今の所ありません」
エネマ司祭様の話を聞いてティアナはほっと息を吐いた。
今の所、戦火までは切られていないようだ。
「不幸中の幸いです。とにかく今は一刻も早く王城に戻りたいと思っています」
「心中お察しします」
そう言ってエネマ司祭様は女神ファーナに祈りをした。
しばらくして見習い神官のファルさんが戻ってきた。
「司祭様、馬車の準備できました。ただ、あいにく馬車の御者がいないのですが‥‥‥」
「それなら、ファル、あなたにお願いします。あなたは馬の扱いにも詳しいでしょう?」
あたしですか!? という感じに自分を指さすファルさん、慌てて首を縦に振る。
「は、はい、わかりました。それで、王城までお連れすればいいんですね?」
「そうです、お願いしますよ。殿下、この者が城までお連れいたします。さ、こちらへどうぞ」
そう言って準備された馬車のところまで案内する。
「殿下、このような馬車しか準備できず申し訳ございません」
「いえ、十分です、エネマ司祭様、ありがとうございます」
そう言いながらあたしたちは馬車の荷台に乗り込む。
荷台に対面になりながら座り、ファルさんが御者の席に着く。
今から戻れば多分夕刻前には王城に着くはず。
あたしたちはもう一度エネマ司祭様にお礼を言ってから出発する。
「あなたたちにファーナの加護がありますように。」
司祭様のお祈りの言葉を後にあたちたちは王城へ向けて出発した。
◇
馬車に揺られ、緩やかな空気が徐々に夕焼け色に変わる頃、あたしたちは王城に着いた。
いきなりティアナが現れたので、城の門ではちょっと騒ぎになったけど、今は一刻も早く帰還したことを伝えたい。
「お前たち、この私の顔を忘れたというか!? 我はティアナ=ルド・シーナ・ガレントなるぞ! 即刻陛下にお目通りをさせろ!!」
ちょっと強引に門番を振り切り、城内に入る。
敷地内は戦の準備かと思うほどあわただしくなっている。
ティアナはそれを忌々しそうに見ながら階段を上っていく。
「ティアナ殿下!」
呼び止められた方を見るとヨハンさんだ。
「ヨハン、いいところに。至急陛下にお目通りを願います!」
「殿下、落ち着きなされ、今は陛下は王宮会議の真っ最中です」
「ならば私が戻ったことをお伝えしろ! それと状況を教えなさい」
ヨハンさんはわかりましたと短く言って近くの者にティアナ帰還の伝達を任せると、あたしたちを別の部屋へと案内する。
「殿下、まずはどのようにお戻りになられたか知りませんが、良かった。すでにアコード王子率いる第三軍隊が北側に展開を始めています。お兄様のエスティマ殿下も第四軍隊を引かれて出発準備中です」
「まさか、もう戦火が切られるのですか!?」
焦るティアナ、しかしヨハンさんは首を横に振り、ティアナを見る。
「現在ホリゾン帝国と交渉の場を設けているところです。アコード王子たちはあくまでもそれが破談になった場合の保険。今はまだにらみ合いの状態です」
そうか、しかしまだあくまで交渉の段階で、和平が決まったわけではない。
軍を動かしたのも圧力をかける為か?
「そうですか、それで交渉の方はどうなっているのです?」
「それなのですが、向こうは我が国がマシンドールを国境に配備し、攻め込む準備をしていると主張しています。今回の南下侵攻はそれに対するものだと言い張っており、それを率いているのはどうやら第三皇子ゾナーのようなのです」
なんと皇族の者自ら出陣か!?
そうするとかなりの準備をしているって事かな?
「皇族の人間が率いているのですか!?」
「はい」
ティアナも驚いているようだ。
通常先制攻撃と言えば被害が大きく出る場合もあるから先陣は勇猛な武将辺りが多い。
だが流石に軍事国家ホリゾン帝国。
いきなり皇族辺りが出てくるのはお国柄かな?
「とにかく、今は陛下にお会いしたい。まずはお取次ぎしてもらいたい」
「今使いの者に行かせています。ところで殿下はどのようにお戻りになられたのですか?」
「魔法王ガーベルのゲートを使いました」
ティアナは隠し立てせず、ストレートに答える。
「なんと! ゲートをお使いになられたか!? しかしあれは大量の魔力を消費するはず、よく起動しましたね」
「今の私たちにはそれができると言う事です」
ティアナの言葉にヨハンさんは考え込む。
「そこまでご成長されていたとは。これはもしかして‥‥‥」
「失礼します! 申し上げます! ティアナ殿下、陛下がお呼びです!!」
ヨハンさんと話をしていると使いの者が急ぎの様子で戻ってきた。
「わかりました、エルハイミ殿、同伴してください。ヨハン、行きますよ!」
「かしこまりました」
「ええ、わかりましたわ」
あたしたちは宮廷会議で忙しい国王陛下に会いに行くのであった。
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