第三章3-33肝試しその二
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
こ、怖くなんかないもん!で、ですわっ!!
3-33肝試しその二
生徒会長の物語を聞かされた俺たちは、順番に肝試しの目的地である丘の上の洋館に向かうことになった。
既に先行している他のグループ、スィーフの連中はきゃいきゃい言いながら出発していった。
イリナさんなんか余裕余裕って言ってたけど、ほかの子は結構ビビっていたいたみたいだ。
次いで出発したユグリアの子たちなんかエルフの姉妹ファルさんやルルさんは「人間は何でこんなバカなことするのかしら?」とか言いながら唯一男のブローさんの後ろに隠れてなんか足震えてる。
肝心のブローさんも暗くてよくわからないけどなんとなく青ざめているような‥‥‥
姉御肌でアンナさん以上にご立派なものお持ちのミーヤさんが一同を引っ張っていく感じだった。
なんて男前な。
さて、そんな中三番手の俺たちはそろそろ出発の準備にかかる。
「それじゃぁ行きましょうか」
「そうですね、行きましょう」
「問題ございませんな」
ぴこぴこっ!
えーと、誰も怖がっている様子も無く元気に出発する。
俺は一応自分も明かりの魔法を使って最後尾で出発するけど、怖いからじゃないよ。
先頭が明かりの魔法つけてるけど、自分もつけるのは怖いからじゃなくて足元よく見るためだよ。
こ、怖くなんかないんだからねっ!!
そう思っていると出発が遅れた。
前の三人は雑談しながら先行っちゃうので慌てて追いかける。
と、村の方の木の陰にさっきの女の子がいる。
どうしたのだろう?
「あなた、さっきの子ですわね? どうしたのかしらこんな所へ?」
「うん、なんか皆が賑やかにしているから何だろうと思って見に来たの」
彼女はそう言って参加者や既に出発した人たちを見る。
ちょっと迷ったが、何しているか教えてあげる
「これからみんなで肝試しに行くところですわ」
「ふーんそうなんだ、でも、お母さんが夜は危ないからお外出ちゃダメって言ってたよ」
だいぶ警戒心を解いてくれたのか、そんな子供らしいこと言ってる。
ちょっとうれしくなって俺は話す。
「大丈夫ですわ、大人の人もいるし、みんな強い人ばかりだから心配あれいませんわ」
「そうなんだ。ねえ、あなた名前なんて言うの?」
「私はエルハイミと言いますわ。あなたは?」
だんだん打ち解けあっていきながら女の子の名前を聞いてみる。
「あたしは‥‥‥」
「エルハイミぃ~! 何してるの?置いてっちゃうよぉ~!」
先行していたティアナが俺が遅れているのに気付き、大声で呼んでくれる。
「ごめんなさい、今行きますわぁ~!」
そう言って女の子に向き直り名前を聞こうとしたら居なくなっていた。
あれ?
帰っちゃったのかな?
仕方ないな、また会った時に名前聞こう、せっかくティアナ以外の同年代の女の子と話ができるんだもんね。
俺は急いでティアナたちに合流するのであった。
ところどころうっそうとした木々が生え、いざ道を進んでみると見通しが悪い。
先に行ったにチームはだいぶ先行したみたいで全くと言っていいほど姿が見えない。
闇夜を俺たちの光の魔法が照らす。
ぺちゃっ!
「ひゃっぅぅっっ!!」
なんかほほに湿ったものがぶつかってきた!!
「どうしたのエルハイミ?」
ティアナが俺の異変に気付く。
「な、何か湿ったものがぶつかってきましたわ!!」
ひゅんっ!
ぴちゃっ!!
「ぴっ、ぴゃぁぁあああぁぁぁっっ!! ティ、ティアナ! 何かぶつかってきたぁぁぁぁ!!」
思わずティアナに抱き着く俺。
するとティアナはひょいと何かをつかむ。
見ると濡れた布?
「なんかさっきからこの辺をこの布がぶらぶらとつるされてるのよね」
見ると濡れた布は糸か何かで吊るされ、ぶらぶらとしている。
よくよく見れば気付くようなものだが、パニック気味の俺にはそんなものは見えない。
「エルハイミちゃん、もしかして怖いのですか?」
「ならば自分がレディーをお守りしましょうぞ!」
みんな、マジ怖くないの?
「そ、その、こ、怖くはないのですの? 皆さんは?」
そう言うとアイミを含めみんな不思議そうに俺を見る。
「「「幽霊は【浄化魔法】で退治できますわ(な)!」」」
ぴこっ!
みんなで声をハモらせて俺に答える。
ほえ?
そ、そう言えば霊体って襲ってくるようなら魔法で迎撃できるんだった!!
「まあ、見た目が気味悪かったりするのはさすがに嫌だけどね。」
「そうですね、中には自分の死ぬ場面を何度も何度も繰り返す霊もいると聞きます」
「どちらにせよ、我々にとってその様なモノは全くと言っていいほど脅威にはなりませんな」
ぴこぴこ!
頼もしい仲間である。
俺は乾いた笑いをしながらそれでもティアナにくっつきながら歩き始めた。
しばらくすると先行していたスィーフのグループが戻ってきた。
「あら、ガレントのお姫様たち、まだここだったの?」
イリナさん、後ろの人たちどうしたの?
他の女子はビビりまくりだ。
「イリナぁ、いいから早く帰ろうよ!」
「そうだよ、もうやだぁ!」
「ぬるぬるいやあぁ!」
口々になんか言ってる。
「どうしたのよ? なんかあったの??」
不思議に思ったティアナが聞く。
「いやね、この先に結構色々と生徒会が仕掛けた脅かしの罠があるんだけど、気を付けないと面倒なのもあったね。特にあれたぶんスケルトン型ゴーレムか何かにぼろ服着させた奴が抱き着いてくる罠はそいつ自体に変なぬるぬるした液体がついているから気持ち悪いんだよ。抱き着いてきてもすぐ離れるからいいけど、逃げてもしばらく追ってくるからね」
「なんかそれ、いやですね。ぬるぬるなんて不潔で」
「たしかに汚れるのやだなぁ」
アンナさんやティアナはやっぱりぬるぬるに抵抗があるみたいだ。
「ま、せいぜい気を付けて頑張るんだね、その罠もう少し先だから。じゃ、あたしらは先行くよ。そろそろほかのみんながダメみたいだからね。」
そう言ってイリナさんは手を振って他の子を連れて歩いて行った。
さて、そうするとどうしたものか?
自然とみんなの目がロクドナルさんに向かう。
「魔法は使ってはいけないのであれば自分がそいつをなぎ倒せばいいでしょう」
頼もしいことだ。
自然と女子全員が相槌を打って歩き出す。
しばらく歩くと、アイミが騒ぎ始めた。
ぴこぴこ!
どうやらそのスケルトンが現れたようだ。
スケルトンはぼろ服を着ていて、ご丁寧にかつらまでかぶっている。両手を広げて抱き着こうと寄ってくる。
うわぁー、ビジュアル的にすっげーやだ!!
俺こういうの苦手っ!!
襲い来るスケルトンにロクドナルさんは軽く足払いして倒れたところに首に正拳突きを入れて首を断つ。
倒れたスケルトンはワキワキとまだ動いているが、頭を失ったので襲ってくることはない。
「ふう、確かにこれは女性には嫌がられるでしょうな」
見ると手にはべったりと何かぬるぬるした液体がついている。
これ多分知らないとグループの誰か一人は犠牲になる仕掛けなんだろうなぁ。
ロクドナルさんは手を振ってぬるぬるを振り落としてからハンカチでそれをぬぐう。
それからしばらく歩くと足元の草が絡みついてくる。
どんな魔法か知らないけど、束縛力とかはそれほどないので、せいぜい転ばすのがやっとだろう。
スケルトン追ってきてこれやられたら確実に転びそうだけど。
それからいきなり飛んでくる蜘蛛の巣や、落ちてくるムカデに遭遇したり、涙目の もう嫌だ―っ! て騒いでいるエルフ姉妹のユグリアのグループと会ったりしていよいよ例の洋館に到着する。
話に有ったようにぼろぼろの外壁などはところどころ火災によるダメージをいまだに物語っている。
かろうじて原形はとどめているが、半分くらいは焼き崩れて瓦礫になっている。
当時の凄惨さを物語っているようだ。
ぼろぼろの門をくぐって庭に入ると、誰かが定期的に掃除でもしているかのようにそこそこきれいになっている。
庭の奥に歩いていく。
「あれ、あれみたいね」
見ると墓石の周り一面に紫っぽい小さな花が咲いている。
そして墓には紫の花以外がお供えされている。
やはり誰かが墓守でもしているのだろうか?
俺は何となく手を合わせて目をつむる。
「エルハイミちゃん?」
「そうでありますな、夜間の突然の来訪、挨拶ぐらいしませんとな」
そう言ってロクドナルさんも目をつむり黙とうをささげる。
つられ、アンナさんやティアナも同じく黙とうをささげる。
「ごめんね、お花少しだけもらうわね」
そう言ってティアナは紫の小さなお花を摘む。
ぴこぴこ!
アイミが何かに反応して俺たちに呼びかける。
と、「いいよぉ~」と女の子の声がする。
アイミが反応した方向を見るとぼうっと薄明るい真っ白な服を着た小さな女の子が現れた。
「にょっ、にょぉぇぇぇぇぇええええぇぇぇぇっっ!!」
思わずわけのわからない悲鳴を上げる俺、そのままアンナさんのお尻の後ろに隠れる。
「で、でましたわぁぁぁぁぁぁっっ!!」
俺ダメ、こういうのもダメなんだぁ!!
「エルハイミちゃん、落ち着いてください、あれ多分幻影魔法ですよ」
冷静なアンナさん。
そう言ってその子の元まで近づく。
その子に触れるけど透き通っていて何も起こらない。
「やはり幻影魔法ですね、ここに魔法石が置いてあります。条件がそろうと発動するように仕組まれていますね。どうですエルハイミちゃん、これでもう怖くはないでしょう?」
アンナさんはからくりを暴いてから俺に微笑みかける。
「た、確かにそう思えば怖くはありませんわね」
今はティアナに抱き着きながら様子を見る俺だったが、ティアナによしよしとされて落ち着いた。
その後俺たちは順調に元の会場まで戻り、証拠の紫の小さな花を生徒会長に提出して無事肝試しクリアー。
ティアナたちは一番面白かったのはエルハイミの反応だったとか笑っている。
もしかして、みんな肝試しより俺の反応見たくて参加してたの?
そんな、俺がホラー苦手って何時知ったんだよ!!!?
「いいもの見れたし、さて、お風呂入って寝ましょうか」
「確かにいいものが見れましたな、エルハイミ殿の年相応な反応はなかなか見れませんからな」
「ええそうですね、かわいらしい反応はとてもよかったですね」
ぴこ!
え?
何それ、みんな本当に俺の反応を楽しんでいたの!?
「ま、まさか皆さん最初からですの!?」
「そりゃぁ、参加するって申し込んだときから、大丈夫ですの!? とか こ、怖くないのですの?? とかその後もおどおどしていれば気付くわよ」
ティアナはニヤリとしていたずらっ子のような顔をした。
「力及ばぬことの方が多いですが、こういう時は頼ってもらって結構ですぞ、エルハイミ殿」
さわやかな笑顔のロクドナルさん。
「そうですよ、エルハイミちゃん、もっと私たちを頼ってもいいのですから」
優しく俺のほほをなでるアンナさん。
ぴこっ!
なんかいい雰囲気に便乗するアイミ。
みんな、もしかして俺のために?
「ま、頑張りすぎる妹分にはいい薬ね。もっと肩の力抜いていいんだからね、エルハイミ」
最後にティアナが最高の笑顔で俺に笑いかけてくれる。
内心俺はため息をついた。
みんなに結構気を使わせてたんだな。
そんなつもりはなかったんだけど。
‥‥‥
「そ、その、あ、ありがとうございますわ」
ちょっと照れが入ってしまったが、おれは素直な気持ちで感謝の気持ちを伝える。
みんな笑顔でホテルに戻り始める。
年相応か。
そういや、おれってまだ六歳か。
もう少し気を抜いた方が良いのかな?
先に歩き始めるみんなを見ながら俺もホテルに戻ろうとした。
「エルハイミ。」
と、声がかかる。
声の方を見ると村の女の子がいた。
「あれ? どうしたのですの?」
「うん、エルハイミにお礼言いたくて来たの。お母様のお墓に挨拶してくれて。来る人みんなお花だけ持ってちゃってうけどエルハイミたちはちゃんと挨拶してくれたから。ありがと」
「え?」
「私の名前はマリア。エルハイミありがとね。じゃ、またね」
そう言って女の子はすうぅっと消えていった。
‥‥‥
‥‥‥って、それって。
「ふにゃぁぁぁぁっっっっつつつつっ!!!!」
またも俺の悲鳴がこだまするのであった。
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