第十七章17-7イオマとシェル
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
エルハイミぃ~、ねえったらねぇ、エルハイミぃ~!!(シェル談)
17-7イオマとシェル
かぽーん。
あたしは久しぶりの実家のお風呂の湯舟の中で思い切り手足を伸ばしていた。
「うーん、明日にはいよいよ出発ですわね、こうしてお湯につかってゆっくりできるのも今日が最後ですわね?」
「そうね、ところでれエルハイミ、実はお願いが‥‥‥」
「お断りしますわ!」
あたしはシェルのお願いを最後まで聞かずに断った。
「なっ! まだ話も終わっていないのに!? 酷いよぉ~エルハイミぃ~」
シェルが抱き着いてくる。
「シェル!! お母様から離れなさい!!」
「またシェルがエルハイミ母さんに手を出したの?」
「相変わらず盛んなバカエルフでいやがります」
コクは慌ててシェルを引きはがそうとする。
セキはクロエさんに頭を洗ってもらっている最中だ。
「いいじゃぁん! ティアナいなくなったらあたしが正妻でぇ!! エルハイミぃ!」
「何を言っていますかこのバカエルフは!! お母様には手を出させません! お母様は私のです!!」
シェルを後ろから羽交い絞めにするコク。
最近は十歳ちょっとになった感じなので自分より背の高いシェルにもどうにか手が届く。
としばらくじゃれていたシェルとコクがピタッと止まる。
「‥‥‥コク、あんたもしかして」
「なんですかこのバカエルフは!?」
動きを止めたシェルはその場でくるりと振り返りいきなりコクの胸を触る。
「ひっ!? な、何をするのですこのバカエルフは!!」
「‥‥‥やっぱり。コク、あんた胸大きくなったでしょ?」
はい?
コクの胸が大きくなった??
シェルのその一言にあたしは驚いて思わずコクを見る。
コクは胸を両手で隠しながら数歩シェルから離れ警戒している。
「わ、私の体はお母様にしか捧げないのです! バカエルフにどうにかされて良いものではありません!!」
本気で警戒している。
そしてコクはそろそろとあたしの後ろに隠れる。
「お母様あのエロフは危険です!!」
「なによそれ? で、コク、あんた大きくなったでしょ!?」
あたしはもう一度コクを見る
あたしの後ろに隠れたので胸元がのぞき見えるけど、そうなのかな?
「くっ、ほんのわずか大きくなっただけです。まだまだ本来の大きさには程遠いです。ちゃんと成長すればお母様のお顔だって挟めます!!」
それってパ〇パフってやつ?
それはそれで興味あるけどコクにやってもらうのはちょっと‥‥‥
自分の娘同然の子にそんなことされるのは流石に。
「コ、コクでさえ大きくなっているってのに‥‥‥ この百八十年あたしなんかずっとこのままだっていうのに!!」
シェルの胸を見るとその、何と言うか「残念」という言葉しか出てこない。
これってクロエさんより小さいし胸当てだって不要なのじゃないかってくらい。
動いても揺れている所を見た事が無い。
「エルハイミ! やっぱりあたしのお願い聞いてよ!! イオマ同様あたしの胸もマッサージして大きくしてよ!! せめて揺れるくらいに!!」
切実なシェルのお願いがわびしくお風呂場に響く。
「あらあらあら~、大丈夫よシェルちゃん、子供が出来ておっぱいあげる頃には胸が張って大きくなるわよ~。だから三人目の孫を頑張ってねぇ~!!」
何時の間にか湯船に入っていたママンが突然そう言う。
「うぴゃっ! お、お母様、何時の間にですわ!?」
「あらあらあら~、良いじゃないの親子水入らずで裸の付き合いしても~。あ、そうそう、バティックやカルロスも誘ったのに断られちゃったぁ~、残念ねえぇ~」
いやいやいや、流石にあの二人と今も一緒にお風呂は無いでしょう?
流石にもうすぐ成人なのだものいくら家族でも一緒にお風呂はまずいでしょ?
「あらあらあら~、カルロスはその気になっていたのにバティックに止められてたわねぇ~」
カルロス、お前って子はぁ~~~~っ!!
「どうもヒュームのそう言う所分からないのよね? 家族なら別にいいじゃない?」
「シェル、旅の途中に決してカルロスにそれは言ってはダメですわよ? 全くあの子ときたらですわ」
あたしはため息をつきながらママンを見る。
もうすぐ四十歳を超えると言うのに相変わらずものすごいスタイルだ。
どうやったらあの体形維持できるのよ?
三人も産んで!
「うらやましいですね、お母様のその胸は‥‥‥」
シェルは湯船につかりながら自分の胸に手をあてる。
「あらあらあら~、大丈夫よ、エルハイミにしてもらえばすぐに大きくなるわよ~?」
「何をするのですの、何を!?」
「あらあらあら~、だってエルハイミったらティアナちゃんの胸も大きくしたのでしょう? だったらシェルちゃんのも出来るわよね~?」
いや、それやったら転生したティアナに何言われるか分かったもんじゃないでしょうに!!
絶対ティアナの事だもの一週間は寝かせてくれなくなっちゃうわよ!!
と、あたしはそこまで考えてハタと気付く。
転生したティアナってまだまだ子供‥‥‥
い、いや、今だったら赤ん坊‥‥‥
ティアナがどんなに愛おしくてもキスもすぐには出来ない‥‥‥
うう、もしティアナ見つかっても当分おあずけぇ!?
ぶくぶくぶく‥‥‥
あたしは湯船に顔の半分まで沈むのだった。
* * * * *
「さて、それでは行ってまいりますわ、お父様、お母様」
馬車に乗りながらあたしはパパンとママンに挨拶する。
最後までコクとセキに抱き着いていたママンだったけど二人が馬車に乗り込む頃にはハンカチをひらひらして涙目で別れを惜しんでいる。
「あらあらあら~、コクちゃん、セキちゃんまた必ず遊びに来てねぇ~。お婆様ずっと待っていますよぉ~」
「わかりましたお婆様、また必ずお母様と来ますのでそれまでお元気で」
「ばいばい~、おばあちゃん!」
セキもすっかりママンと打ち解けていた。
いや、セキの場合はママンに餌付けされてたと言った方が早いか?
燻製肉とか干し肉なんかをいっぱいもらっていたなぁ。
「エルハイミ、二人を頼んだぞ」
「はい、お父様お任せくださいですわ。きっちり鍛えてきますわ!」
「父様、ありがとう‥‥‥ 行ってきます!」
バティックはそう言って馬車に乗る。
そしてカルロスは‥‥‥
「ユミナ、行ってくるね。大丈夫、僕はきっと帰ってくるから、だから僕の帰りを待っていてくれ。それとこれを君に」
カルロスはそう言って護身用の短剣をユミナちゃんに渡す。
「カルロス様、これは?」
「僕がいない間こいつが君を守ってくれる。お父様たちがいるから大事は無いだろうけど、大切な君の為にね。用心だよ」
そう言って短剣を渡しながらさりげなく手まで握る。
途端にユミナちゃんは頬を赤く染めカルロスを熱い眼差して見つめる。
「カルロス様!!」
「行ってくるね」
そう言ってすっとカルロスはユミナちゃんから離れて馬車に乗り込む。
「おい、カルロス‥‥‥」
「あ、父様行ってくるね!」
そう言うカルロスにパパンは思わずサムズアップする。
こ、この親子はぁ~っ!!
「あらあらあら~、本当にカルロスは若い頃のお父様に似てきたわねぇ~、確かいろんな女性にも同じような事をしてましたっけ、あなた~(ぴきっ、おこまーく)」
「はっ!? ユ、ユリシア、ほらコクたちが手を振っているよ、お前も手を振り返してあげなさい!!」
額に脂汗びっしりかいてパパンは慌てて馬車のコクたちを指さす。
ママンは上手くそれに誘導されまたハンカチを振ってコクたちとの別れを惜しんでいる。
大きく安堵の息を吐くパパンを見ながらあたしもため息をつくのだった。
* * * * *
あの後ササミーたちまで参戦して騒がしい別れをして実家を出発した。
あたしはふと隣に座っているシェルを見る。
まだわずかだけどシェルの方が背が高い。
スレンダーでエルフだから美人だけどシェルの場合黙っていればエルフの中でも特に可愛い。
そんなシェルの胸をかぁ‥‥‥
あたしはイオマを思い出す。
イオマは今年で十九歳になる。
見た目は既にあたしよりお姉さん。
最後に会った時はあたし好みの美人さんになってあたしよりずっと大きな胸に成長していた。
身長だってあたしより大きくなっていたしね。
「時の指輪」をしているあたしはシェルの話だとわずかに成長はするけど変化がはっきりと表れるのは何百年もかかるらしい。
大体成人するまでは人間族と同じくらいの速度で成長して、その後はエルフ族と同じ時間でしか成長できなくなっているそうだ。
確かにあたしは外観上は十五、六歳のまま成長が止まっている。
本来なら二十歳近くになっているのだからもっと背丈だって胸だって成長できるはずだ。
何せママンとあたしは髪型以外よく似ているとドゥーハンさんに言われている。
だったら本来はあのくらいの体形にあたしだってなれるはずだ。
うーん、ママンてハッキリ言ってナイスバディ―だからなぁ。
はぁ、ティアナもナイスバディ―だったしなぁ‥‥‥
久々に体形とかであたしはあれやこれやと考えている。
「うーん、むにゃむにゃ。エルハイミぃ~、あたしの胸も大きくしてよぉ~」
あたしに寄りかかって居眠りしているシェルは変な寝言を言っている。
あたしは遥かかなたの空を見ながら又イオマを思い出し女性のスタイルについて思いを巡らす。
揺れるくらい大きくしたらやっぱりティアナに怒られるだろうなぁ‥‥‥
でも、成長しないのってなんとなく女性として厳しいと言うか。
今の姿から簡単には成長出来無くなったあたしは初めてその事実を実感するのだった。
評価、ブックマーク、ご意見、ご感想いただけますと励みになります。
誤字、脱字ありましたらご指摘いただけますようお願いいたします。




