第十六章16-24巨人との戦い
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
畜生!
あんなのどうしろってんだ!?
ああ、最後に一目ユリシアに会いたかったなぁ‥‥‥(ドゥーハン談)
16-24巨人との戦い
ここから見取れる「狂気の巨人」には体中に鎖が絡まり付いている。
「あれが我らが祖先が鍛え上げた鎖か、確かに見事なものよのぉ」
ドワーフ王デミグラスは目を細め「狂気の巨人」に絡み着く鎖を見ていた。
「あれは魔鉱石にドワーフの技術の粋を結して作ってもらったものだからな。並の魔獣や幻獣だったらそれだけで全ての動きを封じられるものだ」
ご先祖様はそう言ってあたしたちに向き直る。
「今はまだ回復の為に怒りや憎しみと言った負の感情をかき集めているがある程度それが終わると暴れだすだろう。本気で暴れ出したらいくらあの鎖でも長くはもたんぞ!」
魔鉱石を使った鎖ともなれば強力なんてものじゃないはずだ。
それでも「狂気の巨人」を押さえきれないとは。
「だいぶ近づいたけど、近くに来れば来るほど大きさに圧倒されるわね。それで、あんなの復活しちゃったけどルド王国のジュメルたちはどうなったのかな?」
シェルは弓の調整をしながら矢筒の中身を確認している。
「多分何もしないでしょうですわ。もう悲願の『狂気の巨人』は復活したのですから」
いや、既に「狂気の巨人」にどうにかされてしまったかもしれない。
もしくは自身を贄に捧げる者もいるかもしれない。
「それでご先祖様、『狂気の巨人』を再封印するにはどうしたら良いのですの!?」
「まずは設置された『女神の杖』が所定の場所にあるかどうかの確認だ。それが有れば魔法陣に魔力を送り込み再度『虚無の牢獄』を開く。ドワーフの鎖が持ってくれればそのまま再封印が出来る訳だが‥‥‥」
そう言ってご先祖様は「狂気の巨人」を仰ぎ見る。
すると巨人がゆっくりを息をするかのように動き出した!!
『ぐぅぅうううぉぉぉぉおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぅ‥‥‥」
低くそして体の芯にまで響く重低音で「狂気の巨人」が呻いた。
「なんて声! まるで地の底からする声だわ!」
シェルがあたしたちが皆思っている事を代弁するかのように言う。
そして腕を動かし始めた「狂気の巨人」だったがドワーフの鎖でその動きを止められる。
「見えた! ティアナ様、エルハイミ様!! ルド王国の城壁です! まだ施設は残っているようです!!」
バルドさんが叫ぶ。
見れば城壁はこちら側はまだ残っている様だけど場所によって「狂気の巨人」復活で崩れている所も有るようだ。
「いいか、『女神の杖』が設置されている場所は行けば分かる! 『狂気の巨人』を中心に均等の距離で設置されているはずだ! それがあるかどうか直ぐに確認してくれ! エルハイミとティアナは俺の所に! 『女神の杖』が確認できたら合図よこせ! 極大魔法【無限虚無牢獄】を発動させる!!」
一気にそう言ってご先祖様はバルドさんに一番近い『女神の杖』があるだろう場所に向かうように指示する。
「皆『女神の杖』の確認を! 見つけた者は光の魔法を上空に打ち上げてください!! エルハイミ、私たちも行きます!!」
師匠はそう言って馬に飛び乗り駆けだす。
「頼んだぞエルハイミ!!」
ドゥーハンさんたちもそう言って師匠とは反対方向に走り出す。
「セレ、ミアムは合図の数と確認をしてください! セキ、上空からも確認願えますか?」
「はい、ティアナ様!」
「分かりましたティアナ様!!」
「わかったお母さん。いくね!」
セキはそう言って服を脱ぎ馬車から飛び降りながら幼竜の姿になって上空へ飛び上がる。
「ちっ! 仕方ない、俺も行く! ルド王国には来たことあるから勝手は分かる。 エルハイミ後は何とかしろよな!!」
セレやミアムは上空を見上げ光の魔法が打ち上げられるのを見逃さないようにしている。
ゴエムも『女神の杖』の有無を確認に馬を引き寄せ飛び乗り走り出す。
「お母様、我々も竜の姿になり上空で待機しましょう。万が一動き出したならばその場から動けぬよう牽制します。魔法王よ、それで良いですね?」
「ああ、魔法陣から出られちまったら封印出来ねえからな。頼む」
コクやクロさん、クロエさんもそう言って黒龍の姿になり上空へと飛び上がる。
「ティアナ、初号機はですわ?」
「初号機は私のポーチに保管しています。アイミはそのまま私たちについて来ています」
今更だけど初号機はあるのか。
最悪ティアナには初号機に乗ってもらって駄目な場合はガレントにまで逃げ伸びてもらいこの事実を知らせてもらいたい。
「主たちの守りは俺たちがする。シェルいいな?」
「ええ、いいわよショーゴ。エルハイミはあたしが守る!」
馬車はどんどんと施設に近づく。
「ティアナ、エルハイミ! あれっ!!」
マリアの声にそちらを見ると施設からブラックマシンドールたちが!?
よくよく見れば魔術師っぽいのもいる!?
「施設の守りかですか? しかし今更ブラックマシンドールが出てきたところで! アイミ!!」
ぴこっ!!
どうやら並走して飛んでいたアイミだったようだがティアナの指示にすぐに前に飛び出し【炎の矢】を触手の様なものから連発してくるブラックマシンドールたちをものともせず吹き飛ばす。
体内に保有する魔結晶石の四連型魔結晶石核が力を発揮して次々にブラックマシンドールたちを破壊していく。
「すげえな、おい、エルハイミ! この機械人形これが終わったら俺にも一体よこせ! こいつは研究のし甲斐があるぞ!」
その様子を見ていたご先祖様は面白いおもちゃを見つけた子供の様に目を輝かす。
「これが終わったらいくらでもマシンドールくらい差し上げますわ! それよりあれですわ!!」
あたしが指さす上空に光の魔法が!
あちらは師匠たちが向かった方角。
師匠たちが早速「女神の杖」を見つけた様だ。
「よし、『女神の杖』は封印解除後やはりそのままか! そろっていればすぐにでも再封印が出来るぞ!!」
喜ぶご先祖さまだったがちょうどその時また「狂気の巨人」が唸り声を発した。
『ぐがぁぁぁああああぁぁぁぁああぁぁあぁぁぁっ!!!!』
そして鎖を引きちぎる為に両腕を動かし始めた!!
「うわっ! 動き出した!?」
「ご先祖様! まだですの!?」
シェルは既に矢を構え初め、あたしはご先祖様に再封印について聞く。
「駄目だ、三つ目まで確認できたが全部そろっていなければ発動できねえ!」
「ティアナ様、四つ目!!」
「あっちも! ティアナ様五つ目です!!」
セレやミアムも見逃さないように上空を凝視している。
既に飛び上がったセキやコクたちも「狂気の巨人」から距離を取り始め周りを周回している。
「後五つ! 早く確認が出来れば!」
「ティアナ、あれっ!」
上空に飛ばされる光の魔法ばかりに注意をしていたティアナだったがマリアの警告に「狂気の巨人」を見る。
すると片腕の鎖がとうとう断ち切られた!?
「ちっ! 持たないか!? くそう、こうなったら一か八か再封印の魔法を始めるぞ! エルハイミ、ティアナこのまま術式始める! 合図したら俺に魔力ありったけ流し込め!!」
「わかりましたわ!」
「はい、ご先祖様!!」
こうなったら確認できなくても術式を始めるしかない!
ご先祖様がそう判断した時だった。
「ティアナ、エルハイミ! あれっ!!」
またマリアが警告をする。
見れば自由になった片腕で地面の何かをつかんだ「狂気の巨人」がそれを口に運ぶ。
開かれた口にその何かを放り込む瞬間あたしたちは見た。
それは「人型」だった。
大きく開かれた口にまるで豆でも放り込むかのよううに人々が放り込まれていく。
その光景は信じがたいモノであり背筋をぞっとさせる光景だった。
「くそっ! 奴め近くに贄があるのに気付いたか!? ジュメルってのは本気で自分さえ差し出すんだな! 畜生! このままでは!!」
「狂気の巨人」は数度同じことを繰り返す。
その都度その口に数多くの人型が無残にも放り込まれていく。
そしてその場にはもう人がいなくなったのだろう。
「狂気の巨人」は回りをきょろきょろと探し始めた。
『ぐぅおぉぉぅぅうううううぅぅっ!!』
雄たけびを上げ鎖を引く。
一瞬鎖は「狂気の巨人」の動きを止めるももう一度鎖を引っ張るとそれはとうとう引きちぎられ始めた!
「鎖がですわっ!!」
「ちっ! 人間喰って力を取り戻し始めたか!! だめだ、魔法陣から出ちまう!!」
あたしは慌ててコクに念話を飛ばす。
『コク、駄目ですわ! 奴が動き始めてしまいましたわ! 魔法陣から出ないように牽制してくださいですわ!!』
『わかりましたお母様! クロ、クロエ、セキ行きます!!』
コクはそう言って四体のドラゴンは炎を吐き出し「狂気の巨人」を牽制し始める。
流石に竜の攻撃に「狂気の巨人」も気付き払い除けようとその巨大な腕を振り回す。
「ティアナ様、七つ目!!」
「後三つ!」
「いや、この正面に一本あるはずだ! あと二つ!!」
セレやミアムが着く時報告をするがこの近くに一本あるはず。
ならば残り二つか!?
そして馬車は一番近い所にあるはずの祠に着く。
「畜生! なんてこった!!」
馬車からすぐに下りて施設の近くにあった祠を覗き込んだご先祖様は大声で罵声を発していた。
「どうしたのですの!?」
「やられた! 『女神の杖』が無い!!」
なんと、一番近い祠にあるはずだった「女神の杖」が無くなっていた!?
ジュメル!
最後の最後まで何処までも!!
「ティアナ様九つ! 全ての光が打ちあげられました!!」
ミアムのその報告にあたしたちは歯ぎしりする。
何処だ?
最後の杖は何処にやった!?
「まだ近くにいるはずです! そのものを捕まえ『女神の杖』を奪い返すのです!! アイミ!」
ティアナは剣を抜き近くを探し始める。
シェルもショーゴさんも同じくすぐに馬車から降りて近くを探し始める。
「エルハイミ、あのドラゴンの嬢ちゃんたちに言って集まった連中に牽制させて時間を稼がせろ。魔法陣から出られたら終わりだ!」
「わかりましたわ! コク!!」
ご先祖様にそう言われあたしはまた念話でコクに指示を飛ばすのだった。
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