第十六章16-17モルンの町
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
くっそう、可愛く成りやがって!(ゴエム談)
16-17モルンの町
「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン。貴様に聞く、一体何が起こっているんだ?」
ゴエムはあたしたちに取り囲まれているにもかかわらず横柄な態度であたしにそう聞く。
「ホリゾン帝国の宮廷魔術師! 大人しくなさい!!」
ティアナはそう言って剣を抜く。
シェルもショーゴさんもバルドさんも既に構えている。
「ふん、ティアナ姫か? エルハイミ同様久しぶりだな。しかし今は俺の質問に答えてもらおう。一体何が起こっている? 我がホリゾン帝国はどうなっているのだ!?」
あたしは息を飲む。
まさか本当に分かっていないのかこの状況!?
「ゴエム、あなたた宮廷魔術師でありながら何も知らないと!?」
「ふん、お前らの事は嫌という程聞かされている。問題はあのジュメルだ。一体何者なんだあいつらは!? あり得ない魔道を操り化け物じみたキメラたちを扱い、そしてゾルビオン陛下の信頼をあそこまで受けられるとは!! ジュリ教や聖騎士団でさえあいつらの言う事を聞く。一体何なんだ!?」
あたしは絶句した。
この状況下でゴエムはホリゾン帝国の宮廷魔術師のくせに何も知らされていいない?
ガレントとホリゾンで何時戦争が始まってもおかしく無いという状況下に?
「ゴエム‥‥‥ あなた本当に知らないのですの?」
「‥‥‥話せ」
そう言ってゴエムは魔導士の杖を放り投げそん場に座り込む。
あたしたちは顔を見合わせ事実を話し始めた。
* * *
「まさかゾルビオン様が操られているだと‥‥‥ 反逆者のゾナー様が帝都の人間とティアナ姫の配下であのティナの町で参謀をしているだと? 信じられん。ゾナー様は貴様らに惨殺されたんじゃなかったのか?」
「今現在私たちがあなたに対して嘘を言う必要がありますか? エルハイミの言った事は本当です」
流石に剣は鞘にしまったもののティアナは警戒を怠ってはいない。
ゴエムに今までの事情を話、ゴエムたちがボヘーミャから引き揚げた後についても状況を話した。
そして分かった事はやはり帝都の人間は事実を知らされていないで洗脳まがいの誇張で事実を捻じ曲げられているという事だ。
だが流石にジュメルについては不信感を持つ者は多くこうしてゴエムのように宮廷魔術師でありながら情報を欲しているほどだ。
「ですから秘密結社ジュメルの目的は人類破滅の為『狂気の巨人』を復活させることなのですわ」
最後にあたしが結論を言う。
するとゴエムはあたしの顔をまじまじと見てから目を逸らす。
ちょっと赤くなっている所が初心な感じがする‥‥‥
「ゴエム?」
「う、うるさいっ! ちょっとかわいくなったからって易々俺の名を呼ぶな!」
ぷいっ。
完全に顔を背ける。
「ないこいつ? エルハイミに見とれてたの? まるで童貞ね!」
「なっ!? このバカエルフ!! だ、誰がど、童貞だよ!!!!」
あたしに名を呼ばれて思春期の男児のようにそっぽを向くゴエムはシェルの言葉に過剰に反応する。
あ、こいつまだ童貞なんだ。
確かあたしより二、三歳年上だったはず。
「ふむ、童貞ですね」
「そうなの?」
「うんうん、わかりやすいですね」
「そう言うものなのミアム?」
「ねーねーシェル、『どうてい』って何?」
コクは腕を組んでうんうんと唸りセキは小首をかしげてゴエムを見上げる。
ミアムやセレは少しゴエムから距離取ったりもする。
マリアはシェルにくっついて聞いているけどシェルは微妙な顔して苦笑いしている。
「う、うるさい! おいエルハイミ! お前らこのガキどもにどんな教育しているんだ!?」
完全に真っ赤になって頭から湯気あげながら怒っているゴエムにティアナがすいっと出て言い放つ。
「我妻エルハイミに見とれるのは良しとしましょう。しかし手を出したらちょん切りますよ!!」
ブーツに隠していたナイフを引き抜き凄むティアナ。
「妻ぁだぁ!? お、お前ら本当にそう言う関係だったのか!? じゃあ学園時代からエルハイミがそこらじゅうの女の子たぶらかしていたって話も本当なのか!?」
「誰がたぶらかしたですの!?」
「エルハイミ、そんな、私以外に‥‥‥」
「そこっ! ティアナも何言っているのですの!? 私がティアナ以外に手を出すはずが無いでしょうですわ!!」
「あたしは手を出されても良いんだけどね?」
「お母様私もです」
学園時代一体どう言う話になっていたのよあたしって!?
それにティアナもずっと一緒にいたのに何ゴエムの戯言に惑わされているのよ!?
ついでにシェルもコクも何誤解招くような事言ってるのよ!!
ゴエムはあたしを見て心底残念そうな顔してつぶやく。
「やっぱりかぁ」
「何がやっぱりですの!? 私はティアナ以外に手なんて出していませんわよ!!」
おのれこのゴエム!
あたしはゴエムを睨む。
するとゴエムは真顔に戻り話し始める。
「まあいい、聞きたい事は聞けた。そしてジュメルの正体もやっとわかった」
あたしたちに緊張が走る。
「ゴエム、あなたどうするつもりですの?」
「ふん、お前らがその気になれば俺なんかすぐに始末できるだろう? すぐにはその話信用できない。だからしばらくお前らと一緒にいる事にする。殺したければすぐに殺せばいい。どのみち俺はもう城に戻る気が無くなったからな」
そう言ってその場にごろんと寝転がった。
豪胆なのか投げやりなのかあたしたちは顔を見合わせる。
そしてミアムが杖を取り上げシェルが紐で一応ゴエムの両手を縛る。
流石にこんな態度されてはどうにかできるモノでもないし、かと言ってそのままにも出来ない。
厄介な同行人を引き連れてあたしたちは帝都とルド王国の間にあるモルンの町を目指すのだった。
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