第十六章16-16世界大戦
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
たまには赤お母様のも良いですね(コク談)
16-16世界大戦
ガレントと連合軍がティナの町に集結し体勢を整え次第ホリゾン帝国に対して進撃を始める事となった。
実際にはこれは連合に加盟している国々も参加しているも同然で普通の戦争であればホリゾン帝国はほぼ全世界を敵に回し勝ち目が無くなるはずだった。
「ホリゾンがガレント及び連合軍との戦争に入れば事実世界大戦となりますが問題はその前に『狂気の巨人』が解放される危険性が高いと言う事ですね、エルハイミ?」
「はい、ティアナ。『知識の塔』でどれほどジュメルが知識を入手したかは分かりませんが今までの事を考えると私たちの知らない魔道や知識を入手した可能性が高いですわ。それに皇帝ゾルビオンのあの演説、かなりの自信があっての事でしょうですわ」
数で言えば確実にホリゾン帝国の方が不利。
それを覆す方法が有ると言う事だ。
‥‥‥いや、そもそも覆す必要さえないのかもしれない。
「狂気の巨人」が復活さえすればこの世は終わる。
秘密結社ジュメルの本当の目的は人類滅亡。
戦争なんてどうでも良いのかもしれない。
「ティアナ様、エルハイミ様。すぐにでもルド王国へ向かう手配をします。帝都から出る方はそれほど検問も厳しくありませんし、戦争を嫌い出て行く冒険者たちもいます」
「バルド、お願いします」
バルドさんはさっそくルド王国へ向かう手配を始めてくれる。
「ねぇねぇ、お母さん。お腹すいた!」
「ああ、ごめんなさいセキ。すぐにおっぱいをあげますね」
ひと段落したところで我慢できずにセキがティアナに魔力を要求する。
「むっ? そう言えば私もお腹すきましたお母様!」
「コク? あなたには先日魔力供給したばかりではありませんの?」
「いえいえ、ここは準備を怠ってはいけない所。十分に魔力供給をしていただき先の問題対処に備えなければです! さぁ、さあさあ!」
違う、絶対にそんなのが目的じゃない!!
瞳をらんらんとさせ鼻息荒いコクはまるで夜のティアナそっくりだ。
吸い方だって、その時の手つきだってなんかティアナに似てきた。
「コク、どうしてもというなら私のをあげます。エルハイミは休んでいてください」
「赤お母様のですか? それも良いですね。赤お母様のも美味しいですし」
「え~っ? コクもお母さんのおっぱい飲むの? あたしの分減る!」
じゅるりとよだれを拭き取るコクに取り分が減ると怒るセキ。
ティアナはあたしの事気遣って二人に魔力をあげようとするけど、最近のコクは半端なく魔力を持って行くからいくらティアナの膨大な魔力でも危ない。
「ティアナ、私もしますからティアナこそ無理しないでくださいですわ」
結局二人してコクたちに魔力を吸わせる羽目になる。
まあこの先余裕が無ければ魔力供給もままならなくなるから確かに今のうちではあるのだけど。
あたしたちは隣の部屋で魔力供給をするのだけどコクたちのせいで悶々とする羽目になってしまった。
こんな時なのに後でティアナが欲しくなってしまう。
あたしは深くため息をつくのだった。
* * * * *
「エルハイミ、ティナの町から連絡。ファムの話だとぞくぞくと英雄たちが集まているらしいわ!」
「英雄たちですの?」
シェルはどうやら直接ティナの町にいるエルフのファムさんとやり取りしているらしい。
そして師匠が呼びかけていた英雄たちが集結しているらしい。
「うん、どうやらガレント軍より先にこちらに向かうらしいわ」
「よくもこんな短期間で集まってくれたものですね?」
分かる範疇でシェルは状況を話してくれる。
そしてティアナの言う通りこの短期間で英雄たちが良くもティナの町に集まってくれたものだ。
「どうやら学園長とアコード陛下が協力してゲートを使ってティナの町にまで英雄たちを運んでいるみたいね。アンナとイオマが頑張ってくれているらしいわ」
シェルは風の精霊にお礼を言って返信を送っている。
あたしたちがルド王国へ向かうと言う事を。
「しかしこれは心強いですね。ガレント軍が動く前に英雄たちがホリゾンに来てくれれば」
「でも時間的にはやはり厳しいですわ。やはり私たちでジュメルの野望を阻止しなければですわ」
ティアナの言う通り心強くはあるもののやはり油断はできない。
すぐにでもルド王国に向かわなければだ。
「ティアナ様、伝書鳩の方は先ほど飛ばしました。バルドさんが馬車の準備も出来たと言っています」
ミアムがティアナに報告に来ていた。
「わかりました、他のみんなに言って出発します」
あたしたちはそう言って立ち上がるのだった。
* * * * *
「ティアナ様、エルハイミ様もうすぐ検問です」
あたしたちは馬車に乗り込み帝都を脱出する冒険者や行商人に紛れてエリモアを出ようとしていた。
「よぉし、次のやつだ!」
横柄な衛兵がそう言ってあたしたちの番が来る。
バルドさんはあらかじめ準備していた通行手形と潜伏している協力者からの手引きで問題無くこの場は通れるはずだった。
「ちょっとマテそこの馬車。なんか妙な感じがするな?」
いきなりかけられたその声にあたしは反応する。
何か聞いた事のある声だな?
「きゅ、宮廷魔術師様。こいつらに何か?」
「いやな、なんかやたらと大きな魔力を感じたのでな。ちょっと俺も調べさせてもらおうか」
「ちっ」
どうやら衛兵の他にも宮廷魔術師が見回りか何かで来ていたようだ。
バルドさんが小さな舌打ちをしている。
あたしたちに緊張が走る。
「なんか妙な魔力だな。やたらとでかい様だが‥‥‥」
そう言ってその宮廷魔術師は馬車の中に入り込みあたしたちを見渡す。
「行商か? 護衛の者は誰だ? やたらと魔力のでかいのがいるみたいだが」
そう言って真っ先にシェルを見つける。
「なんだ、エルフがいたのか? お前か護衛は? ちょっと顔見せろ」
シェルは仕方なくかぶっていたフードを取る。
「ん? お、お前は!?」
宮廷魔術師が動揺の声をあげる。
「宮廷魔術師様、どうかいたしましたか?」
「いや、なんでもない。俺は急用を思い出した。城へ戻る。こいつらは通していいぞ」
そう言ってその場で【幻影魔法】を発動させ自分の幻影を馬車から降ろさせそのまま【姿隠しの魔法】を発動させあたしたちの馬車を通過させる。
そしてしばらく行った所で【姿隠しの魔法】を解除しておもむろに立ち上がりこう言った。
「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン、いるんだろ? 出て来い!」
「はぇ?」
あたしはいきなり名前を呼ばれて思わず変な声を出した。
「主よ!」
「お母様!!」
とたんにショーゴさんやコク、ティアナたちも腰に手を回す。
「おいおい、落ち着け。おれはエルハイミに話があるだけだ。お前らをどうこうするつもりはない!」
あたしはかぶっていたフードを下ろす。
そしてその宮廷魔術師を見る。
「ゴ、ゴエムぅ!?」
完全にあたしの知った顔だったのだ。
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