第十六章16-11シコちゃん
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
はぁ、こいつらいい女なんだけどなぁ。
出来ればベッドで対峙したかったぜ(ビスマス談)
16-11シコちゃん
『まずい、魔法が発動する!!』
シコちゃんが叫ぶ。
それは十分承知だ。
「くぅ! 邪魔です!!」
残った剣士や魔術師を薙ぎ払いティアナは魔法陣へ突き進む。
「まさかユグナスがやられるとはな。しかしここから先は通させん!」
そう言ってビスマス神父が剣を構えティアナの前に立ちふさがる。
「ええいっ! ビスマスっ!! ガレント流剣技九の型、九頭閃光っ!!」
ティアナがガレント流剣技の中で最強の一撃を放つ。
八方向からの一斉の打撃に突きまで加わりその攻撃は閃光の様に光りビスマス神父に迫る。
「流石だなティアナ将軍! しかし俺も元剣聖! 通じんわぁっ!!」
そう言ってビスマス神父は瞳の色を金色に輝かせながら目にも止まらぬ速さでティアナのその一撃を全て受け止める。
「なにっ!?」
「はははははっ! 驚いたか!? 長くは出来んが俺にも出来るんだよ!!」
そう言ってティアナに一撃を入れる。
かろうじて剣で受け止めたけどティアナはそのまま後ろへ吹き飛ばされる。
「ティアナぁっ!」
「お母様危ない!」
そして気付けばビスマス神父があたしの目の前にまで来ていた!?
「お前もいい女だが一番危険な女だと聞いている。残念だがお別れだ!」
あまりにも急で【絶対防壁】が間に合わない!!
ビスマスの剣が振り下ろされる。
しかしあたしの魔導士ライトプロテクターが自動防御をしてかろうじてその攻撃を逸らせてくれた。
ざしゅっ!
「痛っ!」
腕のプロテクターが何とか剣の軌跡をずらし直撃はかわしたけどミスリル製のライトプロテクターごと思い切り左手を切られた。
どうやら左腕はもう使い物にならない。
あたしは慌てて攻撃魔法の【炎の矢】をビスマス神父とあたしの間に発生させて放つけど痛みのせいで集中出来なくていつもほどの威力と数が出せない。
「この程度かぁっ!?」
ビスマス神父はその【炎の矢】を全て剣で切り落とし更にあたしに迫ってくる。
「エルハイミぃっ!!」
『やらせるかぁ! 【絶対防壁】!!』
ティアナが叫びシコちゃんがかろうじてビスマスとあたしの間に【絶対防壁】を張る。
だがビスマス神父はそれをあっさりと破壊しあたしに迫る。
「お母様から離れろぉっ!! ドラゴン彗星掌!!」
あたしに襲いかかるビスマス神父にコクが飛び込みドラゴン彗星掌を打ち込む。
しかしビスマス神父はそれを見事にかわし、あたしにその剣先を突き付ける!
「いやぁっ! エルハイミぃっ!!」
ティアナが叫びながらこちらに走り無駄と分かっていても剣をビスマス神父に投げつける。
コクも体勢を直しもう一度ドラゴン彗星掌を放つけどあたしにビスマス神父の剣が届く方が速そうだ。
「エルハイミっ!」
シェルも慌てて矢を放つけど届かないだろう。
「主よっ!」
動けなくなったショーゴさんもこちらを見て叫んでいる。
あたしも最後のあがきであの力を呼び寄せようとするけどもう剣の切っ先が胸に届く方が早い。
全てがスローモーションのように見えるこの中でビスマス神父の笑う顔が迫る。
『やらせるかぁッ!!』
剣先があたしの胸に吸い込まれる直前腰に付けていたシコちゃんが自身を念動魔法で動かし間に入り込み受け止めた!
ガギィイイィィィンッ!!!!
「何っ!? ぐはっ!!」
一瞬の事にビスマスは驚くがその体に一斉にティアナの投げた剣やコクのドラゴン彗星掌、シェルの矢が突き刺さる。
ザクっ!
ごぼっ!
とすっ!!
それでもあたしはシコちゃんと一緒に後ろへ弾き飛ばされる。
危ない、シコちゃんのおかげで助かった。
「エルハイミっ!」
ティアナが駆けつけてきてあたしを引き起こしてくれる。
「ティアナ、私は大丈夫ですわ、それより『女神の杖』をっ!!」
「ベルトバッツ、クロ、クロエ! その者たちを葬れっ!!」
駆けつけてきてあたしを引き起こしてくれるティアナ。
あたしの意を介しベルトバッツさんやクロさんクロエさんに指示を出すコク。
シェルも神官たちに向かって矢を放っている。
「邪魔よっ!」
セキは飛び込みながら幼竜に姿を変え剣士たちの間を飛び去り魔法陣に向かってドラゴンブレスを吐く。
たとえ幼竜でもその炎を浴びたらひとたまりもない。
ベルトバッツさんやクロさんクロエさんも剣士たちを薙ぎ払い魔法陣へ向かう。
いち早く吐き出したセキのドラゴンブレスのおかげで魔法陣を操っていた神官たちが炎に包まれ次いで駆け付けたベルトバッツさんの腕をスピアに変えた一撃で神官たちは倒れとうとう魔法陣の輝きが収まった。
「ぐっ、畜生。もう少しだったのに‥‥‥」
ティアナの剣を背にシェルの矢が首筋に刺さりコクのドラゴン彗星掌がわき腹に決まり肉をえぐられたビスマス神父はそれでもよろよろと立ち上がる。
「母さん! 『女神の杖』が燃えてるよっ!!」
セキが叫ぶ。
ドラゴンブレスが巻き散らかされ魔法陣の中に置かれていた「女神の杖」にまで引火したらしいけどそれはおかしい。
セキのその叫びにビスマス神父までも振り返りその杖を見る。
そして驚いたことに七本すべての杖は炎に焼かれ燃えていた。
「ありえませんわ! 『女神の杖』は【爆裂核魔法】ですら破壊できないというのに!!」
赤竜のドラゴンブレスだって幼竜とは言えその辺の成竜に匹敵する火力を有しているはず。
でもその程度では本物の「女神の杖」はびくともしない。
「くそっ、イパネマめ、この俺に偽物を運ばせるとは‥‥‥ あの魔女め‥‥‥ 結局あいつが運んでいたか‥‥‥ くっ、見つけ出した古代ゲートで今頃はエリモアについているか? ははっ、残念だったなティアナ将軍よ‥‥‥」
そこまで言ってビスマス神父はその場に倒れて動かなくなった。
ビスマス神父の体から赤い液体が広がっている。
「ビスマス‥‥‥」
ティアナは吐き捨てるかのように最後にビスマス神父の名を言った。
あたしは自分で回復魔法をかけて何とか腕が動くようにする。
全身打撲で痛いけどそれを上回るショックを受けている。
まさかあたしたち追っていた「女神の杖」が偽物だったなんて。
「急ぎ帝都エリモアに向かわなくてですわ、ティアナ。シコちゃん、助かりましたわ。今回ばかりはダメかと思いましたわ」
『‥‥‥ ごめんエルハイミ。 どうやらあたしもここまでのようね‥‥‥』
シコちゃんにしてはやたらと弱々しい声だ。
あたしは慌てて胸の間に挟まれているシコちゃんを取り見る。
そして息を飲む。
シコちゃんの全身にひびが入っている。
「シコちゃん!!」
『ごめん‥‥‥ もう‥‥‥ 意識が‥‥‥ でも最後にエルハイミが‥‥‥ 助かって‥‥‥ よかっ‥‥‥』
ぱきんっ!!
「えっ!?」
シコちゃんは最後にそう言いかけてあたしの手の中ではじけてしまった。
うそっ?
あのシコちゃんが!?
女神からご先祖様に渡された三種の神器なのに?
「う、うそですわ‥‥‥ シコちゃん?」
「シコちゃん!?」
「何? シコちゃんがどうしたってのよ!?」
あたしの手の中で粉々になったシコちゃんの破片はキラキラとした光になって消えていく。
ティアナもシェルもその様子を見て固まって動けなくなる。
「シコちゃんっ!!!!」
あたしの叫び声だけがするのであった。
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