第十六章16-6エダーの港町
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
尻尾だらけ!?
ここはパラダイスですの!?(エルハイミ談)
16-6エダーの港町
ここはエダーの港町。
あたしたちは揺れる船に乗りながら明るくなってきた水平線を見る。
海面は穏やかだけど濃い霧が出ている。
そんな中をあたしたちの船は小さな船着き小屋に入って行く。
「ティアナ様、エルハイミ様。着きました」
バルドさんはそう言って橋げたに船をくくり付ける。
そして船を引き寄せあたしたちを船から降ろすのを手伝ってくれる。
「ここがエダーの港町ですか‥‥‥」
ティアナは変装した服装のまま港町を見上げる。
サボの港町とほとんど変わらない風景はそれでも北の大地に到着した事をあたしたちに知らせる。
だんだんと霧も晴れてくる。
「あまり目立つとまずいですのでこちらへ。 後は頼んだぞロベルト、ゾッダ」
乗ってきた船はロベルトさんとゾッダさんが操作していた。
二人は「わかました」と言ってあたしたちを見送る。
ちなみにゾッダさんは船の中でこっそりとあたしたちにロベルトさんへの思いを打ち明けてくれた。
獣人と人の間にも子供は出来るそうだ。
ただ、ロベルトさんは胸の大きい人の方が好みのようでそれが今までゾッダさんの悩みだったらしい。
あたしは餞別にポーチにしまっておいたガレント産獅子牛のお肉をゾッダさんに渡していた。
そして親指を立てながら「胃袋を掴んでしまえば意中の人はいちころですわ!」と元気づける。
ゾッダさんも親指を立てて「はいっ! 頑張ります!」と元気に頷いていた。
そんなやり取りを内緒でやっていたのだが二人に見送られながらあたしたちはエダーの拠点へと移る。
* * *
「うう、シェルぅ、だんだん寒くなって来てない?」
「ちゃんと服着てる? どちらにせよマリアは飛び回ると目立つから大人しくあたしの懐に入っていなさいよ?」
拠点に案内されながらマリアとシェルがそんな話をしている。
「確かに向こうより若干涼しいようですね?」
「ティアナ様、こちらもそろそろ寒くなる時期です。秋も終わりでしょう」
バルドさんはそう言いながらあたしたちを近くの一軒家に招き入れる。
そこはサボの拠点と似たような質素なレンガ造りの建物だった。
バルドさんは扉まで行きノックする。
するとこんな朝早くなのに中から声がする。
「早朝からどなたです? うちは魚は間にあっています」
「珍しい魚が取れた。陸向こうの魚だ」
バルドさんがそう答えると扉の鍵は開き内側へと開かれた。
「お待ちしていましたバルド様、皆様。さあ、中へ」
中に案内してくれたのはなんと獣人の女の子だった。
見た感じゾッダさんと同じくらいの年頃。
耳の形からするときつねかな?
振り返って室内にあたしたちを招き入れてくれる時に大きな尻尾が見えた。
ううっ、あれもいいわね。
触りたい‥‥‥
思わずそんな事を考えているとシェルもセレも物欲しそうに彼女の尻尾を見ている。
うんうん、分かるわかる。
シベリアンハスキーの尻尾も悪くないけどきつねの尻尾は最強でしょう!?
そう言えば生前アニメか何かで幼女のきつねの尻尾をもふっているのが有ったけど、あの時は「この変態め!」とか思ってた。
でも今はその良さが分かってしまって非常にあたしもやばい。
なんでなのだろうね?
毛皮とはやっぱり違うのよね?
ティアナと大人しく生活できるようになったら大型犬か何か飼おうかな?
毎日もふり放題‥‥‥
『エルハイミ、ちょっとエルハイミ? どうしたのよ緩んだ顔してぼぉ~っとして? まさか今頃船酔い??』
シコちゃんに呼ばれて妄想の世界から戻ってくる。
危ない危ない、これじゃアンナさんの事言えないわね。
そんな事を思いながら中に入る。
中にはエダーの港町に潜伏している人たちがいた。
全部で四人。
「初めまして。ルビィと申します。」
「サファイアと申します。
「コハクと言います。」
「ヒスイと申します。」
驚いた事に先ほどのきつねの獣人以外の人もみんな獣人だった。
「世話になります。私はティアナ=ルド・シーナ・ガレント、こちらは妻のエルハイミ。エルフのシェルに従者のショーゴ・ゴンザレス、セレとミアムです」
ティアナが代表してこちらの挨拶をする。
すると獣人の人たちはバルドさんを見る。
「この方たちが話をしたお方だ。大丈夫、この方たちはお前たちを迫害するような事は無さらん」
迫害?
どう言う事だ?
「あの、バルドさん迫害とはどう言う事ですの?」
「ああ、エルハイミ様はご存じなかったのですか? 『魔人戦争』にて住処を失った獣人たちはルド王国近郊の自分たちの故郷を離れノージム大陸に散り散りに分散したのですがその風習や容姿が受け入れられなく迫害を受けているのです。王都では獣人を立ち入りさせない程ですしね」
初耳だった。
いくら亜人でもロベルトさんやロゼッタさんのように人懐っこい獣人もいるだろうに。
「お前たち、変わりは無かったか?」
「はい、ここでは我々も珍しがられはしますが何とか普通に生活は出来ます。バルド様のおかげで仲間もだんだんと協力的になってきていますし。ゾナー様のおっしゃられる事は本当ですよね?」
「勿論だ。ゾナー様は慈悲深い。ホリゾン帝国解放の後にきっとお前たちの安住の地を分け与えてくださる。あの方は少し変わった性癖をお持ちだが民の為に動いてくださる方だ」
あ、性癖が変なのは否定しないんだ。
嫁さん五人も囲っていればそうれもそうか。
「それでバルド、ここではどうするのですか?」
ティアナに今後を聞かれバルドさんは考えを言う。
「まずは情報を集めます。帝都に潜入した者からの知らせは今だ無いようですので『女神の杖』が帝都に搬入はされていないと思って良いでしょう。我々はここでしばらく情報収集に入ります」
確かに今だ「女神の杖」が何処にあるのかは分からない。
命を使ってでも転送の魔法を使ったとして、このひと月あまりの時間に何処まで運ばれたか。
それともそこまで魔法が使えず通常ルートで搬送しているか。
どちらにせよまずは情報が欲しい。
それに気になるのはイパネマとビスマス神父の動き。
十二使徒があそこまで動き回っているのだ。
向こうも本気と言う事だ。
あたしたちはここで情報収集を始める事になるのだった。
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