第十六章16-1北の大地へ
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
コクちゃんてそんな趣味が‥‥‥(ミアム談)
16-1北の大地へ
あたしたちは何処へ飛ばされたか分からない「女神の杖」を追ってガレント最北の町、ティナの町に戻っていた。
「そうか、ホリゾン帝国に潜入するつもりか」
今までの話を聞いていたゾナーはそう言って腕を組んでいた。
「しかし杖自体はまだガレント国内なのであろう? そこまで急いでホリゾンに行く必要があるのか?」
エスティマ様も腕を組んだままあたしたちに聞き入る。
「兄さま、もう後が無いのです。私たちが最終手段としてホリゾンに入り込み万が一『女神の杖』を運び込まれたらすぐにでもそれを奪還しなければなりません。最悪ルド王国で待ち伏せも考えています」
ティアナのその話を聞いてゾナーもエスティマ様も更にため息をつく。
そしてゾナーは人を呼んだ。
「主殿の事だ、言い出したら聞かないだろう。俺直属の隠密でホリゾンに精通している。こいつが案内をする。バルド、こっちへ来い」
呼ばれて出てきたのは隠密らしい目立た無い黒装束の一人の男性。
ショーゴさんよりは小柄な彼はずきんと顔を隠していたマスクを下げる。
「バルドと申します」
年の頃二十歳ちょっとくらいかな?
表情は読めずティアナの将軍モードの様に無表情だ。
「こいつは小さな頃から俺に従事してきた信頼できる奴だ。隠密としての訓練も受け現在ホリゾン帝国の潜伏している連中の取りまとめをしている。先日ガレントの隠密と共同でホリゾン帝国の情報を持ち帰っている」
ゾナーにそう紹介される。
「陛下はなんと?」
最後にエスティマ様はティアナに聞いてくる。
「託したと言われました」
「そうか。ならばこれ以上何も言う事は無だろう。そちらにはシェル殿が着くな? こちらも『風の剣』に協力してもらいファム殿にシェル殿との連絡役を頼もう。ガレント内で取り押さえられれば徒労となるが出来ればそうなって欲しいものだ。シェル殿、よろしいか?」
「ええ、エルフのネットワークを使えばファムとも連絡できるしそれが一番ね。あたしからもファムにお願いするわ」
エスティマ様は「助かります」とだけ言ってあたしたちの為にいろいろと準備建てをしてくれる。
食料、資金、こまごました道具、そして変装用の北の民族衣装。
どれもこれもホリゾン帝国で活動するには必要不可欠のものだ。
「ホリゾン帝国には全部で我々のアジトが四か所ある。帝都までの途中の町に一つ、帝都に一つ、帝都とルド王国の間の町に一つ、そして最後だが新たにルド王国にもアジトを作った。全てバルドがよく知っている」
ゾナーは既にそこまでホリゾン帝国に対して対応をしていた。
「助かります。私たちはこれより準備が出来次第ホリゾン帝国へと潜伏を開始します。兄さま、後の事はよろしくお願いします。ゾナー、今はまだ約束は果たせませんがいつか必ずホリゾンの解放もします」
「分かった。こちらも『鋼鉄の鎧騎士』零号機もいる。何時でもホリゾンへの進行が出来るよう準備を行う」
「主よ、分かっている。しかし先ずは悪の根源、ジュメルを倒してからだ」
二人ともそう言ってティアナに笑いかける。
うーん、このコンビ意外といい相性なのかもしれない。
後方がこうであると心底心強い。
ティアナも微笑んであたしたちは準備の為に執務室を後にした。
* * * * *
「おかあしゃん、せなかムズムズすりゅ」
あたしたちは部屋に戻り準備をしているとセレに抱かれていたセキがいきなりそう言ってきた。
「ふむ、セキも一回目の脱皮をするようですね? これでもすぐ記憶を取り戻すでしょう。その時は私の配下、見ものです。ふふっ」
コクが幼いくせに黒い笑みを見せる。
なんかこの子最近悪だくみと言うかだんだん侮れなくなってきている?
むう、そんな風には育てた覚えは無いのになぁ。
「せりぇ、せなきゃきゃゆい!」
セレに抱っこされたセキはそう言ってむずがゆそうにじたばたする。
コクはセレに言ってベッドのに上にセキを置くよう言う。
「コク、セキには何か手伝いをしなくていいのでしょうか?」
ものすごくおどおどするティアナ。
ベッドの周りをうろうろする。
「赤お母様落ち着いてください。我々竜族の脱皮は自分自身で出来ます。ただ、脱皮中は無防備になるので外敵から身を守るために要注意ですがここではその様な事も無い。見守ってあげれば十分です。それとお母様も落ち着いてください。お湯やタオルは脱皮が始まってからで十分ですから」
コクの時もあってあたしは桶やタオルを準備していた。
「ふみゅぅうううううぅ! せなきゃきゃゆいぃいぃ!!」
そう言ってセキはうつぶせになる。
白い肌にうっすらと切れ目が入り始め背中が割れ始める。
そしてとうとう何も言わなくなり始め背中が開き始めた!
それは一瞬で始まる。
背中が割れ下から新しい白い肌が出始めたかと思ううと一瞬にして上半身がずるりと剥げ落ちた。
上半身を引き起こしたセキの真っ赤な髪の毛はさらに長くなり全身をぬめぬめとした液体にきらめきさせながら一気に五、六歳くらいのセキが立ち上がった。
あたしは慌てて桶に魔法でお湯を張りティアナがそのお湯でタオルを湿らせ脱皮が終わったセキを温かく拭いてやる。
「くぅぅぅぅっ! お母さん、もっと優しく拭いてよ。まだ肌が落ち着かないんだから」
いきなり発したその言葉にティアナは驚く。
「ああ、ごめんなさい。このくらいで良いですか?」
「うん、いい。気持ちいい」
そう言ってティアナに奇麗に拭かれていくセキは五、六歳くらいの割にずいぶんとしっかりした感じだ。
引き締まっていて細身でいながら筋肉質と言うか、スラリと長い手足はほど良く筋肉がうっすらと見える。
「うーん、お母さんもういいよ。あとは自分で出来る。それにしてもあたしを攻撃していた時とはずいぶんと違うわね?」
「セキ? もしや記憶が!?」
「うん、いろいろ思い出した‥‥‥ まあ、お母さんはあたしに良くしてくれたからお母さんでいいけど、コク! あんたあたしに名前つけて隷従させるとは!! 覚えておきなさいよね!?」
「セキ、姉に向かってその態度はよろしくありません。あなたは私の妹分です。言う事を聞かなければ強制力を使いますよ?」
「あーっ! ずるい!! くっそう、エルハイミ母さん! 何とか言ってよ!?」
なんかいきなりセキがべらべらと話し始めしかも記憶が戻ったのに随分とこの状態に馴染んでいる。
あたしは記憶が戻ったら一波乱あるかと思ったけどどうやら取り越し苦労のようだった。
「まあ、まだまだ幼竜だしお母さんやエルハイミ母さんの魔力は欲しいから当分一緒にいるわ。コクが姉さんと言うのが気に入らないけど隷従させられてちゃ逆らえないしね」
唇を尖らせながら文句を言うセキがなんか可愛らしい。
そんなセキを見ながらコクはまたまた黒い笑みをこぼす。
「いい心がけです。では姉の命令として大人しく服を着なさい! クロエ準備を!! 私に合わせフリフリ付きの服を準備なさい!」
「げぇっ! コク!! その趣味は嫌だって昔から!!!!」
「だまらっしゃいっ! さあ、私好みのフリフリで着飾ってあげます!! 覚悟なさい!!」
なんかコクがものすごくうれしそうだ、。
まるで着せ替え人形の様にセキにあれやこれフリフリのたくさんついたゴスロリチックの服を着せる。
「エルハイミさん、コクちゃんってこんな趣味あったんですか?」
「でもミアム、これも可愛いと思うわ! こっちも良いかも!?」
「黒龍様、ここはカボチャパンツも黒色でそろえるのはいかがでしょうか?」
「クロエ、あなたの黒い下着に対する情熱は理解します。しかしカボチャパンツと言ったら白です! ここは譲れません!! 白を持ちなさい!!」
「流石にまだシルクは早いかな? ああ、コクのはそろそろシルク作っといたから欲しかったら言ってね。ストックは準備済みよ」
みんなにわいわいやられながらセキが着せ替え人形になっている‥‥‥
「だ、だからコクの趣味は嫌なのよぉっ! あたしは動きやすいのが好きなのに!! お母さん、何とかして!!」
セキの悲鳴が上がるしかしみんながわいわいやっている後ろでティアナも箱から服を取り出していた。
びくっ!
「せ、セキ、いろいろ着てみるのも重要です。ちなみに私はこんなのを準備していました」
いつの間にか準備していたセキの服を引っ張り出したティアナはやや興奮気味だ。
見れば昔ティアナが着ていたような服が手元にあった。
「母さんまで!? もういやぁぁっ!!」
珍しくあたしじゃない叫びが響くのであった。
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