第十五章15-29追跡
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
何処です?
あー、早く見つけなきゃ!!(セレ&ミアム談)
15-29追跡
首都ガルザイルでやるべきことはすべてやった。
なのであたしたちは自分の本拠地であるティナの町に戻った。
「実際にイパネマを追うとしても情報が少なすぎます。ファイナス市長からの連絡は?」
「今の所それらしい物は有りませんわ。ただ連合軍が捕まえたそれらしき人物は確かにジュメルの関係者でしたわ。どうやらかなりの囮を使っているようですわね」
ティナの町に戻ってもう四日経つ。
ボヘーミャで「女神の杖」を奪われてから今日で丁度十日目。
順調に早馬にでも乗っていればあと数日でガルザイルに着くかもしれない。
「エルハイミ、どう見ます?」
ティアナは苛立ちに一気にお茶を飲んでいた。
あたしはシェルからの情報やメッセンジャーの情報、セレやミアムの協力で交易ルートの洗い直しをしてその可能性を考えていた。
「囮を使うと言う事はやはり通常ルートを何らかの方法で最短で来るのでしょうですわ。ティアナの読みどうりだと思いますわ」
「でもこれだけ尋問増やしたり関所の閉鎖までしているのに捕まらないっておかしいんじゃない?」
シェルはあたしを見ながらそう言う。
「魔術師だから姿隠しや飛行の魔法で関所を抜けているのでしょうか?」
イオマも考えながらその可能性を模索する。
しかしあたしはそうでは無いと思う。
あれだけの人数の中で自分は十二使徒だと言い放ったのだ。
顔が割れるのを覚悟して。
ん?
顔が割れる??
「ちょっと待ってくださいですわ。ティアナ、イパネマの捜査手配ではどのようになっていましたっけ?」
「確か、年齢二十歳前後、魔術師で紫の長い髪をしたグラマスな美しい女性となっています。これだけ特長があればたとえ変装していてもすぐにわかると思いますが?」
情報的には誰が聞いても見てもその通りだろう。
「『女神の杖』についてはですわ?」
「『女神の杖』に関してもマース教授が精密な模写をしていたのでその絵を風のメッセンジャーで配布しかなりの者が目にしています。多分見ればすぐに分かるくらいに」
そこまで言われてあたしは有ることに気付く。
それはジュメルが個人では無く秘密結社であると言う事だ。
十二使徒を中心に秘密結社ジュメルは全世界にジュリ教を母体にはびこっていた。
特にジュメルに参加している者はそれなりに強い結束がされている。
場合によっては洗脳さえされている。
そして厄介なのがジャストミン教授の様に表面上はジュメルの信者と分からない場合がある。
「ティアナ、もしもジュメルはイパネマの『女神の杖』強奪に成功すると仮定していた場合逃走ルートを事前に考えていますわよね?」
「それはそうでしょう。ジュメルの悲願でもあるのですから」
「なら、必ずイパネマが『女神の杖』を運搬するのでしょうかしら?」
あたしがそこまで言ってみんなが思わずあたしを見る。
「ジュメルの信者がジャストミン教授の様に出世欲でなく純粋に信仰、もしくは洗脳された者であれば目的を果たす為に努力を惜しみませんわ。ましてやイパネマは十二使徒。組織内でどれだけ功績をあげてもこれ以上は上に行く必要もない‥‥‥ であれば『女神の杖』を運搬させる人物は必ずしも自分である必要は無いのではないでしょうかしら?」
がたっ!
ティアナは思わず椅子を立つ。
イパネマにトンビに油揚げを掻っ攫われたよな感じだったので彼女に対する憎悪が真っ先に来ていてしまった。
しかし頭のいいイパネマだ、目的の為になら信者に「女神の杖」を運ばせる可能性もある。
そして彼女自身がおとりとして動いていれば‥‥‥
「お姉さま! メッセンジャーです!! 開示します」
あたしたちがそう言っていた矢先に風のメッセンジャーに着信があった。
イオマにお願いしてすぐに開示してみるとミハイン王国付近でイパネマらしき人物を発見、現在交戦中だそうだ。
「エルハイミ!」
「待ってくださいですわティアナ! おかしいですわ。もしミハイン王国のルート、西のルートを使ったとしても未だにミハイン王国にすら入っていないとは。交戦中と言う事ですと本物のイパネマかもしれませんわ。しかし彼女がまだそんな所をうろうろとしかも私たちと表立って交戦するとはどう考えてもおかしいですわ!」
冷静にならなきゃいけない。
急いでいるはずなのにそんな所でうろうろしているはずがない。
多分現在交戦している人物はイパネマ本人だろう。
しかもミハイン王国の西ルートをいかにもと言う風に動いている。
これは囮。
あたしには当人がおとりになる事によりあたしたちの注意を逸らしているとしか思えない。
「だとする一体誰が『女神の杖』を運んでいるのです?」
「確実にしかも人知れずとなれば定期的に動いているモノに紛れるのが一番ですわ。ボヘーミャからガレントへの定期的な運送は有りませんの?」
あたしのその問いにすぐにセレとミアムが動く。
大量の資料をパラパラとめくり始める。
「有りました! ボヘーミャからの希少金属定期運搬、ミスリル合金です!」
「直近だと後十五日後にガルザイル到着予定です。これはガレント王国直属の運搬です!」
それを聞いてあたしはティアナを見る。
「ティアナそれですわ!」
「ガレントにまだジュメルに通じるものがいた。エルハイミ、ガルザイルに飛びます!」
ティアナはそう言って直ぐに立ち上がるのだった。
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