第十五章15-25ガーベル失踪
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
ガーベルっ!
あんたって人はぁっ!! (シコちゃん談)
15-25ガーベル失踪
「狂気の巨人」
それと対峙して今尚存在する者は少ない。
しかしそれは女神の分身がその命をもってしても倒せない化け物。
もし今の世にそれが復活したならば人類にそれを倒す術は無い。
あたしたちは精霊都市ユグリアの街にある安宿に急いでいた。
* * *
「ああ、あの御仁なら今朝早くにエルフのねーちゃんたち連れて出ってたよ?」
宿屋に急ぎ着いたあたしたちは宿屋の主人にご先祖様がいるかどうか確認してから部屋に行こうとしていたがかけられた言葉は期待を裏切るものだった。
「なんですってですわ! メル長老たちも一緒にですの!?」
「おかしいですね? 村にメル長老たちが戻ったとは聞いていませんが?」
「ご主人、その御仁はどこに行くか言っていなかったのですか?」
驚くあたしに村からの報告は無かったと思案するファイナス市長。
師匠はすぐにでもご先祖様の行き先を知っていないか宿屋の主人に聞いてみる。
「いやぁ、特には何も言っていなかったがね。世話になったとだけ言っていたな」
うーん、行き違いか?
しかし一体どこに行ったんだろう?
しかも最古の長老たち連れて。
「とにかく一度村に連絡をしましょう。もし村に戻っていれば私たちも」
「そうですね、ご主人、お騒がせしました」
ファイナス市長の提案に師匠は宿屋の主人にお礼を言ってあたしたちは急ぎエルフの村へと連絡を取った。
* * *
「はぁ? 最古の長老たちが市場で買い物ぉ?」
シェルは聞かされたその情報に思わずあたしの所まで来て小声で聞き返してきた。
「なにそれ? なんで長老たちがこんな所で買い物しているってのよ?」
「私もそれが分かれば苦労しませんわ。とにかくメル様たちがいると言う事はご先祖様もいると言う事ですわ。早い所見つけ出さなければいけませんわ!」
シェルの質問はあたしが聞きたいくらいだわよ。
「しかし、何故こんな所で買い物を?」
『さあねぇ、ガーベルの事だから何かでお金でも入って大盤振る舞いでもしてるんじゃないの?』
何かでお金って‥‥‥
ティアナはきょろきょろと市場を見渡すけど確かになんでこんな所で買い物を?
それにシコちゃん、あのお金は最後に会った時に手持ちがないから何とか都合付けてくれって言われてあたしが持っていたお金全部渡したけど、普通の人なら多分数年は遊んで暮らせる金額のはず。
多少無駄使いしたって一年は持つだろう。
それが今までずっとあんな安宿にいて今更お買い物?
「お母様、魔法王も一緒なのですか?」
「ええ、多分そうでしょう。と、ファイナス市長あれってもしかしてですわ!」
コクの質問に答えながらあたしは向こうの衣服を売っている露店のような所で巨乳のエルフの少女を見かける。
エルフ族はその性質から胸が質素な人が多い。
なのに見た目中学生くらいの巨乳と言う反則な人材何て知る限り一人しかしない。
「確かにあれはメル様! メル様ぁっ!!」
ファイナス市長の声にその少女は気づいてバツの悪そうな表情をこちらに向ける。
「やはりメル様、良かった。こちらでしたか。おや? 他の最古の長老たちは?」
「お、おお、ファイナスか。ロメやナミ、カナルは店の中じゃ‥‥‥」
なんか挙動不審だな?
どうしたのだろう?
「メル様、こちらでしたか。実は急用で魔法王ガーベルに話が有るのです。ガーベル殿はどちらに?」
師匠もメル様に話しかけるがますますメル様の様子がおかしくなる。
「お、おお、英雄ユカ・コバヤシか‥‥‥ ど、どうしたのじゃおぬしまで?」
「はい、実は問題が発生しまして魔法王の助力を必要としています」
そう言い切られメル様は額に脂汗をびっしりとかく。
そして師匠から視線をすぅ~っと外す。
「が、ガーベル様はのぉ‥‥‥ そ、その、きゅ、急用が出来たのでなぁ‥‥‥」
ん?
何だ??
あたしが疑問に思っていると露店とつながっていた店の奥から他の長老たちが出てきた。
「いやはや、今の世ではこうも便利なものが有ったかの?」
「うむ、これであれば腹がふくれても目立つまい」
「そうじゃの、これからかなりの時間をごまかせねばならんからのぉ」
何やら沢山の衣服を買い込んだ様子。
ずいぶんと呑気だな。
あたしがそう思っていたら他の長老たちもあたしたちに気付いたようだ。
「げげっ! ファイナス!!」
「そ、それに英雄ユカ・コバヤシ!?」
「なんと、ガーベル様の娘たちもか!?」
なんであたしたちを見て驚いているのだろうか?
それにご先祖様の姿が見えない?
「メル様、これはどう言う事でしょうか? そのように大量の服を買い込んで‥‥‥」
「あ、あー、そのなんじゃ。ずっとガーベル様と一緒じゃったのでなぁ‥‥‥」
「う、うむ、儂らもなぁ‥‥‥」
「めでたい事ではあるのじゃがのぉ‥‥‥」
「儂なんか初めてじゃしなぁ‥‥‥」
ファイナス市長の問いかけに何故かメル長老たちはしどろもどろに言葉を濁す?
一体どうしたというのだ?
「あー、ファイナスは分かってくれると思うのじゃが‥‥‥ じ、実は儂ら全員出来てしまってなぁ‥‥‥」
「ああ、まさかこのタイミングで全員一緒にとは思わなんだ」
「そうじゃのぉ、子を宿すのなど久方ぶりじゃしのぉ」
「儂もこの年でまさか出来るとは思いもしなんだ」
え?
ちょっとマテ‥‥‥
い、今なんて言った?
「子を宿す」って‥‥‥
‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「「「「「『え”え”え”ええええぇぇぇぇぇぇぇっッ!!!?』」」」」」
思わず絶叫するあたしたち。
「子供って、赤ちゃん??」
マリアが不思議そうにメル長老の所まで飛んで行ってお腹に触る。
そしてこちらを見てこういう。
「まだぺったんこだよ? アテンザの時とは全然違うよ?」
「ななななななんと言う事です! メル様! ロメ様! ナミ様! カナル様ぁっ!!!!」
「ご、ご先祖様何と言う事を!!」
「うわー、聞かなかった事には成らないわよね、流石に」
『ガーベル! 何処行ったの!? 出て来なさいガーベル!!』
「ご先祖様ですわっ!!」
そりゃぁファイナス市長だって驚くしティアナも思わず剣に手をかけてしまうしシェルも思い切りジト目で明後日の方向を見るわよ!
シコちゃんやあたしだって怒気を孕んだ視線でご先祖様探すわよ!
「んんっ、それでメル様、魔法王ガーベルは何処へ?」
一人冷静な師匠であったが流石に顔が赤い。
メル様はバツの悪そうな感じで思い切り師匠から顔を背けながら答える。
「が、ガーベル様はのぉ、儂らと一緒にいるとまた儂らを襲ってしまいそうだからと言って子が生まれるまで儂らの為と言ってしばらくここを離れると言って先刻どこかへ行かれたのじゃ。なんとお優しいのじゃろうのぉ、儂らとしてみれば村の者にハーフエルフを産み落とす事は内緒にせねばならん。ゆえに目立たず子育てをせねばならんのじゃが、せっかくなのでここで買い出しをじゃな‥‥‥」
逃げたか!!!?
「ご先祖様っ! 何処行きましたか!! 刀の錆にしてやります!!」
『ガーベルあんたって人はぁっ!!』
ティアナもシコちゃんも必死になって周辺を探す。
あたしも同調までして【探索魔法】をかけるもまったく引っかからない。
「に、逃げられましたわ‥‥‥」
あたしのその一言であたしたちは思い切り肩を落とす。
あのご先祖様、ライム様からも見事に逃げ回っている訳だ。
あたしたちが捕まえられる気がしない。
思い切りため息をつくあたしたちにメル長老はかわいらしく小首をかしげて聞くのだった。
「どうしたというのじゃ?」
あたしたちがもう一度大きなため息をついたのは言うまでも無かったのだった‥‥‥
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