第十五章15-21クシュトリア再来
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
うねうねも良いのでいやがりますよ?(クロエ談)
15-21クシュトリア再来
ジュメル襲撃の知らせを聞いたあたしたちは慌てて師匠のもとへやって来た。
「師匠! 状況は!?」
ティアナは師匠を見つけるとすぐに現状確認をする。
「まだ郊外にいる様で街には入っていません。問題は海側からも大型クラーケンがやって来ていて平原側と海側の二方向からの同時進行と言う事です」
師匠は既に各職員や教授たちに伝令を行い、街の方にもギルドなどに指示を出し避難を始めているらしい。
「師匠、私たちも行きますわ! ティアナ、初号機は使えませんがアイミの力は使わないでくださいですわ!!」
あたしはティアナにくぎを刺す。
まさか初号機が動けない時に!
「ティアナ、エルハイミ、あなたたちは海側のクラーケンをお願いします。水辺は苦手な者が多い。あなたたちなら対処できますね?」
「わかりました、エルハイミ行きます!」
そう言ってティアナはセレやミアム、マリアにセキやアンナさんたちと一緒に退避するよう言う。
「ティアナ、エルハイミ行こう!」
シェルが先頭を切って走り出す。
あたしたちもそれに続き走り出した。
* * *
ボヘーミャの街から港まではすぐだ。
小高いこの学園から出て街の南、港の方を見ると確かにクラーケンが船に巻き付き襲っている最中だった。
「またあれなの? エルハイミ、あれやだぁ、またうねうねされて乙女の危険を感じさせるわ!!」
「ふむ、クラーケンですか? さっさと焼いてたこ焼きにでもしましょうか、お母様?」
「そうですわね、流石に港の人たちも逃げ出していてもういないでしょうから大きいので片付けましょうかしら?」
『エルハイミ、あまり大きいのだと港自体に被害が出るわよ?』
あたしたちはそんな事を言いながら港に着く。
クラーケンはもう少しで絡み付いた船を沈める所だった。
「主よ、どうする? 切り刻むか?」
「いえ、お母様焼き払って見せましょう!」
ショーゴさんもコクもやる気は満々、クラーケンくらいなら任せておいても問題も無いだろう。
「こんな所にいたのですか!? あなたたちは!!」
するとどこかで聞いた事の有るような声がする。
周りを見るともう一匹のクラーケンに乗った黒髪の神官服姿の女性がいた。
「クシュトリア司祭!?」
「あら、覚えていてくれたのですね? サフェリナではつれないあなたたちだったけど今度こそ私のペットにしてあげましょう! おやりなさい!!」
クシュトリア司祭がそう言った途端に海中から無数のクラーケンの足が飛び出す。
更に港にクラーケンたちが上がって来る。
人の大きさくらいあるクラーケンやちっこいのもいる。
それらは海から出てきてうねうねとあたしたちに迫って来る。
「うひぃっ! こっち来ないでぇ!!」
シェルはそう言いながら矢を放つと見事に人間大のクラーケンに刺さり爆発させる。
それを皮切りにショーゴさんやコク、クロさんにクロエさんも飛び出す。
「はっ!」
ショーゴさんがすぱすぱと切り刻みコクとクロエさんが同時に技を放つ。
「クロエ、行きます! ドラゴン百裂掌!!」
「はいっ、黒龍様!! 喰らえドラゴン百裂掌!!」
ダブルドラゴン百裂掌が放たれ丘に上がっていたクラーケンたちを次々と撃破していく。
「むう、こちらからもか。ひょぉぉぉおおぉっ! ドラゴンクロ―!!」
ずばずばっ!
クロさんがドラゴンクロ―で他の場所から上がってきたクラーケンを切り刻む。
「あら、もったいない切り刻むなんて。せっかくこんなにうねうねして気持ちいいのに。エルハイミさん、ティアナさん、あなたたちにもこれを味合わせてあげたいのですのに。ああ、男どもはクラーケンの餌にでもしますけどね!」
クシャトリア司祭はそう言って近くに伸びてきたクラーケンの足を握りぺろりと舐めた。
うわぁーっ!!
モザイク!
モザイク出動よぉっ!!
だめ、危険だわこの女!!
あたしが慌てているとティアナはいきなりガレント流剣技で近くにいたクラーケンたちをバラバラにきざむ。
「こ、こんなもので私のエルハイミを汚させはしません!! エルハイミはうねうねが嫌いなのです! 硬いのが好きなのです!!」
ああっ!
ティアナ何言ってるのよ!!
あたしの好み暴露しないでぇっ!!
「やっぱりうねうねは嫌だよね~、うん、やっぱりエルハイミとは趣味が合いそう!!」
そこっ!
何の趣味よっ!?
シェルはシェルでほほに手をあて、いやんいやんしている。
「あ、あれはあれでなかなか好いでいやがりますのに‥‥‥」
クロエさん、物欲しそうな目でこっち見ないでぇ!!
あたしは一人でひやひやアワアワしている。
するとものすごく残念そうにクシャトリア司祭は手に持つクラーケンの足を離し懐からあの種を取り出した。
「どうやら私好みに調教する必要があるようですね? これを使ってあなたたちを私好みに変えてあげましょう。さあお前たちおやりなさい!」
そう言った瞬間、いきなりベルトバッツさんがあたしたちの後ろに現れる!?
キンっ!
金属を弾く音がする。
あたしは慌ててそちらを見るとベルトバッツさんたちが剣を片手に飛来してきたものを弾いていたようだ。
「姉御、ご無事でござるか?」
「ベルトバッツさん!? そ、そうだイパネマさんはですわ!? あちらも無事ですの!?」
学園を出ていきなり戦闘が始まってクシュトリア司祭に集中していたのでイパネマさんの姿を気にしていなかった。
「いや、後方には姉御だけでござったよ? む、来たかダークエルフ共!! ここはお任せあれ!」
そう言ってベルトバッツさんは後ろから襲ってきたダークエルフのアラスに切り込んでいく。
え?
イパネマさんがいない?
もしかして師匠たちの方に回ったのかな?
何時もいたはずのイパネマさんが急にいなくなったのであたしは少し焦った。
でもイパネマさんだって元冒険者、ジュメルに後れを取る事は無いだろうと目の前にいるクシュトリア司祭に集中する。
「ちっ、せっかくエルハイミさんから私のモノにしようと思ったのに。まあいいです、女の子はみんな私が食べてあげますからね!」
そう言ってクシュトリア司祭は今度は何かの呪文を唱える。
すると近くにあった小屋がはじけて魔怪人たちが飛び出してきた!?
「エルハイミ! くっ! アイミ行きなさい!!」
ティアナは前線でクラーケンの足を切っている。
しかしあたしの守りが完全にいなくなったのを見るとポーチからアイミを引っ張り出しこちらに向かわせる。
ぴこっ!
迫る魔怪人たちをフォローに入ったアイミが弾き飛ばす。
しかしこの魔怪人、種の力によって変えられた人々か!?
一旦魔怪人になってしまえばもう人には戻れない。
それに魔怪人になる事によりその生命自体を使いきってしまう。
気おくれはするけど仕方ない。
「シコちゃん、一気に片付けますわ、お願いしますわ!」
『わかった、エルハイミ魔力を!』
あたしはシコちゃんに魔力を注ぎ込み押し寄せる魔怪人たちへとその力を開放する。
『行くわよ! 【大地の咢】!!』
シコちゃんの魔法がその力を開放し、地面からワニの様な咢がせり出し魔怪人たちを次々と咥えていく。
「あああん、全くつれない人たちですね。なかなか私のモノになってはくれませんね? しかしこちらもまだまだクラーケンも魔怪人もいるのですよ!」
そう言ってクシュトリア司祭はもう一度あの呪文を唱える。
すると今度は近くにあった船からぞろぞろと魔怪人たちが!?
さらに海からはまだまだクラーケンが陸に上がって来るし最前線ではティアナたちが大型クラーケンの足を切りまくっているのになかなかその数が減らない。
ぴこっ!
そんな中アイミがあたしに呼びかける。
ぴこぴこっ!!
言われて学園の方を見るとセレがセキを抱いたまま慌てて走って来る?
「ティティアナ様ぁっ! 大変です!! ルイズちゃんが!!」
大声でティアナに叫びながら走って来る。
何?
ルイズちゃんがどうしたってのよ!?
ティアナはクラーケンの足を切り裂き一旦大きく下がって来る。
そこへショーゴさんがなぎなたソードや短剣を引き抜きフォローに入る。
「どうしたのですセレ!?」
「ルイズちゃんが人質に取られて、マース教授もアンナさんも動けなくなって、無理やり取り返そうとしたミアムがケガしてっ!!」
かなり動揺している様子だ。
どう言う事?
まさか学園内にもジュメルが入り込んだ?
―― 学園都市ボヘーミャには注意してください。分かっているとは思いますが情報はあそこから流れています ――
あたしはいきなりレイム様が言った言葉を思い出した。
そうだ、学園内には‥‥‥
一応師匠にもこの事は話してありそれなりに注意はしていたはずなのに!?
まさかルイズちゃんが人質に!!
「ティアナ!」
「エルハイミ、こうなったら極大魔法を放ちます、シコちゃんこちらへ!」
『わかったわ! エルハイミっ!』
あたしはシコちゃんをティアナに渡しあたし自身も広範囲の魔法を使う。
「みんな大きいの行きますわ! 下がってですわ!!」
あたしが叫ぶとショーゴさんもコクもクロさんクロエさんも一気に後退する。
「いけぇっ! 【雷龍逆鱗】!!」
『行くわよ! ティアナ同時に!! 【爆裂核魔法】!』
『【爆裂核魔法】!!』
あたしの豪雨の様な落雷とシコちゃんとティアナのダブルでの【爆裂核魔法】がその猛威を振るうのだった。
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