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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第十三章
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第十三章13-12弟たち

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


ええぇっですわ!

二人が私の事を!?(エルハイミ談)

 13-12弟たち



 「ねえ兄さんどうしたの?」


 「‥‥‥何でもない!」



 なんかバティックとカルロスがもめてる?

 あたしはお茶を飲みながらみんなで話をしている席でこの二人にふと気づいた。



 「あなた、ちょっと弟たちの様子を見てきますわ。コクの事お願いしますわね」


 「わかりました。コク、お義婆様にご迷惑をかけるのではありませんよ?」


 「分かっています、赤お母様」


 あたしが立ち上がりティアナにコクの事をお願いすると二人はそんなやり取りをしていた。

 こっちは任せておいて大丈夫だろう。

 あたしは二人して部屋を出て行った弟たちを追った。



 * * *



 「ねえ兄さん、何怒ってるんだよ?」


 「うるさいなぁ、なんでもないって言ってるだろ?」


 「でもさ、兄さんてさ姉さまがティアナ殿下と楽しそうにお話しているといつも不機嫌になるじゃないか、どうしたんだよ?」



 え?

 あたしがティアナと仲良くしているとバティックが不機嫌になるって‥‥‥


 

 「なんだよカルロス、お前だって姉さまがティアナ殿下と結婚してぼやいてたじゃないか!」


 「まあ、それは仕方ないよ。僕たち姉弟だもの。いくら小さい時に約束したって姉さまをお嫁さんにはできないよ」



 なっ!?

 

 あたしは正直驚いている。

 まさかバティックもカルロスもあの約束を本気にしていたなんて!



 「姉さまを守れるくらい強くなる。今までそれだけを考えて修行してきたけど、姉さまの周りにいる人たちの雰囲気って普通じゃないよね?」


 「ああ、カルロスも気づいてたか。あの人たちは化け物だよ。それにティアナ殿下だって前に会った時に比べ別人の様に強いはずだ、あの雰囲気はかなりやばいもの」


 

 正直あたしは驚いていた。

 バティックもカルロスもその人の雰囲気だけで強さが分かるレベルに成っていたとは!?



 「はぁ、先生でさえもまた強くなっているみたいだし、僕たちが追い付くにはまだまだ時間がかかるよね?」


 「分かってるって! それに姉さまはもうティアナ殿下のもとに嫁いだんだ、僕たちが守らなくたって殿下みたいに強い人がきっと守ってくれるさ!」


 そう言ってバティックは庭の木に軽く手をポンとついた。

 するとしばらくして木が震え葉っぱが沢山落ちてきた。



 ええぇっ!?

 なにそれ!?

 この二人かなり強くなっているのじゃない!?



 「もうこんな事が出来ても意味が無いよなぁ‥‥‥ はぁ、姉さま‥‥‥」


 「兄さん‥‥‥ 仕方ないよ、僕たちじゃまだまだ弱いし‥‥‥」




 あたしは驚きと同時に思わず胸がきゅんとしてしまった。



 なにこれ!?


 あたしの為にこの二人は本気で強く成ろうとしていた。

 前に会った時でさえパパンをしのぐ強さを身に着けていたってのに更にこの数年で強くなっている。


 それもこれもあたしを守る為?

 そしてあたしをお嫁さんにする為??


 か、かわいいっ!


 なにこれ、弟があたしの為に!?

 もうあたしはにまにまが止まらない。

 弟可愛いなぁ~



 そう思ってしまったあたしはこっそりと二人たちの話を盗み聞きしていた壁から出て行った。



 「バティックにカルロスですわ!」



 「え? 姉さま??」


 「わわっ、姉さまいつからそこに!?」



 あたしは二人の所にまで行って二人同時に抱きしめる。


 「ありがとうですわ、私の為に強くなる修行を続けていたのですわね?」


 あたしにいきなり抱き着かれカルロスはにっこりとあたしの胸触っているけど、バティックは真っ赤になってあたしの腕から逃れようとしている。


 「うわっ!やっぱり姉さまぽよんぽよんだ!」


 「姉さまいきなり抱き着かないでください!!」


 「もう、カルロス、女の子の胸を勝手に触ってはいけませんわ。前にも言ったでしょう? 私の胸ならまだ良いですけど他の女の子のは絶対にダメですわよ? それと、バティックも逃げないのですわ! 私はうれしいのですから!」


 あたしががそう言うとカルロスはあたしの胸を触るのをやめ、バティックも逃げ出そうとするのをやめる。




 「姉さま、ティアナ殿下と結婚出来て幸せですか?」



 「兄さん‥‥‥」


 「バティック?」


 

 大人しくなった二人はしばらくあたしの腕の中で抱かれたまま動かなくなっていたけどバティックがおもむろにそう言ってくる。



 「私はとても幸せですわよ。ティアナは私をちゃんと愛してくれますもの」




 「でもあの時姉さまを守り切れなかった!」

   

   

 バティックはそう叫ぶように言った。


 「僕なら何が何でも姉さまを守った! たとえ僕が死んでも!! でも姉さまは遠いイージム大陸なんて所まで飛ばされた! それなのに姉さまは、姉さまは!!」


 震えるバティックの唇をあたしは優しく人差し指で止める。


 「バティック、ありがとうですわ。でもね、私は私の命が尽きてもティアナを守りたかったのですわ。ティアナは私にとってそう言う人なのですわ」


 あたしがそう言うとバティックは一瞬とても悲しそうな顔をして下を向いてしまった。


 「兄さん‥‥‥」


 その様子を見ていたカルロスはバティックの肩に手を置く。

 そしてカルロスはあたしに向かってこう言うのだった。



 「姉さま、ティアナ殿下と手合わせさせてください!」



 「カルロス?」


 「僕たちがどれだけ強くなったかティアナ殿下に知ってもらうんです! そして僕たちが勝ったら連合軍に同行させてもらいます!」


 カルロスはいつもの少しおどけた様子を一切しないで真っ直ぐにあたしの瞳を見てくる。

 その決意は固くその瞳の色ににじみ出ていた。


 

 * * * * *



 「準備は良いですか?」


 「はい、殿下、行きます! 兄さん!!」


 「あ、ああっ! いきます殿下!!」



 あの後結局カルロスの申し出をティアナは聞き入れ手合わせをする事となった。

 

 魔法は一切使わず木刀だけの勝負。

 それをティアナは二人同時で受けて立ったのだった。


 「ティアナ‥‥‥」


 あたしは思わずティアナの名前を呼んでしまった。

 だってたとえ強化魔法を使わなくてもあの二人の実力は相当なモノ。

 あたしはハラハラしながらこの三人の手合わせを見ている。


 

 「ほう、あの二人なかなかのものになったな」


 「ふむ、子供にしてはまあまあでいやがります」


 ショーゴさんやクロエさんは楽しそうにその光景を見ている。

 

 「しかし主様のご主人もなかなかのモノだぞ」


 クロさんは腕を組みながらティアナを見ている。

 でも、魔法を使えないティアナじゃ‥‥‥



 「始まった!」



 シェルがそう言うと同時にバティックとカルロスはティアナに切り込む。

 しかしティアナアはその攻撃を紙一重の最小限の動きでかわす。



 「くっ!」


 「ちくしょうぅっ!」



 カルロスもバティックも何度も木刀を振るけど一向に当たらない。

 それ所かティアナはまだ一回も攻撃をかけていない。



 「あの二人凄いのにティアナさんに一つも入らない? お姉さま!」



 イオマに言われあたしも固唾を飲んで見守っていたがその終焉が見えてきた。

 二人の攻撃は完全に見切られていて何度やっても結果は変わらないだろう。


 「終わりです」


 ティアナはそう言って木刀を一閃させる。

 するとバティックとカルロスは手首を打たれその場で木刀を落としてしまった。



 「それまでだ!」



 パパンに言われこの手合わせは終わった。


 「あらあらあら~、二人とも大丈夫かしら?」

 

 パパンの傍らにいてコクに抱き着いていたママンはこの時ばかりは流石にこの二人を心配していた。


 

 「二人とも悪くはありません。しかし戦場ではそれだけでは生き延びられません」


 それだけ言ってティアナはあたしの元へ戻ってくる。



 「ティアナ様、お疲れさまでした!」

 

 「ティアナ様、タオルです!!」



 あたしが出迎える前にセレとミアムがしゃしゃり出る。


 

 こ、こいつ等ぁ~!!



 しかし今は弟二人が心配だ。

 あたしはティアナに目配せするとティアナは小さく頷いてくれる。


 それを見たあたしはすぐに二人のもとへ行く。



 「バティック、カルロス! 大丈夫ですの!?」


 「いててっ、やっぱりダメだったか」


 「‥‥‥」



 あたしの回復魔法を受けバティックもカルロスも打たれた手をさすりながら立ち上がる。

 そしてティアナに向かって一礼をしながら二人同時にこう言う。



 「「ありがとうございました! 姉さまをどうぞよろしくお願いします!」」



 それを聞いたティアナは静かにうなずいた。


 『男の子ねぇ、エルハイミは良い弟を持ったわね』


 シコちゃんがそう言ってくれる。

 あたしはこの二人にまたまた抱き着き頬にキスをする。

 しかし今回はカルロスは胸を触ってこないし、バティックも逃げない。



 「二人とも、ありがとうですわ!」


 「姉さま、お幸せに」


 「殿下がいれば僕らは安心できるね、兄さん」


 

 あたしのお礼に答える二人の顔はさわやかにほほ笑んでいた。



 そして二人の初恋は終わったのだった。 

 


 

 

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