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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第十三章
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第十三章13-2学園都市ボヘーミャへ帰還

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


異世界の料理もなかなかでしたがこの緑色のお茶も悪く無いですね?(コク談)

 13-2学園都市ボヘーミャへ帰還



 「それではファイナス市長、シェルの事はくれぐれも誤解無きようお願いしますわ」



 「ええ、分かっていますよ。その辺は心得ています。 シェル、定期連絡は必ずするように。それとあまり羽目を外さないようにしなさい、マーヤが心配していましたよ」


 「‥‥‥はい」


 シェルは複雑な顔をしてファイナス市長に答える。

 そう言えば今回はマーヤさんに会いに行ってないな?

 あたしはシェルの横顔をちらっと見た。


 しかしシェルは既にいつものシェルに戻っていた。




 あたしたちはファイナス市長に見送られボヘーミャに行くゲートの前にいる。



 「エルハイミ、ソルミナにもよろしく伝えてくれ。それとこれを」


 そういってソルガさんはあたしに眼鏡を渡して来る。

 渡された眼鏡を見てあたしは驚いた。



 「ソルガさん、これって!」



 「ああ、あの神父が身に着けていた眼鏡だ。仲間のエルフの戦士が遺体回収の時にたまたま拾ったそうだ。我々が持っていても仕方ない、何かの役に立つかもしれないからこれは君が持って行ってくれ」


 多分普通の眼鏡だとは思うけどこれが何かのきっかけになるかもしれない。

 あたしはソルガさんにお礼を言いながらその眼鏡を受け取った。




 「それでは皆さん、お世話になりましたわ。またいずれ会いましょうですわ」


 あたしはファイナス市長やソルガさんに振り向きながらそう言う。



 「ええ、次に会える時は平和になっていると良いですね」


 「達者でな、エルハイミたちに精霊の加護を」



 ファイナス市長とソルガさんは最後にそう言って手を振ってくれた。


 あたしたちはゲートに入りゲートを起動させた。


 淡い光が足元からカーテンの様に広がりファイナス市長たちを隠す。

 そして次にその光が収まった時にはあたしたちは地下室に立っていた。



 「すごい! これがゲートなんですねお姉さま!」


 「主様、ここはボヘーミャなのですか?」


 イオマは初めてのゲートを体験してはしゃいでいる。

 コクはこの薄暗い地下室を見渡している。



 「ここは学園都市ボヘーミャの地下室ですわ。ここからいくつかの場所へはゲートが生きていて移動が可能なのですわ」



 あたしはそう言って封印の扉を呪文を使って開く。

 そのまま通路と階段を上って校舎の一階に出る。



 そこは懐かしいボヘーミャの学び舎だった。



 「さて、早速師匠の所へ参りましょうですわ。まずは無事帰還した事を伝えなければですわ」


 あたしはそう言って師匠のいる学園長室にみんなを連れて向かうのであった。



 * * *



 「よく無事に戻って来てくれましたね、エルハイミ。あなたにまた会えてとてもうれしく思います」



 師匠はそう言ってあたしたちに自らお茶を入れてくれる。

 懐かしいそのお茶をいただきながらあたしはやっとここまで戻ってきたことを実感している。



 「師匠もお変わり無いようですわね?」


 「ええ、お陰様で元気にやってます。ところでエルハイミこちらの方々は?」



 師匠はコクやクロさん、クロエさんを見ている。

 しかしあたしはその師匠の最高にまで押し隠された殺気を感じている。



 「私は黒龍です。異界の者よ」


 「黒龍? あなたは本当にあの黒龍なのですか? では何故に幼き時のエルハイミの姿をしているのです?」



 師匠の殺気が一気に広がる。

 これにはさすがにクロさんもクロエさんも身構える。



 「黒龍様、主様お下がりください!」


 「貴様、黒龍様に害をなすつもりでいやがりますか!?」




 「やめなさい、二人とも! 控えなさい!」




 コクの一喝にクロさんもクロエさんも引き下がる。

 そしてコクは師匠のその殺気に怯む事無く師匠を見据える。



 「異界の者よ、見事な殺気です。見るにあなたの力は英雄にも匹敵するのですね? しかし安心なさい、この姿は我が主エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン様の魔力により得たもの。私は主様に従うだけです、他意はありません」



 そう言って師匠がいれたお茶をすする。


 「師匠、コクは本物の黒龍ですわ。訳有ってジュメルが手を貸した亡者の王リッチに呪われ転生を成し遂げ孵化するために私の魔力を供給してこの姿になったのですわ。決してこの世界に害をなすような子ではありませんわ!」


 あたしのその言葉に師匠は一瞬あたしの方に顔を向けそして殺気を消した。


 「わかりましたエルハイミ、その話も含めいろいろと聞きたい事も有ります」


 あたしはその言葉に今まで有った事を話し始めた。




 * * *




 「それで師匠、これが『女神の杖』です」


 あたしはシェルに言って今まであたしがイージム、サージム大陸で確保した「女神の杖」を取り出した。

 師匠はそれらを見て大きなため息をついてからあたしに話しかける。



 「正直予想以上の成果です、エルハイミ。十二使徒の一人を倒しただけでなく『女神の杖』まで手に入れるとは。そしてあなたの予想はたぶん正しいでしょう。ジュメルの目的、『狂気の巨人』復活とは」



 師匠はそう言って分厚い資料を引っ張り出した。

 それをあたしに渡してくれる。


 あたしはそれを見ると「ジュメルに関与する資料」と書かれていた。


 「師匠、これは?」


 「あなたが行方不明になった後連合軍が中心にジュメル討伐をしながら調査をしてきた内容です。ティアナが将軍職を引き継いでから特にその目的は顕著になりあなたの予想を裏付ける資料も多々ありました。しかしその目的が『狂気の巨人』復活とは‥‥‥」


 再び師匠の殺気が膨れ上がる。

 それはコクに対して以上に大きく強いものだった。



 「師匠‥‥‥」



 「エルハイミ、やはり今後はあなたにも協力をしてもらわなければなりません。秘密結社ジュメル。なんとしても彼らの野望を阻止しなければなりません」



 師匠はあたしに向き直ってそう強く言う。

 あたしはその師匠の強い意志に同意して首を縦に振る。



 「ええ、勿論ですわ。師匠、私も手を貸しますわ! ジュメルのせいで私はティアナと離れ離れになりこの二年以上の時を費やしてしまったのですわ」



 そう、あたしがイージム大陸に飛ばされた原因もここまで戻って来るのに苦労させられた原因もみんなジュメルが絡んでいたのだ。

 

 そしてあたしの愛しいティアナも‥‥‥



 「それで師匠、ティアナは?」



 あたしが一番聞きたかったティアナの詳細について師匠に聞いた時だった。

 師匠は持っていた湯飲みをテーブルに置いて一間置き、あたしにもう一度向き直ってから語りだした。



 「エルハイミ、ティアナについて話す前に断っておきます。今のティアナはあなたの知っているティアナではありません。彼女は鬼になってしまいました。あなたと言う大切な人を失い彼女は変わってしまったのです。ですからあなたが生きていたという話を聞いた時もその反応はよろしくありませんでした。願わくは実際にあなたに会って昔のティアナに戻ってくれることを祈ります」



 そう、前置きを言ってからあの時何が有ったかあたしに教えてくれた。



 * * *



 後に「巨人戦争」と呼ばれたガレント最北部の防衛戦はガレントの歴史にも類を見ない壮絶な戦いになったそうだ。



 あの時あたしが異空間に飛ばされた後、ティアナは発狂してアイミと共に自らもホリゾン軍にたった一人で突入したらしい。

 その時には目に入るホリゾン軍やジュメルの者たちを全て焼き尽くし殺していったそうだ。

 その様は正しく鬼神。

 そしてその姿はすさまじく命尽きるまで止まることが無かったらしい。



 「命尽きるですって!?」



 あたしはそこで思わず声をあげてしまった。

 しかし師匠は静かに首を縦に振り話を続ける。



 「後で聞いたのですが力尽き戦場で動かなくなったティアナは息絶えていたそうです。勿論皆大慌てで彼女を回収したらしいのですがその時の彼女の形相はそれは凄まじいものだったそうです。ただアコード王がティアナに渡していた【身代わりの首飾り】を付けていたおかげで最悪だけは回避できたそうです」



 ティアナはアコード様が渡してくれた【身代わりの首飾り】を身に着けていて一旦は命を落としたがそれのおかげで復活できたそうだった。



 しかしその後ティアナは何日も食事もせずただあたしの名前をつぶやく毎日だったらしい。



 やっと少し落ち着いた頃ティアナはティアナの町の全軍を使ってホリゾンに攻め込もうとしたらしいが流石にエスティマ様やゾナーに止められた。


 そして何よりアイミが壊れてしまい、他の四体のマシンドールたちも大破して動きがとれなくなっていたそうだ。


 

 ホリゾン軍も大打撃のせいで自軍の砦で防衛をするのが手いっぱいになってしまい、聖騎士団もほぼほぼ崩壊状態だったらしい。



 ここへきて北での状況は互いに監視をするしか手立てが無くなってしまい双方再度攻撃をかける事が出来なくなってしまったそうだ。


 そんな中、エドワード陛下が崩御されガレント側は急遽アコード様が戴冠をして国王に、空いた連合軍の将軍職にティアナが立候補してジュメル討伐に乗り出したそうだ。




 「ティアナがそんな事になっていたなんてですわ‥‥‥」



 あたしはティアナのあの笑顔を思い出していた。

 いつも優しくあたしを愛してくれたティアナ。

 ちょっとおおざっぱだけど常に笑顔を絶やさずそしてみんなといろんな苦労を乗り越えてきたティアナが。



 「ティアナは私が絶対に昔のティアナに戻して見せますわ、師匠!」



 あたしがそう師匠に言った時だった。




 ばんっ!


  

 「ほぎゃー! ほぎゃ―!!」


 「エルハイミちゃんが戻ってきたって本当ですか!? っと、よしよし、ごめんなさいね、いい子だから、いい子だから」


 いきなり赤ん坊の泣き声とそれを抱きかかえたアンナさんが入って来た。



 「へっですわ?」



 あたしはアンナさんにも驚かされたけど彼女が抱きかかえる赤ん坊にもっと驚かされている。



 なんでアンナさんが赤ん坊なんか抱きかかえているの?




 「アンナ、騒がしいですよ。母親になったのですからも少し落ち着きなさい」


 師匠がアンナさんに向かってそう言っている。




 母親ぁ‥‥‥

 え?

 え”え”ええええぇぇぇぇぇぇっ!!!?






 あたしは声にならない驚きをあげてアンナさんをもう一度見るのであった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ちくわ大明神 [一言] えー。 「エルハイミは死んだ! もういない!   だけどあたしの背中に、この胸に、ひとつになって生き続ける!  あたしを誰だと思ってる…! あたしはティアナだ! …
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