第十二章12-9イリナ
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
身辺調査はお任せでござる!(ベルトバッツ談)
12-9イリナ
「主様、追いますか?」
コクがあたしの考えをいち早く察してくれる。
「お願いできましてですわ?」
あたしはすぐにコクにお願いする。
するとコクは静かにベルトバッツさんを呼んだ。
「ベルトバッツよ、先ほどの者が何処に潜むか探ってまいれ!」
「御意でござる」
影の様にすうっとベルトバッツさんは現れそれだけ言うとまた消えていなくなってしまった。
ほんと、ローグの民ってすごいわね。
「主様、しばしお待ちください。ベルトバッツたちが先ほどの者の潜伏先を探し当てております」
「ありがとうですわ、それよりあの人たちの様子を見に行きますわよ」
あたしはそう言って爆発の起こった所へ行く。
見ると数人が黒焦げで横たわっている。
「退いてくださいですわ! 【回復魔法】!」
あたしが回復魔法をかけるとどうやら間に合ったようで黒焦げの人たちがどんどん回復していく。
何回か回復魔法をかけていたら声をかけられてきた。
「あなた、魔法使いなの回復魔法もかなりのレベルね? お礼を言うわ、ありがとう信者のみんなを助けてくれて」
見るとあの巨乳の可愛らしい教祖様がそこにいた。
なんかちょっと上から目線。
まあ教祖とか祭り上げられているのだから仕方ないか。
あたしは大体の処置を終えてから彼女に向き直る。
「あたしは教祖メル。改めてお礼を言うわ、ありがとう。あなたの名前を聞いても良いかしら?」
「私はエルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンと言いますわ」
「!?」
あたしのその答えに彼女、メル教祖は驚いている。
はて、なんで驚いているのだろう?
「エ、エルハイミですって? まさかあなた、ガレント王国の『無慈悲の魔女』なの?」
「メル教祖さん、なんなのですのその呼び名はですわ? ガレントの者には違いありませんけど」
「育乳の魔女」と言われなかっただけましかなと考えるあたし。
しかしその呼び名を知っているとはどう事かしら?
「まさかこんな所で会うなんて、あなたはあの『巨人大戦』で行方不明になったって聞いていたのに‥‥‥」
「メル教祖さんは私をご存じですの?」
なんかぶつぶつ独り言行っているけど、一応気になったので聞いてみる。
すると彼女は慌ててこう言う。
「い、いやぁ、その、そ、そうだ! うわさ、噂であなたの事は聞いたの! そう、噂で!!」
額に脂汗をにじませながら乾いた笑いをする。
そしてもう一度「ありがとう、それじゃぁあたしは忙しいので!!」とか言いながらどこかへ行ってしまった。
何なんだろうね?
あたしはもう一度周りを見てこれ以上ケガ人がいないのを確認してからその場を離れた。
* * *
「黒龍様、見つけましたでござる。いかがいたしましょうか?」
食事をするためにまた大通りに戻った時だった。
街路樹の影からいきなりベルトバッツさんの巨体がすっと現れた。
「うわっきゃぁっですわっ!!」
「む、またまた驚かせてしまったでござるか? 申し訳ございませぬ、姉御」
「ベルトバッツよ、我が主様に申し訳が立たぬ、次に主様を驚かせたらただではおかぬぞ!?」
コクが怒るとベルトバッツさんはその場に土下座して平謝りをする。
「申し訳ございませぬでござります! 不肖この私め以後姉御を驚かす事無きようにいたしますゆえ、何卒今一度機会をくださいませでござります!!」
「コ、コク、もう良いですわ。ベルトバッツさんもこんな所で土下座はやめてくださいですわ、ものすごく目立って恥ずかしいですわ!」
事実、大男がこんな小さなゴスロリっ子の前で土下座なんかしていれば何事かと周りの人たちの注目を浴びてしまう。
ただでさえ目立ってしまうあたしたちなのにこれ以上奇異の視線を集めたくはない。
コクはあたしとベルトバッツさんを見比べてから「主様がそう言うのなら」と言って「報告を」とベルトバッツさんに指示をする。
「はっ、あの者は国の宮廷魔術師でござる。逃げ込んだ先はこの先の街守衛詰め所。名をイリナ=タルト、二十五歳独身。身長百六十五センチ、体重四十八キロ。サイズは上から八十七、五十九、八十六、靴のサイズは二十三センチ。好きな食べ物はサバの味噌煮。現在彼氏募集中のちょっと寂しがり屋の実は夢見る乙女タイプでござる」
おいおいおいおいっ!?
どこから得たそんな個人情報!?
「ふむ、宮廷魔術師ですか? 主様、いかがいたしましょう?」
「いえ、その前にどうやってこの短い時間にそこまでの個人情報を集めたのですの? しかも初対面ですわよね?」
「そこはその道の玄人と言う事でござる!」
元気に親指サムズアップしないで欲しい。
怖いよベルトバッツさん!
「しかし、やはりイリナさんでしたかですわ」
「あれ? お姉さまのお知り合いですか?」
イオマがあたしを見る。
あたしは頷いてから話す。
「以前魔法学園都市ボヘーミャに留学していた時に同じくこのスィーフから留学してきていた人ですわ」
「まさか、お姉さまの昔の女!?」
「そんなことありませんわ! まったく、最近のイオマは少しおかしいですわよ?」
するとイオマはあたしに抱き着いてきて猫なで声で言う。
「だってぇ~、もう少しでティアナさんに会うのでしょ? お姉さまはあたしの事を妹として面倒見てくれるって言ってくれましたけど、ティアナさんの後でもいいからあたしも可愛がってもらいたいんですもん!」
「あっ、ずるいイオマ!」
「イオマ、主様から離れなさい! 主様は私のです!!」
シェルもコクもあたしに抱き着いてくる。
人の往来する大通りであたしは必死にこの子たちを落ち着かせるのであった。
* * *
「しかしどうしたものでしょうですわ。私がイリナさんに会って事情を聞いても宮廷魔術師と言う事であれば話せ無い事も有るかもしれないですわ」
あたしはスィーフ名物「白魚入り卵焼き」と言うものをフォークで食べながら悩んでいる。
今は大通りに面したよさそうなレストランで食事をしている。
近くに湖があるので淡水魚の料理が有名だとか。
このほかにも沼エビとか白身の淡水魚の料理も注文していた。
「宮廷魔術師って事は国からの指示であんな事してるって事ですか、お姉さま?」
「イリナってあの女の子グループのリーダーみたいな子だったわよね? ちょっと見ない間にずいぶんと成長したもんだ」
イオマはそんなこと言いながら白魚入り卵焼きを食べる。
シェルあたしの記憶の断片を思い起こしている様だった。
うん、これ美味しい。
小さな白いお魚がいっぱい卵焼きに入っていて丸ごと食べられるのだけど、小さいから骨とか全然気にならないしぷりぷりした身は卵のふわふわにアクセントとなっていい食感になっている。
「そうですわねぇ‥‥‥」
あたしがそう言ってイオマたちに答えようとしたその時だった。
がっちゃぁーんっ!!
いきなりお店の窓ガラスが割れて人が飛び込んできた!?
その小柄な人影はテーブルやいすをなぎ倒し転がりながら止まってなんとか立ち上がる。
「くっそうぅ~! しつこい連中ね! しつこいと女の子に嫌われるわよ!!」
そう言って立ち上がったその人物と目が合ってしまった。
「へっ? あなた、ガレントのエルハイミ??」
「ええっ? ミ、ミネルバさん!?」
またまたあたしの知り合いだったのだ
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