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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第十一章
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第十一章11-21過去の真実

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


お話が長いでいやがりますね?

暇でいやがります。(クロエ談)


 11-21過去の真実



 ドワーフ王デミグラスにあたしたちは連れられてこの城にある祭殿のような所へ来ていた。



 「遥かなる昔、女神様のお力の御業を人の世に伝えた魔法王ガーベル。彼の者が『狂気の巨人』を封じた時に用いた『女神の杖』、言い伝えではこの杖が全てそろうと虚無の牢獄が開かれると言われておる」



 ‥‥‥えっ!?

 あ、あの、今なんて言いましたっ!!!?



 あたしは心底驚いてこのドワーフの王を見る。

 

 「で、デミグラス王、今なんて言いましたの!?」


 「うん? 『女神の杖』について伝わる話をしたのじゃが、人間の世界ではこの話と違うのかの?」


 「いやいやいや、そんな危険な話初めて聞きましたわっ! ど、どういう事かもっと詳しく教えていただけませんですかですわっ!!」


 あたしの勢いにデミグラス王はその立派な髭をなでながらその言い伝えを思い起こす。


 「魔法王ガーベルが『狂気の巨人』を封じる際に我がドワーフ族も協力してな、『拘束の鎖』なるモノを作るよう頼まれたとの話じゃ。当時その鎖には魔力のこもった魔晶石を鉄と一緒に溶かし練り込むという離れ業をしての、今ではその技術も失われてしまったのじゃが我らドワーフの作った鎖のおかげで『狂気の巨人』は動きを封じられたと聞く。そして十人の女神様の体の一部を封じ込めた『女神の杖』は封印の牢獄である『虚無の牢獄』を開きその『狂気の巨人』を封じ込めたのじゃ。じゃが『女神の杖』はその存在自体が特殊、破壊する事も出来ずこうして各地に持ち込まれ封印し、それを我らドワーフは与かり受けたのじゃ」



 あたしはその話を聞き終わりものすごい衝撃を受けていた。


 

 今わかっているのは、


 「暗黒の女神ディメルモ様の杖」


 「豊作の女神ファーナ様の杖」


 「風の女神メリル様の杖」


 そしてここドワーフの王国に有ると言われている


 「大地の女神フェリス様の杖」

  

 の合計四本だ。



 あと六本がこの世界のどこかに「女神の杖」は存在している。

 しかも話の内容ではこの「女神の杖」が「虚無の牢獄」の封じ込める時の重要な道具になっていると言う事。


 秘密結社ジュメルがこの「女神の杖」を欲しているって事は‥‥‥




 「まさか、ジュメルの目的は『狂気の巨人』の復活ですの!?」




 あたしが思いついた事を口走るとこの場にいた全員が驚く。


 「主よ、ジュメルは伝説の『狂気の巨人』を復活させ何をしようとしているのか?」


 ショーゴさんが真っ先にあたしに尋ねる。

 しかし連中の本当の目的なんてあたしにだって分からない。


 「それは分かりませんわ。でも少なくとも秘密結社ジュメルは遠い過去から現在に至るまでずっとこの世の混乱を欲していましたわ。それは必ず人類に災いをもたらす事ですわ」



 自然と体が震える。

 あのライム様が自身を犠牲にしてでも倒しきれなかった化け物だ。

 そんなものがもし復活でもされたらあたしたち人類に勝ち目なんて無い。



 「主様、『狂気の巨人』とは女神ジュリ様のおつくりになられたあの化け物ですか?」


 「コ、コクは見た事がありますの?」


 「私はあの者と戦いました。しかし他の女神を焼く尽くせた私の炎でさえもあの者だけは倒せなかった。あの者は正しく狂気の化身。人と言う存在がいる限り滅びる事はありません。あの者は人の憎悪と怒りを糧に何度でもその体を再生し巨大化していくのです」


 コクは目をつむり上を向き当時の事を思い出しているようだった。

 



 「ならばますますこの杖はお前さんが持ち去らねばならんじゃろう。さあ、魔法王ガーベルの試練を受け見事その杖を手に入れるがいい!」



 今まであたしたちの様子をずっと見ていたデミグラス王は両手を広げ大きく宣言する。


 「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンよ、そなたにこの預かりし杖を託すことをドワーフは承認する。盟友魔法王ガーベルよこの者に杖にふさわしいものかどうかの試練を」


 ドワーフ王デミグラスがそう宣言すると祭壇の上の方に掲げられていた杖にまで階段がせりあがってきた。

 それは悠久の時を過ぎ、初めて動いたかのようにわずかな砂埃を振るい落としながらせり上がってきた。



 「さあ、行くがいい」



 あたしはそう言われてその階段に足をかける。


 「お姉さま!」

 

 「エルハイミ!」


 イオマやシェルが心配してあたしの名を呼ぶ。


 「大丈夫ですわ、きっとあの杖を手に入れて戻ってきますわ」


 あたしはそう言って再び階段を上る。

 そしてとうとう最上階にまで来て目の前の「女神の杖」を見る。


 祭壇の土台の上にその杖は静かに浮いていた。

 

 それはあのノルウェン王国の迷宮で見たディメルモ様の杖と同じく静かに佇んでいた。

 あたしはその杖に手を伸ばす。

 すると杖がぼうっと光りあたしの中に何かが入ってくる。



 ―― 汝、何故この杖を欲するか? ――



 渋い男性の声が聞こえる。

 

 「私はこの世の混乱を引き起こさないためにこの杖を欲しますわ!」


 あたしがそう答えるとその男性の声はまたあたしに質問をする。


 ―― 汝、この杖を持つに値するや? ――


 「我が名はエルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン! この世の平和を願う者! その杖、必ずや我が元にて使いこなして見せますわ!!」


 ―― ならば試そう、杖を握るがいい ――


 そう言われてあたしはその杖を掴んだ。




 「くぅあぁぁぁっ!!」



 思わず口から呻き声が漏れる。


 今あたしの中に『狂気の巨人』と魔法戦士たちの壮絶な戦いの記憶が流れ込んできた。

 現代ではありえない強力な魔法を使いながら山より大きい『狂気の巨人』を攻撃する軍隊。

 その中に髭面のおっさんに寄り添うようにライム様があり得ないほどの力を使って攻撃をかけている。

 その一撃は山の形さえ変えているのに巨人にダメージを与えてもすぐに回復してしまう。

 髭面のおっさんはシコちゃんを振るいながらもう片方の手に光る石を握りしめ、ありえないほどの大魔法を連発している。


 と言う事はこの人が魔法王ガーベル!?


 しかしその攻撃も巨人にかすり傷もつけられない。


 * * *


 そして場面が変わり、魔法戦士たちは全て動かぬ屍となっていた。

 そこへライム様が傷ついて動けないガーベルに何か言って数歩離れいきなり光の柱になって天空に消えていった。


 次の瞬間光る大きな剣が天空から落ちてきて巨人の半身を焼き尽くす!

 だが『狂気の巨人』は半身を失いながらもおぞましい悲鳴をあげながら踵を返して山の向こうと逃げ去っていく。

 その瞬間あたしの心に今まで感じた事の無いほどの悲しみと憎しみが流れ込んできた。


 ―― い、痛い ――


 感情がここまで痛みとなって現れるモノだろうか!?

 それはあたしの心を痛めつけるだけでなく体全身にも激痛が走る。

 あまりの痛みに気が遠くなりそうなほどの。



 しかし次の瞬間その痛みが消えたかと思うと今度は憎しみが炎の如くあたしの心を焼いた。

 それは体中を虫唾が走るような、胸の奥から喉元まで焼かれるかのような苦しみで目に入る全ての者が憎らしくて頭が爆発しそうだ。



 しかしそんなあたしに次の瞬間光明がさす。

 見れば『知識の塔』にいる彼女が手を差し伸べていた。

 あたしが持っている『万物の書』を渡し『知識の塔』に納めると『狂気の巨人』を封じ込める方法の神託がおりてきた。

 それが「魔結晶石」であり「拘束の鎖」であり「巨大魔法陣」であり「女神の杖」であった。


 * * *


 場面はまた変わり、長々とその憎しみはあたしを蝕んでいたがとうとう『狂気の巨人』を封印することに成功した。

 しかしそれと同時に憎しみの代わりに胸にぽっかりと開いたこの虚無感はあたしに絶望を知らしめる。


 あたしは今度は悲しみの淵に追いやられ何もかも嫌になっていたその時また神託がおりてくる。

 それは冥界の女神セミリアに合うと言う事だった。


 そうすればライム様はあたしの元に戻ってくる。

 その為には二度と『狂気の巨人』をこの世によみがえらせてはいけない。



 あたしは世界中の遺跡にこの『女神の杖』を隠し、封印し、頼れる盟友に託した。


 * * *


 それは一瞬の出来事だったのだろうか?

 それともかなりの時間が経っていたのだろうか?


 あたしはあたしじゃない魔法王ガーベルの記憶と共にこの『女神の杖』を盟友ドワーフたちに託した記憶を見る。




 ―― 汝、その苦しみを背負う覚悟はあるや? ――



 またあの声が聞こえる。


 「その悲しみ、そしてその苦しみもすべて背負って見せますわ! 魔法王ガーベルよ!!」


 あたしがそう叫んで瞳を開けた時だった。

 見ればあたしは「女神の杖」を手にしていた。


 ―― 汝、いや、この杖を受け取るは我が血を引きし者だろう‥‥‥ 我が子よ、願わくば二度とあの化け物をこの世によみがえらせないでくれる事を切に願う‥‥‥ ――


 最後にあの声は優しくあたしにささやいてくれた。

 魔法王ガーベルはきっと分かっていた。

 この杖を欲するものが自分の血を継ぐものだと。


 それでもあの苦しみを味わせこの杖を握る覚悟をその者に知らせようとしたのだろう。





 あたしはその杖を手に階段の下で待つみんなに微笑んだのだった。

 

  

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― 新着の感想 ―
[一言] ???「見えっ…………見えっ…………」 高いところにエルハイミは居たし、誰かやらなかったのだろうか? それとも試練だからと、パンツ(ズボン)を履いてた? ……やるほどアレなのがい…
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