第十一章11-20王の試練
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
いきなり帰ってくるんだもんなぁ。
しかも相変わらずだし、困ったお人だ(ラグー談)
11-20王の試練
ドワーフ王国オムゾンの城にまであたしたちは来ていた。
「いきなり入って行って大丈夫ですの、オルスターさん?」
「何、問題は無いじゃろう。デミグラス王とは旧知の仲じゃ、土産の酒も有る。儂が戻ったとなれば会ってくれるじゃろう」
ドワーフの王にいきなり会えるなんて、もしかしてオルスターさんってすごい人なの?
そう言えばさっきの衛兵の人、ソイスターさんもオルスターさんなら問題無いとか言っていたし。
あたしがそんな事を考えていたら城の門まで来ていた。
当然の如く衛兵に止められるがオルスターさんの顔を見ると「おお、久しぶりじゃの! 元気だったかオルスター?」なんて気さくに話しかけてきてすんなり通してくれる。
良いのかそんなんで?
ちょっとここの安全面で心配になってしまったがドワーフにはドワーフの習慣てのも有るのだろう。
あたしたちは黙ってオルスターさんについて馬車を降り城の中に入って行った。
「オルスターが戻った、デミグラス王に会いたい。誰か王に話してくれんかの?」
流石にいきなりは王の下に行かずオルスターさんは城の中にいたドワーフの偉いさんぽい人に話をする。
するとその偉いさんはオルスターさんの顔を見て驚く。
「オルスター殿では無いですか! 今まで何処ほっつき歩いていたんですか!? って、誰ですこの者たちは?」
まだ黒いひげの若そうなドワーフの偉いさんはあたしたちに気付く。
と言うか、今までの人も気づいてもオルスターさんの連れと言うと誰も気にも留めずに通してくれていた。
「なに、儂の今の仲間じゃよ。それよりお前さんも大きく成ったもんじゃ、いい面構えになったのぉ、ラグーよ」
そう言ってオルスターさんは大笑いをした。
しかしこの偉いさんのドワーフは複雑な顔をしている。
「百年も経てば私だって成長しますって。それで、今日はどういったご用件で?」
「うむ、デミグラス王に帰って来たので挨拶と土産の酒を渡したいのとこの嬢ちゃんを引き合わせたいんじゃ」
そう言ってあたしをこの偉いさんのドワーフの前に引き出す。
あたしは宮廷式の正式な挨拶をする。
「お初にお目にかかりますわ。エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンと申しますわ」
「初めまして。私はドワーフ王国の宰相を務めるラグーと申します。エルハイミ殿、失礼ですが貴女がここへ来た目的を教えていただけませんか? オルスター殿のお連れで信用しないわけではありませんが、役職上、王に会うにもご用件を伺っておきませんとなりませぬ」
「なんじゃ、かたっ苦しいのぉ」
ラグーさんのその説明にオイスターさんは不満げな顔をするけどあたしたちにしてみれば今までが順調すぎたのだ。
当然こう言った事を聞かれるのは当たり前な話だ。
「私がこちらへ来た目的は二つ。一つはドワーフ王国に有ると言われる『女神の杖』を譲っていただきたい事。そしてもう一つはこちらから南のサージム大陸へと渡る為にご協力をいただきたいのですわ」
あたしがそう言うとラグーさんは驚く。
「何故貴女がここに『女神の杖』がある事をご存じなのです?」
「それは儂が教えた。この嬢ちゃんならあの杖を預けるに値すると判断したんじゃ」
あたしが答える前にオルスターさんが答えた。
ラグーさんはその様子を注意深く見ていたが、ふっと息を吐き「わかりました」と言ってあたしたちを応接間に案内した。
そしてしばしここで待つように言って部屋を出ていってしまった。
「相変わらず真面目な奴じゃの」
ラグーさんが出て行った扉を見てオイスターさんはため息をつく。
「オルスターさんはラグーさんとも古いお知り合いですの?」
「うん? そうじゃの、あやつが子供の頃より知っておるの。百年前はまだ髭も生えておらぬ小童じゃったがの」
そう言って懐かしそうに笑った。
そしてしばらくしてからまたラグーさんが戻ってきてデミグラス王がすぐにでも会ってくれる事を教えてくれた。
あたしたちはラグーさんについて部屋を出て行くのだった。
* * *
「久しいの、オルスターよ。変わりは無いようじゃな?」
「デミグラス王よ、儂は元気にぴんぴんしておるよ」
通された謁見の間にはドワーフの高官や戦士、衛兵風の者たちが沢山いた。
そんな中オルスターさんは変わらずの口調で王と話を始めた。
「してイザンカの王ビルゲシュトはどうした? おぬしは奴を手伝うと言って出て行ったきり音沙汰なかったが」
「ああ、奴は人の人生を全うした。奴の心残りであった子供たちの問題も片付いたわ。なので儂は奴との約束を果たし終わりこうして故郷に戻ってきたのじゃ。そうじゃ、これはイザンカの酒じゃ。土産として受け取ってくれ」
そう言ってたずさえていた酒瓶を王に差し出す。
それを高官が受け取りうやうやしく下がる。
「して、そちらの連れは『女神の杖』についてここを訪れたようじゃが?」
オルスターさんの後ろに控えていたあたしは宮廷式の挨拶をする。
「お初にお目にかかりますわ、ドワーフの王。私はガレント王国がティアナ姫の伴侶、エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンと申しますわ」
そう言って頭を下げる。
一応シェルやショーゴさん、イオマもあたしに倣って敬意を示し頭を下げる。
「久しぶりですね、ドワーフの王よ」
しかしコクは違った。
いつもの口調でドワーフの王に話しかける。
「はて、お前さんとは始めて会うと記憶するが? 何者だ?」
「転生を遂げた黒龍です。今は幼女の姿なれど間違いなく私です」
ざわざわざわっ
コクが名乗ると周りが途端に騒がしくなった。
「沈まれ! 黒龍様でしたか。それは失礼した。二百年ぶりとなりましょうかの?」
「そうですね、あの時以来です。その後は大丈夫ですか?」
「あなた様のおかげで我らドワーフは救われた。今は元通りになっておりますじゃ」
そう言って愉快そうに笑う。
コクは「そうですか、ならばよろしい」とだけ言ってまた黙ってあたしの後ろに控えた。
「さて、エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンと申したか、聞けば『女神の杖』を欲しているとな? 何故じゃ?」
ドワーフの王はそう言ってあたしを見る。
あたしは一息置いてからその理由を話した。
そしてその話を聞き終わったドワーフの王は静かに目をつむり何かを考えていた。
「そうか、その秘密結社ジュメルとか言う輩が元凶であったか。そうすると二百年前の事も奴等のせいかもしれんのぉ。いや、それはもう過ぎた事じゃ。しかしあの厄介な杖はお前さんの国の始祖ガーベルに託されたもの。盟友に断りも無くその杖を渡すことは出来ぬのぉ」
ガーベルって、あのご先祖様がドワーフ国に持ち込んだの!?
相変わらずとんでもないご先祖様だ。
「我が祖先がこのドワーフ国に持ち込んでのですの?」
「何? お前さんは魔法王ガーベルの子孫なのか? オルスターよ、それは真か?」
「儂も初耳じゃ。エルハイミの嬢ちゃん、それは本当なのかいのぉ?」
二人してあたしを見るが事実ライム様もあたしやティアナは魔法王ガーベルと始祖母ライム様の子孫であると言っていた。
だから間違いは無いだろう、シコちゃんとも話が出来たわけだしね。
「ええ、間違いございませんわ。我が始祖母、伝説の少女であるライム様からもそう言われておりますわ」
「おお、ライム様とな!? ライム様には先王の魂をセミリア様の元にお連れいただいたのぉ。そうであったか」
なんか意外な所で意外な人の名前が出てくるわね‥‥‥
しかしその事を聞いたドワーフ王は深くうなずきそしてあたしを見る。
「ならば盟友との約束を違える事にはならんな。エルハイミとやらよ、『女神の杖』持ち去るがいい。但しお前さんには魔法王ガーベルが施した試練を受けてもらわねばならん。見事その試練に耐え『女神の杖』を手に入れるがよい」
おおっーー!!
ここに居るドワーフたちが声をあげる。
「ま、エルハイミの嬢ちゃんなら大丈夫じゃろ、頑張るがいい」
オルスターさんもそう言ってあたしの背を軽くたたく。
一体どんな試練なのよ?
あたしは試練を受けるためにその「女神の杖」の場所に案内されるのであった。
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