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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第十一章
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第十一章11-18ロックワーム

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


はぁ?

エルハイミと師匠が知り合いだとぉ?(ドゥーハン談)


 11-18ロックワーム



 「それで詳しい状況を教えてくださいですわ」



 あたしはドゥーハンさんにもう少し詳しい話を聞かせてもらう。


 「ああ、分かった」


 そう言ってドゥーハンさんは話し始める。




 事の始まりは大体三か月前らしい。


 ここドドス共和国は古来ドワーフたちとの交易が盛んであった。

 ドワーフたちは人族には作れない見事な工芸品や武器、防具を作りあげそれはドドス共和国にとっても有益な貿易の品になった。


 「赤き槌の誓い」と言うものがあり、その約束を守る限りドドス共和国とドワーフ王国は友好を誓っている。

 しかしそのドワーフ王国につながる山岳地帯にロックワームが住み着いた。

 普通のロックワームは五、六メートルが最大だ。

 簡単には駆除できないかもしれないがそれでも腕がいい冒険者位なら十分に討伐できる。


 

 しかし今回現れたロックワームは違った。



 身の丈二十メートルクラスの化け物だ。


 そんな奴が山岳地帯の洞窟に潜んでいて近くを通る者を襲っているのだ。


 肉食で地中に潜むロックワーム。

 それが二十メートルも有るのだ。

 そんな化け物が襲って来たらひとたまりもない。

 

 結果貿易の要となるドワーフの品が入らなくなったドドスは大慌てになった。

 何度か冒険者を雇い討伐に出かけてが通常のロックワームでは無いという事実が分かるにつれ普通の冒険者では対応出来なくなりとうとう軍隊まで出たのだが壊滅的な被害を受け撤退したそうだ。

 

 そこでたまたまこのイージム大陸にいた「北陸戦争」の英雄、ドゥーハン=ボナバルドを見つけ出しこの依頼をしたわけだ。


 「と、まあこう言った事なんだがな、残念ながら俺みたいな戦士は魔法のサポートが無いとロックワームと戦えねぇ。奴が地上にさえ引きづり出されれば何とかなる」


 「しかしそこまでの巨体ですわ、大丈夫なのですの?」


 あたしの心配にドゥーハンさんはにかっと笑い胸を叩く。


 「それは任せろ! ぎったぎたに切り裂いてやるさ!」


 かなり自信があるのだろう、その物言いには恐れを微塵にも感じない。

 確かに心眼使いで先程の【炎の矢】も全部叩き落すほどだ、その辺は任せても大丈夫なのだろう。

 あたしたちはさっそくその山岳部へと向かうのだった。



 ◇ ◇ ◇ 



 ドドスの首都ガンベルから問題の山岳部まで馬車で約二日かかった。


 「もうすぐイッカの町だ。そこで休憩して問題の山岳部、それと洞窟に入る。そこを抜ければドワーフの王国オムゾンに着くのだがまず間違いなく洞窟付近で襲われるだろう」


 ドゥーハンさんはそう言って馬車をイッカの町に着けた。

 今日はここまでで明日からロックワームの討伐に入る。



 「よし、今日はここで良く休んでくれ。明日朝一番に出発する」



 そう言って宿を見つけさっさと部屋を取り馬車を裏庭にいれて馬を休ませる。

 この辺の手際は流石に長年冒険者をやっているだけの事はある。



 「ドゥーハンさんはずっと冒険者をやっていたのですの?」


 「ん? ああ、そうだがそれが何か?」



 あたしは馬に水と餌をやっているドゥーハンさんを見ながら更に質問をする。


 「だって、『北陸戦争』の英雄なのでしょう? どこかの国に仕えるとか出来たのではないですの?」


 するとドゥーハンさんはあたしの顔を見てそれから頭の後ろをポリポリと掻きながら明後日の方を見て答えた。


 「まあ、そう言った話もあったがな、俺は誰かに仕えて不自由になるのが嫌だったんだ。それにな‥‥‥ ガレントからは離れたかったんだ‥‥‥」



 ガレントから離れたかった?



 あたしはしばらく黙ってドゥーハンさんを見つめる。

 やがてその沈黙に耐えられなくなったドゥーハンさんは頭を掻きむしりこちらを見る。



 「だーっ! 全くお前ら親子はよく似ていやがる!! ユリシアも俺がちゃんと話すまでじっと見ていやがって!! いいか、エルハイミ、明日は早いんだからちゃんと寝ておけよ、魔術師はちゃんと休んでおかないと魔力が回復しないのだろ?」


 そう言ってドゥーハンさんは向こうへ行ってしまった。




 ガレントから離れたかったか‥‥‥



 ママン、あなたって人はやっぱりいろいろと凄い人だ。

 あたしははるか西にある実家の方を見るのだった。



 * * * * *



 「あーあ、いよいよ怪物とご対面かぁ」


 シェルはそう言いながら弓の調子を見ている。

 イオマも緊張した顔で魔術師の杖を握っている。


 馬車は既に山岳部に入り、所々山の間に掘られたトンネルや洞窟を抜けながらドワーフの国、オムゾンへと向かっている。



 「なに、嬢ちゃんたちなら大丈夫じゃろうて。万が一が有っても儂が守ってやるわい!」


 オルスターさんはそう言って美味しそうに水筒に入ったお酒を飲んでいた。

 しかしそんなオルスターさんとは対照的に静かにコクがあたしの袖を引く。


 「主様、ロックワームは我々にお任せください。いくら大きくても所詮芋岩虫、我ら竜族の足元にも及びません」


 「でもコク、いくらあなたたちが強くても今回のロックワームは二十メートルはあるという化け物です。気を付けるに越した事は無いですわ」


 あたしはコクの頭をなでながらそう言う。

 

 「黒龍様、主様、芋岩虫程度、我らにお任せください。すぐに片づけます」


 「そうでいやがります、主様心配は必要無いでいやがります!」


 クロさんやクロエさんもやる気満々のようだ。

 と、そんな事を話していたらドゥーハンさんとショーゴさんが警告をしてきた。


 「どうやらおいでなすった様だぞ!」


 「主よ、気を付けてくれ!!」


 いよいよロックワームが来たようだ。

 確かにゴリゴリと変な音が聞こえ始めている。

 

 シェルはあたしのすぐ横に来てその耳をぴくぴくと揺らす。

 そしてしばらくして左前を指さし叫ぶ。


 「エルハイミ、左前、そこから襲ってくるわ!!」


 シェルがそう言い終わるかどうかというタイミングで左御岩肌がはじけロックワームの頭が飛び出してきた!



 「【絶対防壁】!」



 すかさずあたしが絶対防壁で馬車ごと飲み込もうと大きな口を開けたロックワームを見えない壁で防ぐ。


 「うっひゃーっ! 何あの大きさ!? ドラゴンの口よりおっきいじゃない!?」


 シェルはそう言いながら矢を放つ。

 シェルの矢は襲ってきたロックワームの顎に刺さり小爆発をする。

 おかげでロックワームは少しひるんだ様だ。


 既にショーゴさんもドゥーハンさんもオルスターさんまでもが前衛に出ている。

 そしてロックワームの次の攻撃に備える。



 「確かに大きいですね。しかしこの程度何という事も有りません。クロ、クロエ片付けなさい!」


 「はっ、黒龍様!」


 「お任せあれ、黒龍様!!」


 そう言ってクロさんとクロエさんが飛び出す。



 「ドラゴンクロー!」


 「はぁあああぁぁっ! ドラゴン百裂掌!!」



 前衛を飛び越し二人が躍り出る。

 そしていきなり必殺技を繰り広げた!



 ざしゅっ!


 どががががががががががぁっ!!



 『グロロォオオオオォォォォッ!!』


 いきなり手痛い攻撃を食らったロックワームは口の端の牙を切り落とされ、頭部をクロエさんに連打されいくつかあった目のうち一つをつぶされた。

 たまらず悲鳴を上げ地中に逃げ込もうとするロックワーム。

 しかしそこはあたしの【拘束】魔法が発動して動きを封じられる。



 「なんなんだぁ!? お前ら一体何者なんだ!! あのロックワームを一瞬で動けなくするなんて!」



 既に魔法の綱でからめとられた長さ二十メートル近くあるロックワームはその巨体をうねらせ苦しんでいる。

 そこへクロさんやクロエさん、ショーゴさんの攻撃がどんどんと決まっていきほどなくロックワームは動かなくなった。

 最後のトドメとばかりにオルスターさんは大きな斧でロックワームの頭を切り落とす。


 

 「おいおいおいっ! お前ら本当に何モンなんだ!? 俺でさえ苦労したあのロックワームを瞬殺だとぉ!? これは一体どう言う事だ!?」



 なんかドゥーハンさんがわめいている。


 「えっと、お姉さまですから」


 イオマがにっこりとほほ笑んでドゥーハンさんにそう言う。


 「いやいやいや、訳が分からん。ユリシアの娘だから大概なのは分かっていたがエルハイミ以外も大概過ぎる! あのおっさんとメイドのねーちゃんは一体何モンなんだ!?」


 「ドゥーハン殿、彼らはドラゴンニュート、黒龍様の僕だ」


 「はぁ? ドラゴンニュート? 黒龍?? 何だよそれ、全部伝説のバケモンじゃねーか!」


 ショーゴさんに言われドゥーハンさんは唾を飛ばしながらわめいている。


 

 うわっ!

 汚いっ!

 唾飛ばさないでよ!!



 あたしは一歩下がりながら説明する。


 「本当ですわ。地下大迷宮で亡者の王リッチの呪いを受けていた黒龍様を私たちが助け出し、共に行動をしているのですわ」


 あたしのその説明を受けドゥーハンさんはしばしあたしの顔を見る。



 「そう言えばジマの国が亡者の王リッチから解放されたと聞いたな‥‥‥ エルハイミ、お前が関わっていたのか?」


 「え? ええ、まあお手伝いはしましたわ」



 「ドズラー大臣にも聞いたがイザンカの内戦は兄王子派の勝利で終わり、兄王子が王の座に就くと聞いたが、まさかエルハイミそれにもお前が関わっていたのか?」


 「ま、まあその、それにもちょっとだけ手は貸しましたわ」


 

 「お前、ボヘーミャ目指してるって言ってたな? もしかして師匠、英雄ユカ・コバヤシに会いに行くのか?」


 「ええ、そのとうりですわ‥‥‥」



 そこまで答えてドゥーハンさんは顔に手を当ててしばらく下を向いていた。


 「道理で大概な訳だ、エルハイミ、お前さん、英雄だったんだな!?」


 「え、ええと、そんな事も言われたような気もしましたわね、おほっ、おほほほほほほ‥‥‥」


 それを聞いたドゥーハンさんはまたまた手を顔に当てて考え込む。


 「師匠が英雄を育てるって事は大事が始まるって事じゃねーか? 俺の時は本当の英雄が現れなかったから戦争を止める事で手いっぱいだったが、こりゃあ、魔人戦争並みの厄介ごとが起こるかもしれねぇって事じゃねえかぁ?」


 ドゥーハンさんは顔をあげてあたしを睨む。



 「何が起こっている?」



 そう言ったドゥーハンさんの顔は真剣だった。

 あたしは改めて今起こっている秘密結社ジュメルについて話をした。


 * * *


 「つまり、人の世が始まって以来裏方にいたその秘密結社がいよいよ表に出て何か良からぬ事を企んでいると言う事か?」


 「はい、そうですわ。私たちのガレントはたまたまジュメルに乗っ取られたホリゾンと事を構える事となりましたが、ジュメルはきっとこの『女神の杖』を集めて良からぬことを企んでいますわ」


 あたしはそう言って『女神の杖』を取り出して見せた。


 「そうか‥‥‥ わかった。ホーネスの野郎の事はいったん棚上げだ。エルハイミ、必要な事があれば何でも言ってくれ。俺で良ければ協力する」


 そう言ってドゥーハンさんは改めて手を差し出した。

 

 「ええ、何かありましたらその折にはよろしくお願いいたしますわ」




 あたしたちはそう言って固い握手を交わすのだった。

 

 

    

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[一言] あれ、エルハイミちゃんの超音波攻撃が炸裂する前に倒された・・・弱すぎっ!
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