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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第十一章
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第十一章11-5レッドゲイル

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


女の敵聖騎士団!

許すまじですわ!! (エルハイミ談)

 11-5レッドゲイル

 


 天空には赤と青の月が二つ躍るかのように輝いている。


 漆黒の空にはキラキラときらめく星たちもいる。

 どれが星座だったかあたしは記憶をたどる。



 「主よ、そろそろいいだろう。城壁の見張りのたいまつも動きが少なくなってきた」



 暗闇の中ショーゴさんの声が聞こえる。

 地上の明かりに目を移すとかがり火や魔法の光で厳重に警備をしている城門が見える。



 「シェル、お願いしますわ」


 「わかった、あたしに魔力注入を」


 シェルはそう言って大地の精霊を召喚する。

 そしてあたしの魔力注入によって通常では成し遂げられない事を始める。



 「んっ、エルハイミのが入ってくる‥‥‥ あっつぅぃいぃ」



 「こら、シェル変な声出さないのですわ。また変な誤解されるじゃないのですの!」


 「だって、エルハイミの魔力って何時も暖かくて濃いのが体の奥底に染み渡ってくるんだもん、そっちの方面でもちょっとうずいちゃうのよ」



 おいこら、こんな時に何言ってんのよ!

 あたしは思わず赤面してしまう。

 

 シェルもちょっと顔を赤らませて息も上がっている。

 


 あ、なんかなまめかしい‥‥‥



 「お・姉・さ・ま!」


 びくっ!


 あたしがついついシェルのピンク色に上気した唇を見ていると後ろからイオマがすごい低い声であたしを呼ぶ。

 思わず何も悪いことしてないのにびくついてしまった。


 「な、なんでしょうかしら、イオマ?」


 「ふう、まさかシェルさんにまで欲情するなんてそうとう欲求不満なんじゃないですか? 私で良ければ何時だっていいのに」


 「よ、欲求不満ではありませんわ!」


 一応抗議しておくけど、確かにシェルに見とれてしまったのは事実だ。

 やっぱり欲求不満なのかしら?



 「始まったわ。いくら地下を通るとは言え静かにね」



 シェルは大地の精霊を使って城壁の下にトンネルを掘っているのだ。

 通常はせいぜい落とし穴くらいしか出来ないのをあたしの魔力で連続して穴掘りをしている。

 結果通常では無し得ない地下トンネルが出来上がったのだ。



 「主様、私が竜の姿になってこの城壁を飛び越えればよかったのではないですか?」


 「それは目立ちすぎますわ。あとフィルモさんたちの脱出にもこの穴は使いたいですのですわ」


 流石に幼竜のコクに全員が乗って城壁を飛び越えるには人数が多すぎる。

 それに竜が現れれば誰だって気づくだろう。

 脱出時の陽動で残ってもらったクロさんやクロエさんは運搬に加担できない。


 

 「エルハイミ、出来たわ。向こう側は建物の影に出口が出来たみたいだから出る時には気を付けてね」



 そう言って夜目の効くシェルが先頭でトンネルに入って行く。

 次いでショーゴさんとイオマ、その後にあたしとコクがついて行く。


 「うう、主様、黒龍様に手ぇ出すんじゃありませんでやがりますよ!?」


 「お気をつけて、黒龍様、主様」


 クロさんとクロさんに見送られながらあたしたちは地下トンネルを進む。



 * * * * *



 トンネルはあたしが立って歩いても十分に高さもあってすんなりと抜けられた。

 ご丁寧に出入り口にはシェルが階段状にしてくれたお陰で出入りも楽だった。



 「うーん、ここってどこらへんかな? 市場っぽいけど?」


 「ちょっといいですか? あ、そうですね大通りから入った雑貨市場ですね」



 シェルが恐る恐る頭を出し暗闇の中で周りを見る。

 そして【猫目の魔法】で闇夜も見渡せるイオマが出口付近を見る。

 以前ここレッドゲイルに来た事があるイオマは下町には詳しいらしい。

 なんでも出身自体はレッドゲイルの近くにある村だったそうで必要な買い物などはここレッドゲイルによく来ていたらしい。


 「ここからなら裏通りで貴族の館、政府の役所へと行きやすいです。多分聖騎士団みたいのがいるのは役所の詰め所でしょう。あそこは駐屯の衛兵隊がいましたから」


 「ならばジニオさんたちはそこに捕まっていると言う事ですわね? フィルモさんたちもそこに向かっていると?」


 「ええ、間違いないでしょう。それに政府の役所ならそのイルゲット様ってのもいると思います。もしかしたらさっきの神父たちも」


 あたしは静かに頷く。


 「よし、じゃあイオマが先導でそこまで行きましょう。エルハイミ魔力をちょうだい。精神の精霊魔法を使うわ、あたしたちがこの街の住人に誤認される魔法をね」


 あたしはシェルの背中に手をつき魔力を流し込む。

 シェルは精霊魔法を発動させてあたしたちの体の周りが一瞬ぼうっと薄く光って消える。


 「これで良しっと。あ、でもあまり激しい動きや接触する人に長く話されると効果が薄れるわ。気を付けて」


 シェルの注意にあたしたちはそっと掘った穴から抜け出し、【幻影魔法】で出入り口を隠す。

 そしてイオマを先頭に歩き出した。



 * * *


    

 流石に聖騎士団に占領されたも同然のここレットゲイルは人通りが少ない。

 酒場らしいところも明かりはついているが人はほとんどいなそうだ。


 

 そんな中あたしたちの一行は静かに通りを抜けていく。



 時たま巡回の聖騎士団っぽいのにも会うけどシェルの魔法のおかげで街の住人と間違えられ特に呼び止められる事も無く貴族の館の通りまで来た。


 もう少しで役所に着くらしい。



 「おい、おまえらどこに行くつもりだ?」



 数人の聖騎士団に呼び止められる。


 「もうすぐ門限だぞ? まさか門限を知らぬとは言わぬだろうな?」


 流石にここまで来ると警備も厳しくなってくる。

 あたしたちは仕方なしに彼らに答える。


 「街に使いに行ってまいりました。お屋敷にはすぐ戻ります」


 「なんだ、貴族の使用人だったか?」


 「ちっ、それじゃあ楽しめねえな。さっきの年増の女とドワーフ捕まえた連中は少しは楽しめてるんだろうなぁ」


 げへへへへっと下卑た笑をする。



 ちょっとマテ?

 年増の女とドワーフだって?


 フィルモさんは何だかんだ言って今二十五、六歳くらい。

 確かにこの世界では既にちょっと大きなお姉さん扱いだ。

 そうするとこいつらに捕まったか?



 「仕方ねえ、貴様らはとっとと屋敷に戻れ! さもないと不審人物でひっとらえるぞ!」

 

 そう言って聖騎士団は向こうへと行ってしまった。



 「まずいですわ、フィルモさんたちが捕まったようですわ!」

 

 「とは言え、何処にいるのかも分からないわよ?」


 シェルは聖騎士団が去っていった方を見ている。


 「仕方ない、シェルよ音を消してくれるか?」


 そう言ってショーゴさんは動き出した。

 シェルはショーゴさんについて行って風の精霊を使って先ほどの聖騎士団の周りの音を消す。

 そこへショーゴさんが音も無く近づきあっという間に二人を倒してしまった。

 ここへきて残りの一人も慌てて剣を抜くがショーゴさんにその手を掴まれ剣を落としてしまう。

 しかしシェルの魔法のおかげで一切の音は立っていない。



 「お姉さま、確かこちらの方に裏路地が有りました。そこへ」



 あたしは念動魔法で気絶させた二人を運び、残りはショーゴさんが喉元に短剣を押し付けて歩かせて来る。

 あたしたち全員が裏路地についたらシェルが魔法を解除する。



 「大声は出すな、死にたくなければ」


 「ひぃぃいいいいっ、お、お前ら何モンだ!? 俺たち聖騎士団にこんなことしてただで済むと思ってるのか!?」


 「静かになさいですわ。私はエルハイミ。先ほど言っていた女性とドワーフは何処ですの?」


 すいっとこの騎士の前にあたしは出る。

 一瞬驚いたようだがあたしの名前を聞いた後にこの騎士は涙ながらに命乞いをする。


 「ま、待て、何でも話す。だから『育乳の魔女』よ、命だけは助けてくれ!」


 「誰が『育乳の魔女』ですの!!」


 だめだ、ここだけは突っ込ませてもらわなければ!


 あたしはフーフー言って肩で息をする。

 既にこの騎士は命乞いをしているので聞きだすのは簡単だろう。


 「それで、その女性とドワーフは何処ですの?」

 

 「あ、ああ、きっとこの先にある詰め所だ。あいつらはあの年増の女で楽しむつもりだ」


 「役所の詰め所ですの?」


 「いや、そこの大通りにある詰め所だ。きっとそこにいるはずだ」


 ショーゴさんが無言で頷く。

 そして次の瞬間その喉を掻っ切る。


 「ぐぼっ」


 その騎士は口から血の泡を吹き出しながらその場に倒れる。

 そしてショーゴさんは残り二人にもとどめを刺す。



 「うわー、なにも殺さなくてもいいのに」


 「駄目ですよシェルさん、こいつ等百害あって一利なし、女の敵なんですから! ね、お姉さま!」


 そう言ってイオマはあたしに抱きついて来る。

 あたしはイオマの頭をなでながらため息をつく。


 「まあこいつらは自業自得、女の敵には変わりありませんわ。それよりイオマその詰所の場所は分かりまして?」


 「はい、こっちですお姉さま」


 そう言ってイオマはあたしたちをその詰所まで案内する。



 * * * * * 



 「ぐへへへぇっ、年増だがいい乳してんじゃねーか?」


 「や、やめなさいよあんたたち!」


 「おい、早くしろよ後ろがつかえてんだからな!」


 「おお、そうだそうだ。街で自由に女をさらえないからこちとら溜まってるんだ!」


 既に下着姿にまで剥かれているフィルモさん。両手を後ろで縛られていて服は破け胸をさらけ出している。

 あと一枚の下着で全部をむき出しになってしまう。



 「貴様らやめんか! おいっ! フィルモぉっ!!」



 「うるせぇ、このドワーフ、少しは黙ってろ!」



 げしっ!



 オルスターさんは既にぼこぼこにされている。

 そして先ほどの蹴りで壁の方に蹴り飛ばされてしまった。


 「ちっ、邪魔してんじゃねーぞ。おい、早くやっちまおうぜ!」





 「全く汚らわしいですわ!」





 あたしは思わずそう言ってしまった。


 「へっ?」


 いきなり姿を現したあたしにこいつ等は驚いているがあたしを見るなり嫌らしい笑みをして近寄ってくる。


 「おいおい、何処のだ誰かは知らねーがずいぶんと良い女じゃねーか? こんな年増よりよっぽど興奮するわなぁ」


 「俺が先だぞ、おまえは先にあの年増の相手してろよ」


 「んだとぉ?」



 本当に汚らわしい。

 あたしはその嫌悪感を隠しもせずに滅多に使わない下級言語で話す。



 「お前等如きがこのあたしに触っていい訳無いだろう、下衆が。消えろ!」



 あたしは手をあげ振り下げる。

 それを合図に姿を消していたショーゴさんやみんなが現れこいつらを瞬殺する。


 ショーゴさんに首をはねられ、シェルの矢で眉間を貫かれ、あたしの【重力魔法】で床に顔をこすりつける。


 「ぶわわわあ、い、一体何モンなんだお前等!?」


 「ふん、冥途の土産に聞かせてあげますわ。私の名はエルハイミ。あなたたちの天敵ですわ!」


 無残にも下半身丸出しで床に押し付けられているこの騎士は頭だけかろうじてこちらに向けた。


 「な、なんだと、『育乳の魔女』だとぉ!!!?」


 「誰が『育乳の魔女』ですの!」



 ぐしゃっ!



 あたしが突っ込みと同時に無意識に魔力を高めたら重力魔法が強くなってこの騎士をつぶしてしまった。


 

 「うわっ、えげつない」


 「い、いいのですのよ、因果応報ですわ! それよりフィルモさんは!?」



 見ると既にイオマが縄を解き自分のローブをかけていた所だった。

 そしてオルスターさんもショーゴさんに縄を解かれていた。

 あたしは【治癒魔法】をオルスターさんにかける。

 そしてフィルモさんのの元へ行く。



 「フィルモさん、大丈夫ですの? ケガは無いのですの?」


 「ふふっ、おかげで助かったわ。ケガも勿論無いわ。初めても守られたし」



 はい?

 初めてもって‥‥‥

 え”え”ええええええっ??



 あたしの動揺しまくりにフィルモさんは少し不満そうな顔をする。

 

 「何その顔は?」


 「い、いえ、なんでもありませんわ。それよりフィルモさんの大事な人、ジニオさんの行方は?」


 あたしは勝手に思い込んでいた事をつい口走ってしまった。

 命を懸けて救いに来た人だ。

 しかもずっと操を守っているのだ。



 しかしフィルモさんはものすごく変な顔をする。


 「は? ジニオが大切な人?? まあ、いなきゃ困る人材ではあるけど‥‥‥」


 「え? フィルモさんってジニオさんの事が‥‥‥」


 するとフィルモさんは心底嫌そうな顔をする。

 そして手を顔の前に持ってきて振る。


 「それは無い」


 きっぱりと、そしてしっかりと断言する。

 

 「え、でも‥‥‥」


 「お姉さま、何を言っているのです。フィルモさんの意中の人はアビィシュ殿下ではありませんか!」


 「はいっ!?」


 イオマのその言葉にあたしは思わずフィルモさんを見る。

 すると赤くなってもじもじと少女のようにはにかんでいる。



 え”え”ええええええっ!!!?



 「フィルモさんって髭オヤジが好きでしたの!?」


 「なっ、髭オヤジだなんて酷い! あの凛々しさが分からないの!? 武骨で誠実、あの髭で全身をくすぐられてみたいわっ!」


 恍惚とした表情で赤くなりながらどこか遠くを見ている。

 あたしは思わず手を顔に当て大きくため息をついてしまった。



 「ま、とにかく此処までは良かったみたいじゃやない、エルハイミ?」


 シェルに肩を叩かれたあたしはもう一度あの髭オヤジを思い起こす。

 


 無いわぁ~。


 


 なんとなく歯をきらーんとして親指をサムズアップしているアビィシュ殿下をあたしは想像してしまうのであった。  

 

  

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