第十章10-11あたしはミソ派
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていきます。
カニの甲羅で酒を温めあおるも一興よな(クロ談)
10-11あたしはミソ派
あたしはどうにかショックから立ち直りみんなの後をついて行った。
そして次なる詰め所に到着する。
ショーゴさんは詰め所の扉に手をかける。
少し遅れてあたしも到着する。
「お姉さま、大丈夫ですか?」
「えっ? ああ、イオマ、大丈夫ですわ」
なんかイオマに気を使われる。
「主よ、しっかりしてくれ。扉を開けるぞ」
そう言ってショーゴさんは扉を開ける。
そこは他の詰め所と変わらず大広間になっていて中央にやはりたたずむ影一つ。
『ほほう、よくここまでこれたものだ。歓迎してやるぞ人間ども』
そこには大きな蟹がいた。
大きさ的にはそうね、牛より大きいかな?
大きな鋏にやや長い脚。
目を出したり引っ込めたりしている。
「蟹?」
「蟹ですね」
「蟹ですわね」
「ああ、蟹だ」
シェルもイオマもあたしもショーゴさんも認識はそのまんま。
でもコクやクロさん、クロエさんはどうも違うようだ。
「主様気を付けてください。これは蟹のように見えますが病原体の塊です」
病原体?
蟹じゃなくて??
「姿形は蟹ですが腫瘍のような病原菌です。主様、決して直に触れないでください」
クロさんはそう言ってあたしたちの前に出て手を横に出しあたしたちが前に出すのを制止する。
『ほほう? よくぞ俺様の正体に気付いたな。 我が名はキャンサー、悪性腫瘍だ!』
そう言ってこの蟹は大笑いをする。
鋏をバチンバチンと打ち鳴らし大きく頭上に掲げる。
『俺に触れればたちまちそこから病原菌が伝わって腫瘍が出来、お前ら人間如きはすぐにでも死に至る。悪魔の病気だ、どうだ怖くて近寄れんだろう?』
何がうれしいのかやたらと饒舌だ。
そしてずいっとこちらに近寄ってくる。
『ふふふっ、さあすぐにでも病原菌に感染させて楽にしてやるぞ~』
言いながら更に近づいてくる。
「主様、下がってください。汚物は消毒します!」
そう言ってコクは大きく息を吸う。
可愛らしい口をすぼめそこからいきなり灼熱の炎を吐き出す!
『うわっ! あちいぃ!! ちょっとマテ、いきなり熱殺菌するんじゃねーよ!! あ、マジ止めて、駄目、このままじゃ完全に消毒されちゃぅぅぅっ!!!!!』
両手の鋏をわさわさ動かしながら逃げ惑うけどコクのドラゴンブレスはそれを許さずやがてきれいさっぱりと焼き尽くす。
「えーと、蟹は焼くより蒸した方がおいしいんだっけ?」
「え? こっちでは茹でますよ?」
「私はミソ派なので塩茹でが良いですわ」
「いや、主よ焼きガニの足は酒のつまみには絶品だぞ?」
シェルは蟹の調理法について話始める。
イオマはこちらイージム大陸での一般的な食べ方を言っているようだ。
あたしは蟹味噌が好きなので自分の好みを言うとショーゴさんは脚派のようで焼きガニを推薦してくる。
「なにを言ってやがります、蟹と言ったら蟹グラタンでいやがります!」
「クロエ、それは見解が狭いぞ。蟹しゃぶこそ至高の味!」
「コクは蟹クリームコロッケが良いです主様!」
クロエさん意外とクリーミーなのが好きなのね?
クロさんは流石に通な食べ方を好む。
そしてコクはかわいらしく手をあげながらはいはい言ってぴょんぴょんはねている。
あ、蟹ご飯もいいわね。
あたしはそんな事を思いながらもう一度焼き尽くされた蟹の悪魔を見る。
えーと、とりあえず次行ってもいいわよね?
復活する兆しも他にも蟹の悪魔がいましたも無いみたいだし。
あたしたちは蟹の料理方法について議論しながら次の詰め所に向かうのだった。
* * * * *
『なんだと? お前らここまで来れたのか!?』
次の詰め所の着いて扉を開けるとライオンの頭の悪魔が横たわってお酌しながらつまみの肉食っていた。
完全にくつろぎモード。
『お、お前ら来るなら来るとちゃんと連絡よこさんか!! どうせ人間風情だからここまで来れんと高をくくってのんびりしていたのに!!』
「いや、そんなことあたしたちに言われても困るんだけど‥‥‥」
シェルはあきれ顔でそう言う。
ライオン頭は慌てて晩酌セットをかたずけ着替え始める。
『と、とにかくちょっとマテ! 今準備するから! そんでもってやり直しな! もっかい詰め所の外出てくれ!!』
仕方なしにあたしたちはもう一度扉の外へ出る。
『よし、もういいぞ!』
中からライオン頭の声がするのでもう一度勢いよく扉を開く。
『ふはははははっ、愚かな人間ども、よくぞここまでたどり着いたな。歓迎してやろう!』
びしっ!
手のひらをこちらに向けてライオン頭は格好をつける。
金ぴかのライトプロテクターを所々着け、マントを羽織り白い鬣を翻し格好をつける。
そのままリングの上に上がってもいいかもしれないわね。
仕切り直しをしたライオン頭はご満悦のようだ。
しかし言われたこちらは白けたままだった。
『あー、まあそういう事で、ここから先は通さんぞ!』
その場の空気に耐えられなくなったライオン頭は咳払い一つしてからそう言う。
さてと。
「全くいい茶番でいやがります。サッサとかたずけて次に行きやがるです」
そう言ってクロエさんはずいっと前に出る。
指をぽきぽきとならし仁王立ちする。
『ほう、お前が相手かしかし手加減はせんぞ! 俺はたとえウサギでも獲物は全力で相手するのだ!』
そう言ってふっと姿を消した?
ばきっ!
ドガッ!!
気付けばクロエさんが壁に叩きつけられてライオン頭がまた姿を現す!
「ぐはっ!」
壁に叩きつけられたクロエさんは吐血する。
あたしは慌ててクロエさんの元へ行って【治療魔法】をかける。
「くっ、油断したでいやがります」
そう言って立ち上がるもまだダメージがあるようで足元がふらついている。
『わかったか? さあ次は誰だ?』
そう言ってライオン頭は肩で笑う。
こいつ見た目以上にやる。
と、ショーゴさんがずいっと前に出る。
「ならば今度は俺が相手だ」
ショーゴさんとライオン頭は対峙してにらみ合うのであった。
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