第九章9-26迷宮脱出計画 *
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
こ、これが母性本能なのですの!?(エルハイミ談)
9-26迷宮脱出計画
黒龍様が再生に秘術で卵になってそこから孵化して早二日目、黒龍様は今あたしと一緒にベットですやすやと眠っている。
結局あの後クロエさんが面倒見ると黒龍様を抱きかかえると大泣きして「ママじゃないっ! いあやーぁ!!」とか言ってクロエさんを困らせた。
結果、黒龍様はあたしと一緒になければならないという状況で今も一緒に寝ている状態。
「ううぅ~ん、ママぁ~」
「はいはい、ここに居ますわよ」
少しでも離れると大泣きするのでずっとそばにいるしかない。
あたしは軽いため息をつきながら黒龍様を見る。
こうして寝ていると可愛いんだけどねぇ~
黒いつやつやの髪に真っ白な肌、均整の取れたあたしに似た顔つき。
ちっちゃな手がにぎにぎしているので人差し指を握らせると嬉しそうにする。
い、いけない、これが母性本能と言うやつかしら?
自分の子供でも無いのにだんだん可愛くなってくる。
「う~ん、ママぁ~お腹すいたぁ~」
そう言えば昨日から何も食べていない。
竜の子供って何食べるんだろ?
あたしはベッドから起き上がって黒龍様を抱きかかえる。
「困りましたわね、とにかくクロ様の所へ行って黒龍様の食べれる物を出してもらいましょうですわ」
あたしがそう言って立ち上がろうとすると黒龍様がとんでもない事言い出す!
「ママ~、おっぱい~」
「へっ?」
思わず立ち上がる途中であたしは固まってしまった。
「おっぱいぃ~」
まだ半分眠ったような黒龍様はそう言いながらぐずり始めた。
「おっぱいって、私はそんなもの出ませんわよ!?」
「ううぅ~、ママぁ~、おっぱいぃ~」
あ、やばい、この流れ放置しておくとまた大泣きしそう。
どうしよう、そんなこと言われても困ってしまう。
「う、ううぅ~」
うあっ!
もう泣きだしそう!!
でも、出ないものは出ないし‥‥‥
あ、そう言えば昔、出なくても授乳させておけば大人しくなるって聞いたような‥‥‥
仕方なしに自分の胸を出す。
あたしはちょっとドキドキしながら初めて赤ちゃんに乳を吸わせてみる。
と、黒龍様は嬉しそうに吸い付いてくる。
くすぐったい、ものすごく。
でも‥‥‥
か、可愛いなぁ~
あたしは完全に母性本能丸出しでおっぱいが出ないのに真剣に吸い付いている黒龍様を見る。
と、あたしの胸に魔力が集まる感じがする。
「へっですわ?」
次の瞬間にあたしの胸から黒龍様は魔力を吸いだした!?
「こ、これはどういう事ですの?」
「授乳に成功したって事じゃない? もうほとんど本当の親子ね?」
いきなり聞こえてきたその声にあたしはびくつく!
「シェ、シェルですの!? いつの間に!?」
「黒龍様にお乳吸わせるところからよ、まさか授乳できるようになっていたとはね」
シェルはまだまだ吸い付いて離れない黒龍様を見ている。
「ほんと、エルハイミに似ているわ。一生懸命おっぱい吸って可愛いわねぇ~」
あたしは慌てているけど無理やり黒龍様を離すわけにもいかない。
結局シェルが見ている前で授乳が終わるまで黒龍様に魔力を吸われまくっていた。
* * *
「ううっ、結構魔力を吸い取られましたわ。卵の時よりたくさん」
「ねえエルハイミ、黒龍様いきなり大きくなっていない?」
シェルに言われあたしは黒龍様を見る。
確かに、昨日生まれたばかりの時より黒い髪も伸び、体も一回り大きくなったような‥‥‥
「と、とにかくクロ様に相談に行きましょうですわ」
あたしはすやすや眠る黒龍様を抱きかかえクロさんの所へ向かうのであった。
* * * * *
「確かに、成長著しいですな。やはり主様の魔力が影響しているのでしょうな」
「くっ、悔しいでいやがります。黒龍様に授乳できるなんて、うらやましすぎるでいやがります!」
クロエさんが何か言っているのは聞かなかったことにして、あたしはクロさんに確認をする。
「そうしますと、卵の時のように私が魔力を黒龍様に与え続ければ黒龍様の成長は早まると言う事ですわね?」
「ええ、間違いないようです。下級竜の子供は周囲の動植物を食べそこからマナや魔力を摂取します。本来ならば魔力さえ取り込めればそのような原始的な食事をする必要さえないのですが、黒龍様の場合主様と言うなじみのある魔力がありました。ですので同じように黒龍様に魔力を与え続ければ成長も早まり記憶も取り戻すでしょう」
クロさんはそう言いながらあたしにお茶を入れてくれる。
あたしは黒龍様を抱きかかえながらそのお茶をいただく。
しかし、そうなると当面あたしのおっぱいを黒龍様に吸わせなければいけないことになるのか‥‥‥
「そうすると当面は主は子育てとなるのか」
「いいんじゃない? エルハイミもおっぱい吸わせている時はまんざらじゃない顔だったし」
ショーゴさんがあたしに聞いて来るけどシェルは余計な事を言っている。
そりゃあ、赤ちゃんの黒龍様は可愛いし、もしかしたら将来あたしも子供できたらって思うと可愛く感じるじゃない?
「いいなぁ、黒龍様」
「イオマ、黒龍様が吸っているのは魔力で私の胸からは何も出ませんわ」
「そこそこ大きいわりに何も出ないものねぇ~」
イオマは何をうらやましがっているのやら、シェルはシェルで人の胸を何だと思っているのだ?
「とにかく、クロ様わかりました。引き続き黒龍様に魔力を与え続け早く成長していただき一刻も早く記憶を取り戻していただきますわ。そして地上へと出なければなりませんわ!」
こうしてあたしの黒龍様育成と迷宮脱出計画が始まるのであった。
* * * * *
「ううっ、最近黒龍様の魔力吸うのが半端なく多くなっていますわ。もう私の魔力もほとんど残っていませんわ」
あれから一週間、毎日一回は授乳をする事となったがその度にほとんど全部の魔力を吸われてしまう。
ただ、おかげではいはいできるまでに急成長を黒龍様はしている。
「お姉さま、最近黒龍様ばかりかまっていて全然あたしの相手してくれないんですもの~」
「エルハイミもママが板について来たわよねぇ~ 完全に黒龍様が自分の子供あつかいじゃない?」
今は魔力をお腹いっぱい吸った黒龍様は乳首をくわえたまま寝てしまった。
あたしはそっと黒龍様を離してベッドに寝かせる。
「ふうぅ、疲れましたわ」
あたしは授乳を終え胸をしまう。
「ほんと、最近のエルハイミは母親同然ね」
「そうですよ、おかげで私がお姉さまに甘える時間が無くなっちゃいます!」
そう言いながらイオマはあたしに抱き着いてくる。
コクに魔力を与えて疲れていたあたしはよろけてそのままイオマ共々近くにあった椅子に座り込んでしまった。
そしてそこにシェルもやってきてあたしの頬をつつく。
「ま、将来の予行練習って事で頑張ってね、エルハイミ♪」
「他人事だと思って、シェル、後で覚えておきなさいですわ」
そんなたわいないやり取りをしていたらいきなり黒龍様が目覚めた。
「だめぇっ! ママはあたちのぉ~! シェリュもイオマもあたちのママとっちゃらめぇっ!!」
目覚めた黒龍様がシェルとイオマがあたしにくっついているのを見て手足をバタバタさせる。
「ふたりゅともあたちのママとっりゃ、らめっ! あたちのママはあたちの! 主しゃまはあたちのぉ!!」
黒龍様がそう言いながら両手を振ってシェルとイオマを追い払おうとする。
「ごめん、ごめん、取ったりしないわよ」
「黒龍様ぁ~私にも分けてくださいよぉ~」
ちっちゃい黒龍様はぷんすか怒っている。
そのしぐさがとても可愛らしくてあたしは呆然とそれを見てしまった。
「もうらめれしゅ、主しゃまはあたちのなんだかね! 主しゃま大丈夫れしゅか?」
ん?
急に話し方が変わってきた?
もしかして??
「黒龍様、もしかして記憶が戻ったのですの?」
「ママ、りゃなかった、主しゃま、コクとおよびくりゃしゃい!」
とうとう黒龍様が記憶を取り戻したのだった。
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