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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第九章
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第九章9-3ごはん

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


む、虫だけはいやぁぁぁぁぁああああぁぁッ!!(エルハイミ談)


 9-3ごはん



 あたしたち四人は出てくるモンスターたちを薙ぎ払いながらここ第六層を探索していた。



 「本当にお姉さまたちって強いですね! 尊敬しちゃいます!!」


 能天気に言ってくれるイオマはあの後あたしが胸を大きくするのに協力という約束で本当にぎりぎりで放してくれた。

 実際にはちょっと出ちゃったけど【浄化】の魔法できれいになっているからノーカウントよ、ノーカウント!!


 そして今は体感で既に一週間くらいが経っていた。




 「エルハイミ、流石にあたしの手持ちももうないわよ」


 シェルのその一言はあたしたちが別の危機に陥っている事を示す。

 そうそれは食糧難だ。


 シェルは魔法のポーチに意外と沢山の携帯食や果物、おやつを忍ばせていた。

 冒険者のイオマも携帯食は持っていたけどあくまで地下一層の浅い所で数日程度の予定で来ていたからそれほど持ち合わせがあるわけではない。


 この一週間近く、シェルの食料とイオマの食料で何とか食いつないできたのが実情だった。



 「水だけは魔法で出せるけど食べ物は出せないのよねぇ、魔法って」


 シェルはごそごそとポーチをまさぐっている。

 そして携帯食を二本出した。


 「これが最後よ。これからどうするの、エルハイミ?」


 どうするって聞かれても、どうしたらいいのだろう??




 「主よ、背に腹は代えられん。狩りを始めるぞ」



 ショーゴさんはそう言って戦闘形態に変身する。

 そしてストライクモードになる。


 「ショーゴさん、狩りと言ってもこんな地下迷宮で何を狩るのですの??」


 「味は問題外だが迷宮ではその場にいる獲物を狩って食料にする。ちょどそこの影にロックリザードがいる。こいつらは固い皮さえ引きはがせれば食える」


 そう言ってショーゴさんは足音も無く近くの岩にすっと近づきいきなり剣を突き立てる。


 「ゲェッ!!」


 変な声がして岩から血が流れだした?


 見ると岩そっくりに擬態していたオオトカゲがそこにいた。

 尻尾まで入れれば一メートル近くある。


 ショーゴさんは剣を刺したままそれをひょいっとこちらに投げ飛ばす。


 とたんに先程このトカゲがいた場所近くの岩が動き出して逃げていく。

 どうやら他にもいっぱいロックリザードがいたようだ。



 「こいつは背中は固いが腹は柔らかい。こうしてこうすれば意外と簡単にばらせる」


 ショーゴさんはそう言って手際よくロックリザードを解体していく。

 お腹の白っぽい所に剣を突き立て切り裂き、皮をはいでいく。

 頭や手先足先は切り落として取り出されたそれを今度は上手に血を抜きながら内臓を取り出す。


 そりゃあ今までに動物の解体も見た事くらいあるけど流石に目の前で、しかもモンスターを解体しているのは初めてだ。

 むわっと何とも言えない臭みがする。

 

 「うわぁっ、生臭い! ショーゴこんなの本当に食べれるの??」


 シェルがものすごく嫌そうな顔をしているが経験者らしいショーゴさんは何気なく解体を進める。

 そしてそれは大まかな大きさに切られあたしたちの前に並べられた。


 「主よ、水を出してくれ。こいつを洗った後に塩でもかけて焼けば食える」


 そう言って今度は周りをきょろきょろと見てからピンク色の岩石を探して持ってくる。

 それを布で包んで剣のつかで細かく砕く。


 「ロックリザードのたまり場には岩塩がある事も有る。塩は貴重だからついでに少し持って行こう、シェルのポーチに入れてもらえるか?」


 そう言って岩塩の塊をシェルに渡す。

 シェルはそれをポーチに納めてからショーゴさんに聞く。


 「それで、今砕いてる岩塩を振りかけるの? ほんとに食べれるのこんなのが?」


 あたしは既に地面の土を錬金魔法で器に変えて水をためて先ほどのロックリザードを洗っている。



 結構生臭いのよね、これって。



 そんな事を考えながら大体洗い終わる。

 そして別に用意していたお皿に乗せておく。


 ショーゴさんが砕いた岩塩もだいぶ小さくなって振り返られるくらいになった。


 「主よ、魔法でこいつを焼きたい。すまないが炎の魔法を出してもらえるか?」


 言われてあたしは【炎の壁】をアレンジして電話帳くらいの大きさに発生させる。

 ショーゴさんはその肉を剣に挿し岩塩を振りかけてから火にかける。

 

 しばらくしてじゅうじゅうと音を鳴らしロックリザードが焼け始める。

 

 久しぶりに見る料理らしい料理は見た目は美味しそうだ。

 数度裏返し焼きあがったそれをショーゴさんは皿の上に置く。

 

 ごくりとあたしはつばを飲み込んだ。

 

 「旨くはないが岩塩のおかげで食える味にはなったろう。食ってみてくれ」


 ショーゴさんに言われてあたしたちはその肉をむしり取り口に運ぶ。


 ‥‥‥何と言ったらいいのだろう、味の無い鶏肉?

 肉質もささみみたいでぱさぱさしている。

 かろうじて塩味のおかげで食べれるけどショーゴさんの言う通り美味しいものじゃない。


 「うう、お肉苦手だけどこれは何とか食べれる。でも味しなくてまずい!」


 「ロックリザードって食べれたんですね。あたしも初めて食べるけど岩塩が無かったらきついかも‥‥‥」


 二人とも文句を言いながら黙々とそれを食べる。

 結局お腹がすいていたから味は二の次。

 あたしもそれをもぐもぐと食べる。


 「ロックリザードは迷宮の掃除屋と言われている。大体どこの層にもいるからこうして食い物がなくなった時に最終手段でとらえて食料にするが、決してこいつの卵とか皮膚近くは食べるな。毒があって食うと死ぬ」


 それを聞いたあたしたちは思わずこの肉をむしっていた手を止める。


 「ショ、ショーゴさん毒ってどういう事ですの?」


 「こいつらのように弱いモンスターの中には捕食を免れる為に体に毒を持つやつがいる。知らないで食べるととんでもないことになるから気を付けた方が良い」


 そう言ってショーゴさんもその肉をむしって食べる。

 もともと小食なショーゴさんだが生体部分の生命維持の為にはやはり何か食べなければならない。

 

 「相変わらずまずいな、しかし懐かしい味だ‥‥‥」


 そんな事を言いながら黙々とそれを食べ終わる。



 * * *



 「残った肉はあたしのポーチに入れておくわね。この先まだまだ食糧事情は厳しいからね」


 確かにシェルのポーチなら時間が経っても腐らないし新鮮なままだ。

 あたしたちはとりあえずの食糧難を回避してまたこの階の探索を始める。



 「でも、もう少し美味しいモンスターっていないのかしら? ショーゴ知らないの?」


 「いる事はいるが、あれはなぁ‥‥‥」


 「何々、どんなモンスター!?」


 少しでもお腹が膨れたせいかシェルは元気になっている。

 でも、美味しいモンスターっているんだ。

 あたしもちょっと興味が湧いてきた。

 

 「蜂のようなモンスターなんだが、そいつの幼虫が美味い。味はミルクのような濃厚な味なんだが出来ればあいつらには遭遇したくない。人の頭くらいある大きな蜂が何百匹も襲ってきてしかもすべての針に即効性の麻痺毒があるからな。万が一あいつらにつかまって巣になど連れていかれたら生きたまま卵を産み付けられ孵化した幼虫に少しずつ食われる。全く嫌な死に方の一つだな」


 言われたそれを想像する。

 思わず鳥肌が立ち背筋が凍る。


 

 それは嫌な死に方ね!!

 どうせ死ぬなら一思いにっておもちゃうわよ!



 あたしたち三人が嫌な顔をしているとショーゴさんが警告をしてきた!


 「またお出ましだ、今度は面倒だぞロックキャタピラーの群れだ!」

 

 警告された先を見るとあの岩に偽装した芋虫の大軍がいる。



 「にょ、にょぇえぇぇぇぇぇっっ!? 気持ち悪いですわぁ! こっちこないでですわぁ!!」



 そのあまりのおぞましさにあたしはなりふり構わず魔力を放出する。

 それはどうやら雷撃になって目の前に迫るロックキャタピラーの群れを襲う!


 ぴかっ!

 ごがぁがががががががぁぁぁああぁぁん!!



 「ちょっと! エルハイミ落ち着きなさいよ!!」

 

 「うひゃあぁっ、お姉さまいつも以上にすごいっ!!」


 どうやらあたしが放った電撃はロックキャタピラーの群れを一掃してしまったようだ。

 見ると黒焦げになって煙を上げているロックキャタピラーの群れ。



 「相変わらず容赦ないわね、エルハイミは」


 「だ、だって毒は吐くし見た目も気持ち悪いしで最悪ですわ、このモンスター!!」



 あたしは自分で自分の腕を抱きしめ身震いする。

 そんなあたしをよそにショーゴさんはおもむろにロックキャタピラーの近くに行ってその外殻に手をかける。


 

 「しかし主よ、こいつも美味いんだぞ?」


 そう言ってショーゴさんは岩のようなその背を引ん剥く。

 するとエビの剥き身のような白っぽいぷりぷりした皮下肉が現れる。

 ショーゴさんはそれを剣でそぎ取りあたしたちに差し出す。



 「へっ?」



 「主よ、食ってみてくれ、ぷりぷりして少し甘みがあり美味いはずだ」


 「本当? じゃあ少し」


 「えっ? これも食べれるんですか?? じゃああたしも」



 三人とも平気で食べる。

 そして「美味しい!」とか言っている。



 いくら美味しくてもそれって虫のようなものよね!!??


 

 思わず背筋をぞくぞくさせ悪寒が走る。

 あたしは一歩二歩と後退する。


 しかしそんなあたしをシェルの奴が目ざとく見つける。


 「エルハイミぃ~、これ美味しいわよ?」


 「わ、私は遠慮いたしますわ!」


 「そう言わず食べて見なさいって、イオマ捕まえて!」


 にじり寄る二人。

 あたしは青ざめながらさらに後退する。


 「さあ、エルハイミも観念して食べなさぁい!!」


 「い、いやですわぁぁぁぁぁぁっ!!」



 あたしの絶叫が響く中しばらく迷宮暗闇中で追いかけっこをする羽目になるのだった。

 

  

 



 ‥‥‥結局最後に食べさせられたけど確かにエビみたいで美味しかったです、はい。

 

  

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