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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第八章
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第八章8-30脱出

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


つまんないっ!

ひまっ!

たいくつぅうぅぅっ!!(シェル談)


 8-30脱出



 あたしたちは暗闇の中どこかに流されていた。



 「ああっ! もういい加減どうにかしてっ! 殺すならさっさと殺してよ!!」


 シェルが苛立ち文句を言う。


 あたしたちが暗闇の渦に飲み込まれてから体感で既に丸一日は経っているだろう。

 その間あたしはずっとティアナの事を考えていた。


 あたしたち三人は何とかまだ生きてはいる。

 しかしだからと言って助かる見込みがあるわけではない。



 「せめて何か足掛かりでもあればいいのだが、こうなにも無いとな‥‥‥」



 ショーゴさんがつぶやく。


 ショーゴさんは今までアサルトモードであちらこちらに魔光弾を発してみたりしているが特に何かが変わることなく今に至る。


 「不思議と此処にいるとお腹減らないってのが救いかしら? もしかしてエルフの魔法の袋の異空間なのかしら?」


 シェルの言う異空間の可能性も考えた。

 しかし暗闇の渦を発生させた力の源は四連型魔晶石核の逆スパイラル効果。

 普通の異空間とは違う。

 あたしはこの空間にあの巨人もいるのではないかと感知魔法を働かせてみる。

 しかし感じるのは広い空間だけだ。



 「シェル、ショーゴさんごめんなさいですわ‥‥‥」



 もう何度目だろうかあたしは謝るしかない。


 「もういいって何度言えばわかるのよ、エルハイミ!」

 

 「そうだぞ主よ。それよりここを抜け出すことを考えてもらえないか? 主はティアナ殿下を入り口に送り出す方法を知っていた。ならばほかにもまだ妙案があるのではないか?」


 ショーゴさんにそう言われても、こうも何もない所でどうにかできるわけがない。

 それこそレイム様でもふらついていない限り。



 ん?

 レイム様??



 そう言えばあの時はマリアの体を探して召喚魔法まがいの事をして異空間の中身を引き寄せようとしたっけ?

 そうすると誰か何かを召喚する魔法でも使ってくれればもしかするとここから出れるきっかけになるかも?

 


 あたしは以前学園で読んだ召喚魔法の原理について思い出す。


 

 現存する召喚魔法はあたしたちの世界に存在する魔獣や 下級の悪魔とかを召喚するものだ。

 原理は等価交換で呼び出す魔獣や悪魔に対価を払う代わりに望みをかなえてもらう契約を結ぶわけだが利害の一致しない者同士が呼ばれても意味がない。

 そこで召喚の魔法陣を書くときはその目的をしっかりと書き込み召喚される側もその意思に同意するのを前提に呼び出しされる。


 ただ、呼び出しされるにあたって距離が離れていたりする場合があるので異空間を使う事が多い。


 

 異空間の研究はまだまだ進んでいないが距離や時間と言ったものが著しく縮められることは分かっている。

 また魔法王ガーベルのゲートを真似しようとしたエルフが見つけた異空間の特徴と言うものもいくつか知られている。


 それは食物などが時間が経っても腐らず新鮮に保たれたり出入り口の大きさにかかわらず物の出し入れが出来たりとする事らしい。



 この異空間もそれと同じであれば良いのだが発生原因が違い本来の目的は異界送付だ。

 全く同じ異空間とは限らない。



 もし出口が開いたとしてもあたしたちのいた世界とも限らないしその辺は出たとこ勝負になる。




 「流石にあの異界の神様にばったり出会う事は無いでしょうですわ‥‥‥」



 あたしは学園で異界の神を引っ張り出した時の事を思い出した。

 怒られただけなのにあの破壊力。

 今考えただけでも身震いする。



 しかし召喚魔法かぁ。

 その辺は常に感知魔法を働かせそのきっかけがあれば何とかしないと‥‥‥



 そんな事を思っていた時だった。



 「エルハイミ! 空気がまた流れ始めた!!」



 シェルが敏感に反応する。

 今までどこかに流されていたけどそれとは違う空気の流れ?



 もしや!!!?



 「シェル、どちらの方向に空気が流れているか分かりまして?」


 もともとの流されている方向とは違うらしい。

 シェルは目をつむり全神経を集中する。


 そしておもむろに指をさす。



 「あっちだわ! 空気がそこへ引っ張られている感じがするわ!!」



 指さされた方向にあたしは感知魔法を使ってみる。

 すると確かに小さな針の孔ほどの大きさに空気が流れ始めているようだ!?

 

 召喚魔法か何かが発動でもしているのだろうか?

 しかしこれはチャンス!


 あたしはすぐさまシェルにそこへ向かって矢を放てるか聞いてみる。



 「一体何処よ? あたしには見えないわよ??」



 「シェル、私と同調してくださいですわ。感知魔法で位置を教えますわ」


 言いながらあたしはシェルの背に手をつく。

 そして魂の隷属を基準に感覚の同調をする。


 「おおっ! これが同調なの!? 面白い! あ、あそこね??」


 そう言ってシェルは弓を構える。

 あたしはすぐさま矢のお尻に【拘束魔法】のアレンジで魔法の糸をつける。

 そしてシェルは「ひゅっ!」と息を吐きながらその矢を放つ!


 放たれた矢はあたしが感知している針のような小さな穴に見事に吸い込まれていく。


 そして矢はそのままその穴の中に消えていった。

 しばらくして結んであった魔法の糸が引っ張られる。



 「来ましたわ! シェル、ショーゴさんどこに出れるかわかりませんが多分あれは出口、とにかくこの魔法の糸を絶対に放さないでくださいですわ!」



 あたしがそう言い切るとほぼ同時に糸がぐんと引っ張られた! 

 あたしたち三人はそのままその穴に引っ張られていく。


 「ねえエルハイミ、あんな小さな穴からあたしたちって出られるの?」


 「エルフの魔法の袋と同じなら出入り口の大きさは関係ないのでしょうですわ? だから出ることは出来ると思いますわ、ただどこに出るかはわかりませんけど‥‥‥」


 「運任せって事だな、主よ?」


 「そうですわ、だからどこに出るかは恨みっこ無しでお願いですわ!」


 「このままこんな所にいるよりはずっとましよ!」


 ずるずると引っ張られるあたしたち。

 こうもうまく行くとは思わなかった。

 もしかしてこれってティアナだけじゃなくあたしたちもこの方法で助かった?


 ‥‥‥いやいや、ティアナがあの渦から出た後すぐに渦の入り口も消えたこと考えるとこの移動速度じゃ全滅か。

 それに今から出れるかもしれない先は何処につながっているか分からない。

 ティアナの安全を考えればやっぱりあの時の方法は最善だったかな?

  

 頬に汗を一筋流すあたし。 

 

 うーん、この事は黙っておこう。

 ショーゴさんはまだしもシェルあたりはしつこく文句言ってきそうだし。



 あたしのそんな考えをよそにあたしたち三人はどんどんとどこかへ引っ張って行かれるのであった。   


 

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