第八章8-15お祝い
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
赤ちゃんかぁ・・・
あ、あたしとエルハイミの赤ちゃんだったらどんな子になるんだろう!!?(ティアナ談)
8-15お祝い
アテンザ様のおめでたが分かってから三か月が過ぎた。
経験者の話だとそろそろ安定し始めるから会いに行っても大丈夫と言う事らしい。
試作の下着は大好評で夜会の貴婦人たちのトレンドとなりつつある。
「エルハイミ、ホリゾンも当分攻め込んでくる気配も無いし、一度コルニャに行って姉さまに会おうと思うのだけど?」
「そうですわね、それもいいかもしれませんわ。こちらもジルのおかげで干し肉や燻製の備蓄も安定し始めましたし、養殖池も思いのほか川の魚が入って来て漁獲量も増えていますわ。でも、ジルが魚の燻製の作り方まで知っていたおかげで大助かりですわ」
村一番保存食作りが上手だと言っていたジルのおかげでたんぱく源の保存食の備蓄は徐々に増え始めていた。
このままいけば次の越冬も十分に足りるだろうし、もしかしたら食糧庫の増設が必要になるかもしれない。
「数日なら守り切れる自信があるぞ? 小型投石機や簡易魔装具の取り扱いもかなり慣れて来たからな。もう遅れを取る事は無いぞ」
ゾナーはジルが作った魚の燻製をかじっている。
西の山岳地帯にあった岩塩が効いたお酒のおつまみにもってこいの味付け。
ゾナーの最近のお気に入りらしい。
「それじゃあ下着の納品を兼ねて明日にでも行ってくるわ。二、三日で戻ってくるからその間はお願いね、ゾナー」
「ああ、主よまかせてくれ。時にエスティマ様はどうするのですかな?」
ゾナーと一緒に魚の燻製をかじっていたエスティマ様はしばし考える。
「そうだな、姉上にも久しく会っていない。私も祝いに行ってくるか」
そう言いながらあたしを見る。
アテンザ様よりもあたしと一緒にいたいのがバレバレである。
「じゃ、そういう事で行ってくるわね!」
* * * * *
「急に行くって言うからこれしか取れなかったわよ」
シェルは森に入ってお腹の子供に良いというキノコを採って来ていた。
このキノコを薄味でスープにすると良いらしい。
「ジルからも特製の燻製肉もらってきたけど、妊娠中ってあまりお肉食べない方が良いらしいわね?」
出かけに経験のある使用人に聞いてみたらお肉は栄養が強すぎるのであまりたくさん食べない方が良いらしい。
なので出来立ての魚の燻製も持って行く。
馬車は揺られ揺られ順調にコルニャの街に向かっている。
「しかしあの姉上が身ごもったか。少し実感がないな」
なぜかあたしの隣に陣取っているエスティマ様。
あたしをはさんで隣にはティアナもいる。
「兄さまのお祝いの品は姉さまには飲ませてはだめですよ? お酒は妊婦に一番悪いのだから!」
「わかっている、これは義兄上に飲んでもらうんだよ。これだけ強い酒はガルザイルではめったに手に入らないからな!」
ティナの町にはホリゾンの帝都から逃げ出した職人もたくさんいる。
その中に蒸留酒を作れる職人もいてまだ若いけどかなり強烈な蒸留酒がティナの町に出回り始めた。
前にアコード様とライム様が飲んでいたのはホリゾンの帝都製でかなりの年代物だった。
あれのおかげでティナの酒場には蒸留酒は一本も残っていない。
しかし職人のおかげでいよいよこの蒸留酒も出回り始めたのだ。
「姉さまが知ったらあとで怒るわよ? 姉さまもお酒は大好きだったから」
「そうだったな、しかし赤子が落ち着くまではお預けだな!」
そう言ってエスティマ様は笑う。
ティアナに聞いた話ではエスティマ様は昔からアテンザ様には頭が上がらないらしい。
だからこういうのはちょっとした仕返しなのだろうか?
あたしもバティックやカルロスに美味しいものお預けされるのは嫌だな‥‥‥
弟の取り扱いには注意しよっと。
「主たちよ、見えてきたぞ。コルニャの街だ」
御者をしていたショーゴさんが声をかけてくれた。
久しぶりに見るコルニャは変わったところも無く、あたしたちはウィルソン侯爵家のお屋敷に着いた。
そこにはわざわざフリッタ侯爵が出迎えに来てくれていた。
「ようこそ我がウィルソン家へ」
そう言って両手を広げてから挨拶をしてくれる。
あたしたちも返礼の挨拶をしながらふと気づく。
アテンザ様はここにはいなかった。
ティアナなんか馬車降りる前から身構えていたというのに。
「お義兄さま、おめでとうございます。時に姉さまは何処に?」
「いらっしゃい、ティアナ殿下。アテンザなら屋敷の中だよ。早速会いに行ってやってくれないか?」
そう言ってフリッタ侯爵はあたしたちを屋敷に案内する。
* * *
屋敷に入り、アテンザ様がいるという部屋に入って驚いた!
「よく来てくれたわね、ティアナ、それと皆さん。あら? エスティマまで来てくれたの??」
「おめでとうございます。姉上」
「姉さま、おめでとうございます。それでそれどうしたのです!!!?」
そう、誰もがアテンザ様の胸に目がいっている。
もともと大きく均整の取れた美しい胸だったが、今は爆乳と言う言葉がぴったりだった。
あたしは今まで見てきた中で確実に最大最強と思う!
アテンザ様は自分で肩を叩き、よっこおらせっと言いながら椅子に座る。
よくよく見ればお腹も膨らんで来ていた。
「妊娠したせいか胸がいきなり張ってきて肩がこるのよ。動き回るのも一苦労だわ」
そう言ってあたしたちにも座るように勧めてくる。
やばい、あたしはその胸から視線が離せない。
「ティアナも美しくなって。お姉ちゃん本当ならすぐにでも抱きしめたいのに、ごめんね。今は大人しくしろってみんなから言われててね」
「それでいいですから、今はおなかの赤ちゃん最優先にしてください、姉さま!!」
力強く言うティアナ。
残念そうなアテンザ様。
「はははっ、本当にそうだぞアテンザ、安定し始めても大人しくしていなければだめだよ」
フリッタ侯爵はそう言いながらアテンザ様の隣に座る。
使用人にお茶を持ってこさせ談話が始まる。
「改めておめでとうございます。義兄上、姉上。これは祝いの品ですが、失念しておりました。姉上は今は飲めないのでしたな。どうぞ義兄上がお楽しみください」
エスティマ様は口元に小さな笑いを張り付かせ奇麗に包まれた蒸留酒を手渡す。
アテンザ様はその意図に気付いてエスティマ様を睨んでいたけど、ため息をついてティアナやあたしたちに向き直る。
「お久しぶりね、エルハイミさん。ティアナとはうまく行ってますの?」
「勿論ですわ! アテンザ様。ティアナ殿下の事は私にお任せくださいですわ!!」
あたしは即答で力強く答える。
しばしあたしとアテンザ様が視線をぶつける。
両方とも笑顔を張り付かせているけど目線だけはバチバチと攻防を繰り広げている。
「ねぇねぇ、あそこに赤ちゃんがいるの?」
そんな空気を崩したのはマリアだった。
マリアはアテンザ様の前まで飛んで行ってテーブルの端に止まる。
「ねえ、触ってもいい??」
「ええ、勿論よ。むしろお願いしたいくらいだわ。フェアリーに触れられたお腹はいい子を育てるって言われるからね」
アテンザ様はにっこりとして両手をマリアの前に差し出す。
マリアはその手のひらに載ってアテンザ様のお腹に手を触れてほほをすり寄せる。
「あったか~い。あ、心臓の音が二つ聞こえてくる!」
あたしたちはしばしその様子を無言で見守っている。
「うん、赤ちゃんが早くみんなに会いたいって言ってるよ!!」
マリアは上を向いてアテンザ様にそう告げる。
一瞬驚いたような顔をしたアテンザ様だったけど嬉しそうな笑顔でマリアに礼を言う。
「ありがとうね、頑張っていい子を産むわ」
「ありがとう、最高のお祝いだよ、ティアナ殿下」
そう言ってフリッタ侯爵もマリアにお礼を言う。
ちょっとした迷信だけど、喜んでもらえたようだ。
その後お祝いの品を渡したりして和やかな時を過ごす。
そして女性陣だけで話が有ると言って男性陣は退出してもらった。
「これが今回の品になります、姉さま」
ティアナはそう言って奇麗な箱をアテンザ様の前に出す。
アテンザ様はその箱のふたを開けて中身を取り出す。
「ほんと、私もいち早く試してみたかったのですけどね、残念です。しかし、これは相当良いものらしく貴婦人の間ではもっと欲しいと言って注文が殺到しています。これの増産は出来るのですか?」
「残念ながら今はまだ出来ません。ゆくゆくは増産を考えていますが材料となる絹の生産が間に合っていません」
そうですかと言いながらアテンザ様は数種類の下着を並べてみる。
「日常に使うものはもちろん、特別な時に使う下着も人気が出ています。こちらの数を少し増やしてもらえますか?」
「それなら可能です、素材の使用量はそれが一番少ないので数は出来るでしょう。しかし作り込みが難しいので時間がかかります。」
アテンザ様はあの夜用の下着を両手で持ち上げながらティアナを見る。
「ティアナがこれを穿いていたなら‥‥‥ はぁはぁ、た、たまりませんわぁ!!」
ティアナは慌ててその下着をひったくる。
そして興奮し始めたアテンザ様をなだめる。
「姉さま! どうどうっ!! おなかの赤ちゃん! 落ち着いてください!!」
言われてアテンザ様はよだれを拭き取り姿勢を正す。
「んんっ、ごめんなさい。それで構わないので引き続き下着の生産をお願いします」
シェルがあたしをつつき念話で語りかけてくる。
『何あれ? やばくない??』
『平常運転ですわ、あれが姉、アテンザ様ですわ! 私の敵ですわ!!』
言い切るあたしにあきれ顔のシェル。
『ま、いつも通りねあなたなたちは。とにかくいい子を産んでもらわないとね。一応ガーベルの子孫なのだから』
シコちゃんに言われて遠いけどあたしもこの赤ちゃんと血がつながっていると思うとなんとなくうれしくなってくる。
生まれたらまた必ず来ようとあたしは思うのだった。
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