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エルハイミ-おっさんが異世界転生して美少女に!?-  作者: さいとう みさき
第八章
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第八章8-6直談判

おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。

異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。


あたしは認めないんだからねっですわ!!(エルハイミ談)


 8-6直談判



 ホリゾンの聖騎士団は城壁を破壊するために策を練ったがあたしの魔法であっさりと流されてしまった。

 見たところ増援はまだ来ていないようだ。



 「エルハイミ殿、あの魔法はいいのだが湖が出来てしまっては左右に戦力を分けるしかなくなってしまう。数ではエスティマ様の軍が十万と応援に来てくれているがそれ以上がホリゾン側に来てしまうと流石に戦力を分けなばならない。できればあの魔法はひかえてもらいたいのだが」



 ゾナーにそう言われてしまうあたし。

 小さい声で「わかりましたわ」とだけ言っておく。

 結局あの後かなり深く掘られた地面は雨水とたまたま湧き出した水のせいで完全に湖となってしまった。


 

 「エルハイミ殿のおかげでこちらは無傷なのだからもう良いではないか?」


 「それに関しましては兵を代表しましてお礼申し上げます」


 エスティマ様の横槍にゾナーはあたしに向かって頭を下げる。

 あたしは慌てて頭を上げるよう言う。



 今は軍事会議中だ。



 ホリゾンもいろいろと手を考えてまだまだ攻めてきそうだ。

 初戦、二戦目とこちらは無傷。

 一方あちらは相当な被害が出ているはず。

 それなのに引かないところを見ると既に増援を頼んでいるのだろう。

 増援はたぶん初回の戦闘を参考にしているからかなりの数が来るのではないだろうか?

 そんなわけで軍事会議が開かれる事となった。



 「そもそもこう言った問題が有るだろうとゴーレムを使い二十メートル級の超高層城壁を立てておいたのだからこちらから打って出る必要はないでしょう。エルハイミ殿や我が主が魔法で出鼻をくじき、ショーゴ殿やシェル殿が遠方から攻撃、漏れ出た兵に対しても弓兵やマシンドール部隊が投げる岩で対処できます」


 ゾナーが現状を再確認する。


 「更に投石器や城壁破壊兵器も射程に入る前にエルハイミ殿のおかげで撃退できております。偵察部隊の報告ではあちらの被害はかなり大きいようです」


 そこまで言ってゾナーはこの場にいるあたしたちの顔を見る。



 「と、ここまでが現状の確認と報告だが、俺がホリゾンならキメラ部隊をそろそろ投入する頃だ。それと主から聞いたブラックマシンドールの話が本当ならそれもそろそろ出てくるだろう。あちらも魔晶石核の開発には成功したみたいだからな?」



 いきなり砕けた口調に戻って個人的な意見を言い始めるゾナー。


 ゾナーの話だと帝都からなら一月くらいで増援の軍隊が来るだろうとの事。

 もしそれより機動力のあるキメラ部隊なら半月ほどらしい。


 あたしはふとティアナを見る。

 ティアナはずっと額におこの血管を浮かび上がらせている。


 それもそのはず。

 あたしはエスティマ様との事についてパパンやママンにメッセンジャーで問い詰めた。

 しかし実家のユーベルトとティナの町の間に有る風のメッセンジャーは簡易版なので三十秒しかメッセージのやり取りしかできない。

 何度メッセージを送っても未読表示され逃げ回っているのが感じ取られる。



 おのれ、パパン、ママン!

 娘に一言も相談無く婚約の了承をするなんて許せない!!



 うっ憤を晴らすかのように昨日の夜はティアナに愛してもらったけど、それでも苛立ちはあたしもティアナも消えない。


 軍事会議もほとんどが籠城する方針で固まったと言っても、ガレント側からの補給線が立たれているわけでは無いし、初戦の事も有って町は落ち着いている。


 と言うか、二回目の強襲もあっさり勝ってしまった為に住民は平常に戻ったりしている。

 良いのかそんなに緊張感が欠けて!?



 「とにかくあれだけのダメージを食らってなお引かないのは聖騎士団のメンツの問題でしょう。我々ガレント側から攻撃が無いとみているようであちらも長期戦に備えて森の中に砦を築き始めているとの報告も上がっています。早くて半月後、遅くて一ヵ月後が本気の攻撃になるでしょう」



 地図に砦が築かれ始めているという場所にピシッと指示棒で指すゾナー。

 メテオで投石器を壊した場所より更に二キロくらい、ほとんどジルたちの村があった場所の近くに砦を作っているようだ。


 「そうするとこちらの方からは打って出ないというのだな?」


 エスティマ様のその疑問にゾナーはすぐに答えた。


 「籠城戦を主体にする方が良いと思います。前に出れば我々の城壁が撤退を鈍らせます。捨て駒に兵をするつもりもありません」


 エスティマ様は「ふむ」とだけ言ってそれ以上の発言はしなかった。



 あたしは今までの情報をもとにひそかにティアナと話をする。



 「ティアナ、シコちゃんを預けますので私に三日ほど時間をいただけないでしょうか? お父様を捕まえて婚約の話を無かった事にしてもらいますわ!」


 「本当!? それだったらいくらでも協力するわ! 私とシコちゃんがいればホリゾンなんかちょちょいのちょいよ!!」


 『まあ、ティアナがいれば何とかなるでしょうね。エルハイミほどではないけどティアナの魔力も相当なものだからね。魔法のほうはあたしがサポートするわ』


 三人でひそひそ話をする。


 『シェル、あなたはティナの町の守りをお願いね! 私はユーベルトの実家に一度戻りますわ!!』


 久しぶりにシェルに念話する。


 『うわ、びっくりした! いきなり念話が入るのだもの!! 何? 実家に帰ってどうするのよ?』

 

 『お父様とお母様を捕まえてエスティマ様との婚約を無かった事にしてもらいます!! 絶対に捕まえてやるんですからですわ!!』


 あたしの苛立ちが伝わったのかシェルは『はいはい、行ってらっしゃい、バティックとカルロスによろしく伝えておいてね~』なんて軽く言ってくる。




 軍事会議も終わりそうなのでティアナに小声で言ってあたしはさっそくユーベルトに戻る準備をするのであった。



  

 * * * * * 



 「主よ、俺はついて行くからな?」


 そう言ってこっそりゲートに入ろうとするあたしにショーゴさんはいきなり後ろから声をかけてくる!?


 「うぴゅあぁっ!! ショ、ショーゴさん!?」


 「主は馬に乗れないだろう、俺が早馬に乗せる。急ぐのだろう?」



 うーん、すべてお見通しか。

 確かに王城から実家へは早馬があれば一日かからない。

 あたしは未だに馬に乗れないので大助かりだけど‥‥‥



 「ここの守りはどうするのですの?」


 「ティアナ殿下から言われた、主を手助けしてくれとな。シェル殿もここの守りは任せろと言っていた」


 あたしはため息をついた。

 ここまでみんなが協力してくれるのだ、来るなと言ってもショーゴさんならついて来るだろうな。

 仕方ない。


 「わかりましたわ、では急ぎましょうですわ!」


 そう言ってあたしとショーゴさんはゲートをくぐったのだった。



 ◇ ◇ ◇



 「ただいま戻りましたわ! お父様は何処ですの!? 今はお屋敷にいるのは分かっていましてよ!!」



 あたしの殴り込みにメイドたちは驚いていた。

 

 「エルハイミ様!? 一体どうして!?」


 「エルザさん、お父様は何処ですの!?」


 「旦那様は今書斎におりますが‥‥‥ あ、エルハイミ様!?」


 聞くや否やパパンがもう逃げられない様にすぐさま書斎に向かうあたし。

 扉まで行くと何やら中が騒がしい様だ?


 あたしはそれもお構いなしにいきなり扉を開けて中に入る!



 「お父様! お話が有りますわ!! エスティマ様との婚約、無かった事にしてもらいますわよ!!」



 あたしの直談判に中にいた人たちは驚いてこちらを見る。


 「え、エルハイミ?」


 「姉さまっ!?」


 「うわーいっ!姉さまだぁ!」


 「あらあらあら~、エルハイミ、どうしたの??」



 見ると鎧を身に着けたバティックとカルロスがパパンに何か訴えていたようだ!?

 パパンは脂汗を流し始め、二人の弟とママン、そしてあたしを加えた四面楚歌の状況になっている。



 「み、みんな、平和的に話そうじゃないか!?」



 既に逃げ場は無いと判断したパパンはかなりビビりながら両手を上げてそう言う。


 

 えーと、あたしは分かるとして他の三人は何でここにいるのだろうか?



 「二人とも、鎧を着れば戦が出来るというモノではないぞ? フルプレートアーマーなんぞ体力の無い者が着こめば戦場では好いカモだぞ?」


 一足遅れてショーゴさんがあたしの後ろから現れる。

 

 「「先生!!」」


 バティックもカルロスもすぐにショーゴさんの下へ行く。

 

 「元気そうだな? 鍛錬は欠かさずやっているか?」


 「「はいっ!」」

  

 元気に応える二人。



 あたしはパパンに目をやる。

 そして頭の周りに雷をぱちぱちと鳴らしながらにじり寄る。



 「お父様、何故エスティマ様と私が婚約すると了承したのですの? 私はそんな話これっぽっちも聞かされておりませんわよ!?」


 「エ、エルハイミ! ち、父親を脅すもんじゃないぞ!?」


 「それでどういう事ですの!?」



 ばんっ!



 机に両手を叩きつけて顔をパパンに近づける!

 パパンは脂汗を流しながらママンをチラ見するがあたしが視線の間に割って入って邪魔をする!!


 「あ、あ~なんだその、まずはお茶でもどうだ? ササミーがチョコ作ってくれるぞ?」


 「お・と・う・さ・ま!!」


 今度は体中に雷をぱちぱちさせる!


 「わかった! 話すからその物騒な雷をしまえ!!」



 そう言ってやっと降参したパパンは両手を更に上げて降参をした。



 「ホリゾンが攻めて来たと話があった時に丁度エスティマ様は我が屋敷においででな、熱心にお前と夫婦になりたいと言ってきたんだ。しかし戦争が始まる中それどころではないとなったが、何とエスティマ様が直々にティナの町に援軍を引き連れてお前たちを助けると言い出したんだ。そして勝利の暁にはお前との婚約を発表して成人後すぐに娶ると言い出したんだ。私はお前の意志を確認しないで答えるのは難しいと言ったのだが、直接お前を説得すると言ってな。娘が戦場にいるのにすぐには何もできない私だ、せめてエルハイミの安全を頼むとお伝えをしたら『エルハイミ殿の事は私にお任せください! 必ず幸せにして見せます!!』と言ってすぐに発たれてしまったんだよ!!」


 一気に弁明するパパン。



 ほほう~、そうすると『あたしを頼む』じゃなくて、『あたしの安全を頼む』とお願いしたわけね?

 快諾したわけではなく、エスティマ様の早とちりと言う訳ね??



 「そうするとお父様が婚約を了承なさったと言う訳では無いのですね!?」


 「だから落ち着けと言っておるのだ!!」


 「お母様もエスティマ様が孫の顔を見せると言ったので同意したと聞きましたがどういう事ですの?」


 「あらあらあら~、お母様はエスティマ様に『孫の顔は見たいけど、エルハイミを無理矢理に手籠めにしちゃだめよ~』って言ったのだけど? どうもエスティマ様は後ろの方をよく聞いていなかったみたいねぇ~。そう言えばお話の途中ですぐにでも軍を引き連れて救援に行かなくてはぁ~って走って行っちゃったもんねぇ~」


 困り顔で腕組みしているママン。


 そうするとこちらもエスティマ様の早とちり??



 あたしは最後にバティックとカルロスを見る。


 「そうするとあなたたちは何をしているのですの??」


 「それは姉さまをお助けする為ティナの町に行くつもりだったんです!」


 「姉さま、僕もだよ! 先生の言う事聞いて毎日鍛錬してたんだよ?」


 今はショーゴさんにプレートメールを脱がされて軽装に変える様に指導されているところだった。



 「バティックもカルロスもいい加減にしないか!? お前たちはまだ十歳にもなっていないんだぞ!? 戦場に行っても逆に足を引っ張るだけだ!」


 パパンが双子の弟にそう言うが、バティックもカルロスも引かない。


 「しかしお父様、聞けばエスティマ様は十歳にならずして北陸戦争に参加なされたと聞きます!」


 「それは王族総出でエスティマ様は名前だけでも後方支援部隊に参加されたと言う事になっているだけだ! あの時はまだ右も左も分からない三才児だぞ!?」


 「それでも僕たちだって姉さまの為なら戦えます!!」



 うわーっ!

 キュンキュンしちゃうじゃないの、バティック!!

 お姉ちゃんそんなこと言われたら思わず抱きしめたくなっちゃうわよ!?



 「そうだよ、お父様、僕たちだって強くなったんだよ! 姉さまとの約束で姉さまを守れるくらいに強くなるって決めたんだ!!」



 あうっ!

 カルロスまで!!

 あなたたちお姉ちゃんを悶え死にさせる気!?


 弟可愛いなぁ~~~~~~っ!!



 「そこまで言うならこの私を倒してからでなければ認めんぞ!!」


 表面には出ない様に悶えているあたしをよそに、そう言ってパパンはゆらりと立ち上がる。

 

 「表へ出なさい、バティック、カルロス実戦と言うものがどれほど厳しいか教えてやる!!」


 そう言ってパパンは庭先に出ていく。

 バティックもカルロスもそれについて行く。


  

 え?

 マジですか??

 パパンも若い頃は冒険者まがいのことしてそこそこ腕は立つはず!?



 あたしは二人を心配しながら一緒に庭先に出るのであった。

  

 

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― 新着の感想 ―
[一言] その言い訳が本当であれば、何故通信を無視したのかという疑問が残りますね。 純粋に婚約問題だったから良いものの、戦争中である事を考えれば重大な通信であった可能性も高い。それを無視していて致命…
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