第八章8-2聖戦と言う名のもとに
おっさんが異世界に転生して美少女になっちゃうお話です。
異世界で力強く生き抜くためにいろいろと頑張っていくお話です。
ジルたちは絶対に渡さないわよ!!(シェル談)
8-2聖戦と言う名のもとに
偵察部隊とともに戻ってきたゾナーの表情は厳しかった。
「ご苦労様。何とか無事に戻れたわね?」
「主よ、すまんが村の生き残りはこいつ等だけだった、身元は保証する。こいつらを保護してやってくれ」
見ると老人と子供、そしてけがをした女性が二名の計四名がそこにいた。
四人はあたしたちを見ると怯えた表情をする。
ガレント側の人間と接触するのは初めてなのだろう。
「村長! それにアルじゃないか!!」
声のした方を見るとジルがいた。
「ジルか!? よく無事で‥‥‥」
村長と呼ばれた老人はそう言って嬉しそうにする。
「ゾナー、状況は?」
「主よ、最悪だ。あいつら聖騎士団だ。まさかこんな辺境にまで現れるとはな‥‥‥」
ゾナーの話だと聖騎士団とは国教であるジュリ教の教えを広めるための騎士団でかなりの権力を保有する集団らしい。
もともとは教団の守りをする騎士たちだったのがここ数十年で国政にまで手を出し始めそれを是とする皇帝の後押しもありやりたい放題らしい。
事実ゾナーの婚約も教団や聖騎士団が動いていたらしく徐々に取り込まれるはずだった。
「なんでそんなのがこんな所にいるのよ?」
「本来は帝都にいるが聖戦が発動されれば真っ先に戦場を駆け巡る連中だ。ジュリ教の要請が無いのにこんな所をふらつくとは何かあるんだろう。数か月前には偵察部隊やダークエルフまで動いていたしな」
そう言いながら水筒の水を飲む。
それから助け出した村長と呼ばれる人物に話を聞く。
「お前さんが村長か? 俺は元ホリゾン帝国第三皇子ゾナーだ。噂くらいは聞いているだろうが、俺は博打に負けて今やガレント王国のティアナ姫の騎士だ。それで村長、一体何があったんだ?お前さんらの村に聖騎士団が来るなんて?」
ゾナーにそう言われ少し驚いた顔をした村長はひれ伏してからゾナーに話を始める。
「あなた様がゾナー様でしたか、ジルから話は聞いておりました。助けていただきなんとお礼を申し上げればいいのやら」
「おいおい、爺さん顔を上げてくれ。礼には及ばん。それより事情を話してくれ」
ゾナーに言われて村長は顔をあげて話始めた。
事の始まりはジュリ教の神父が村を訪れたのが始まりだったらしい。
彼は辺境のこの村でも気さくに女神ジュリの教えを広めようとしていたらしいがそのイケメンな容貌に村娘を中心に絶大な人気を誇った。
彼はガレント王国でジュリ教が迫害され、ジュリ教が国教であるホリゾンの人間もガレントでは強い迫害を受けると誇張し近年近くに出来たティナの町はいずれこのホリゾンに攻め入る為の砦だと言い広めた。
もともと閉鎖的な村の純粋な人たちだ、神父の話を真に受けてしまった。
そんなところへジルが元気に帰ってきてティナの町についての実情を話したものだから大騒ぎになった。
その神父を支持する者と実際に帰ってきたジルの話を支持する者に村は見事に別れてしまった。
村はもめたらしいがもともと辺境の事も有りホリゾン帝国と言う国への帰属意識が弱かった。
ジルはまたティナの町に行くつもりだというその言葉に彼の友人や一部の村人が賛同して更に村は二分割化が進んだ。
ここへきて神父がいきなり姿を消し、代わりに聖騎士団がやってきて今回の事件が起こった。
「ジル、その神父の名前ってわかるかしら?」
シェルは村長の話が終わってからジルに聞く。
「確か、ヨハス? ヨハネだっけ??」
「ヨハネス神父様です」
ケガの治療が終わった村娘の一人がはっきりとそう言う。
「ヨハネス神父ですってぇっ!!!?」
「私も途中からまさかと思いましたが、ヨハネス神父が来ているのですわね?」
あたしもティアナもその名前を聞いて難しい顔をしてしまう。
「主よ、そのヨハネス神父とやらは何者だ?」
「ジュメルよ! まさかあの神父がこんなところに来ているなんて!!」
一体何が目的だ?
こんな辺境の自国の村を襲ってどんな得があるというのだ?
でもあの神父の事、きっと何か企んでいるはず。
「とにかくそのヨハネス神父とやらが問題なんだな? ジュリ教の神父でいながらジュメルと言う事か?」
ゾナーは腕組みをしながらうなる。
「そうよ、ジュメルよ。しかも古代魔法王国のアイテムを操りジュメルの女幹部を従える。厄介な相手よ」
ティアナは苦々しくそう言う。
一刻ではあれあたしたちはヨハネス神父と一緒にいた。
非常に人あたりの良い優しい神父と思っていたのに実はジュメルだった。
しかもあたしたちにジュメルに来いとまで言い放った相手だ。
あたしたちが話しているそんなところへ伝令の兵が来た。
「申し上げます! 先ほど矢文がが撃ち込まれました! ゾナー様これです!」
そう言ってまだ矢に文が付いたままの状態でゾナーに手渡す。
ゾナーはすぐにその矢文を解き読み始める。
そいて大きくため息をついてから手紙をそのままティアナに渡す。
「すまんが主、俺はこんな条件は飲めんぞ。たとえ国を捨てた身でもこんな理由で民を苦しめるわけにはいかん!」
ティアナは渡された文を読む。
『貴国に逃げ込んだ異端者を即刻引き渡しせよ。本件は我が国の問題であり異端者を保護するならばそちらも異端の者として神の裁きを受けてもらう。引き渡し期限は明日正午。」
「なによこれっ!? 一方的な!!」
「私たちを異端の者として裁くと言うのですの?」
最後にシェルがその文を読んでからあたしたちに問う。
「ティアナ、エルハイミ、ジルたちを引き渡さないわよね?」
「「当り前よ(ですわ)!!」」
あたしとティアナは即答する。
「ゾナー、聖騎士団とやらがどれほどのものか知らないけど、絶対にジルたちを渡してはダメ! 力ずくで来るなら返り討ちにしてあげなさい!!」
「おうとも、主よ!! いいかお前ら戦の準備だ! あいつらをこのティナの町に一歩も入れるんじゃないぞ!!」
『おおうっっ!!』
ここにいるすべての衛兵が声をそろえる。
来るなら来なさい!
あたしたちは絶対にジルたちを渡さないんだからね!!
あたしたちはホリゾンの森を見るのだった。
評価、ブックマーク、ご意見、ご感想いただけますと励みになります。
誤字、脱字ありましたらご指摘いただけますようお願いいたします。




