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戦士

クイーン視点

 私は死神に攻撃を仕掛けながらも、他のPTメンバーの動向をしっかりと目で追う。


 アクアニちゃんは私の期待に応える一歩手前までいったが、ゆっこちゃんの静止によって少し慎重になってしまった。別にそれは悪い事じゃない。ただ私の目的からは逸れる。


 横を見ると盾の二人をサポートをしているマルタちゃん、さとりちゃん、ミルナーがいる。その盾を張っているのがシウスちゃんにレール。そしてヒーラーで唯一生き残ったトリルちゃん。


 ヒーラーが一人しかいないの状況は高火力モンスターとの戦闘ではかなりキツイが、ヒーラーだけでは間に合わない回復をサポーターが補っているのでなんとか死神の攻撃を耐えている。


 しかしその均衡もいよいよ崩れる。

 死神の口から放出された毒霧が辺りに飛散して視界が奪われる。

 辺り一面が緑色の毒霧で覆われて状況がわからないのだ。


「た、助けッ……うわぁぁぁ!」


(……誰かがやられた? 今の声は……たぶんミルナー)


「ミルナーに何をした!!」

 見えぬ霧の中でその声を聞いたミサンガは、自分のPTの仲間であるミルナーを救い出そうと、死神がいるであろう方向へと魔法を撃ち込み、巨大な爆炎と共に周囲が煙に包まれた。


「けほっ、こほっ……ミサンガさん、これじゃ煙で余計に視界が……きゃぁ!」

 煙の中から突如出てきた何かがシウスちゃん目掛けて向かっていき、視界を奪われていたシウスちゃんは不意打ちを食らう形になって大きくノックバックする。


「シウス!」

 吹き飛ばされたシウスちゃんを見て、トリルちゃんは即座に回復を行う。


「あ、ありがとうトリル。一体何が……」

「シウスを突き飛ばしたあの大鎌って……もしかしたら」


 煙の中から現る人影、そしてシウスちゃんを突き飛ばした大鎌。

 それは紛れもなく、先程救助を求めていたミルナーだった。


「ミルナー……なんで!」

 ミサンガが思わずそう漏らす。

 おそらく死神が毒霧で視界を奪った隙に何かをされ、操られているのだ。


 こちらの戦力が一人減り、相手の戦力が一人増えた。

 蘇生は不可能、戦闘不能即ち残機の減少。

 危機的状況……さぁ、どうするの?




「ここは私と先輩にまかせてください!」

 まず動いたのはアクアニちゃんとゆっこちゃん。

 相手が増えたとはいえ、ギリギリの状況で耐えていた盾をミルナー側に割くわけにはいかない。

 よって耐久に影響のない者が操られているミルナーを相手にしなくてはならない。

 二人は……いえ、おそらくゆっこちゃんが逸早くその事に気付いてアクアニちゃんと一緒に対応したのね。


 それを見たシウスちゃんやトリルちゃんは再び死神を引き受けて、現状維持を選択する。

 しかし死神の攻撃は激しさを増していき、ついにヘイトコントロールが乱れ始めた。


 死神が標的にしたのはヒーラーであるトリルちゃん。 

 右から鋭い槍のような死神の足がトリルちゃん目掛けて向かっていく。


「私がターゲティングされてる……まずい!」

 トリルちゃんはその一撃をサイドステップで避ける。

 更に今度は逆から鋭い一撃が飛んできた。


「直撃したら……即死……!」

 反応が少し遅れるが、トリルちゃんはなんとかしゃがんで回避する。

 しかし死神の猛攻は収まらず、しゃがんで隙の出来たトリルちゃんに鋭い足を突き刺そうとする。

 その攻撃に対してトリルちゃんはバックアップを選択するが、その判断がミスだった。


「しまった……死神のリーチが思ってよりも長い……やられる……!」

 死神の脚は見た目よりももう一段階伸びるらしく、間合いを読み間違えたトリルちゃんに死神の鋭い一撃が迫る。


「シウス……ごめん」

 トリルちゃんは目を閉じ、死を覚悟する。


「トリル……ダメ!!!」

 死神の一撃を食らえばトリルちゃんは確実に一撃死……しかし様子がおかしい。


 ――きた!


 瞬間、そう思った。

 死神に貫かれたのはトリルちゃんではなく、シウスちゃん。

 何らかの方法でシウスちゃんとトリルちゃんの立ち位置を入れ替えたように見える。そして私の知る限り、そのような回避方法は存在しない。だからこそ、震えた。


「【トリック・オブ・プロテクト】……私が……?」


 本当に私がやったのか、と驚いているのは回避したトリルちゃんではなく、シウスちゃんだった。

 トリルちゃんを死なせたくない想いから発現したのだ。そう――――


「Nos.……ね」

「私が……Nos.に……って、うわぁ!」


 呑気に会話をしている場合ではないと言っているかのように死神が怒涛の連撃を仕掛けてくる。そして私は応戦しながら会話を続ける。


「不思議な事じゃないわよ、それだけあなたの想いが強いということ」

「なんなんですか、私の想いって!」

「目の前のいる人を助けたいのか、それともトリルちゃんを助けたいのか、はたまた有名になりたい一心で発現したのか、それはアナタ自身にしかわからないはずよ」


 私の言葉を聞いたシウスちゃんは死神の攻撃を受けながらも考え込みむ。

 何の想いに発現したのか、どうやら自分自身にもわからないようだ。

 トリルちゃんが「さっきはありがとう」と回復魔法をかけながらシウスちゃんに声をかけ、シウスちゃんは「心配させないでよ!」とトリルちゃんを叱咤する。


 その表情を見た私は『考えるまでもなくトリルちゃんのためでしょ』と言いたくなる衝動をぐっと堪える。


 ともあれ、これでNos.がまた一人増えた。

 さて、後何人目覚めてくれるのかしら。

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