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クールでとっつきにくそうな公爵令息と婚約しましたので様子を見ようと思います  作者: はるくうきなこ


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35俺の唯一(ヴィント視点)最終話


 俺は王宮の応接室から引きずられるように廊下に連れ出されすぐに人間の姿に戻った。

 鼻の前で出された液体は俺に取ったらものすごく嫌な匂いのペパーミントだ。

 思わず意識を持って行かれた隙だったとはいえ。

 いや、違う。そんな理由であの場所から去ったわけじゃない。

 アマリエッタからあまりに誤解を受けていて俺はショックだったんだ。


 それにしてもお婆様‥

 何もあそこまで言わなくたっていいじゃないか!

 俺はお婆様にふてくされたように文句を言う。

 「お婆様、俺はアマリエッタと結婚したいんだ。他に望む相手はいないんだからな!どうするんだよ?アマリエッタは完全に誤解したみたいだ。今から行ってもう一度話をさせてくれ!」

 「ヴィント!いい加減にしなさい。あなたはこの国取って唯一の古の血を引いている存在なのよ。それがどれほどすごい事かわかってないのね。まったく。あんな女など履いて捨てるほどいるのよ。いいから、あなたにはもっといい人を見つけてあげるから」

 「でも、俺は‥「いい加減になさい!小さいときからあなたの世話がどれだけ大変だったか‥それを忘れたわけじゃないでしょ!」

 お婆様は引き返そうとする俺を簡単に引き留める。

 何故なら、お婆様は俺にとって命の恩人と言えるほどの人だからだ。

 俺は4歳の頃初めて狼として覚醒した。

 俺はハルオンにかかって高熱を出したらしい。そしてけいれん発作を起こし狼に変身をした。

 初めてそんな姿になった俺は恐くて怯えた。

 両親も驚いておろおろするばかり。そんな中元王女で王家の歴史に詳しかったお婆様は古の血をひくものが獣人になる事を知っていた。

 お婆様は俺に優しく安心させるように抱きしめ話をしてくれた。

 まだ、小さかった俺には詳しい事がよくわからなかったがお婆様のおかげで随分安心出来た。

 それからは身体の変化が起こるたびにお婆様は色々な事を教えてくれた。

 人間に戻るためにはどうすればいいかとか、もし見つかったらどうすればいいか。

 そして狼になった時にどうすればいいか。など対処方法を教えてくれた。

 そのおかげでこうやって無事に大人になれたのだからお婆様には計り知れない恩がある。

 でも、だからと言ってアマリエッタと引き裂かれる事は我慢ならない。

 何とかしてお婆様を説得してアマリエッタに気持ちを伝えたいんだ。

 俺が本当にアマリエッタを愛してるって言えばきっと彼女だって‥‥

 廊下をしょぼしょぼ歩きながら。

 何度も後ろを振り返りながら。


 何とか気持ちを整理しようと思い直そうとするもまたさっきあった事を思い出していた。

 あの時、エディオ殿下がアマリエッタに婚約を迫った時には肝がキュッと縮んだ。

 でも、アマリエッタははっきりと殿下の申し出を断ってくれた。

 だから俺は婚約を解消しなくてもいいと思ってしまった。

 でも、そうじゃなかった。

 アマリエッタからのあの言葉。あんまりだ。誤解なんだと言いたかったけどあまりにショックが大きすぎて心がそれについて行けず変身してしまうなんて‥

 おまけに彼女があんなに驚くから‥

 俺は狼の姿じゃ何も言えなかったし。いや、態度では何とか気持ちを伝えようとはしたんだ。

 そしたらお婆様があんな事を言うから。

 どうしてくれるんだ?俺はアマリエッタを愛してるんだぞ!

 俺の唯一なのに‥


 今度は幼いころ初めてアマリエッタに出会ってからずっとずっと思い出していた。

 あれからあの子にまた会いたいとずっと思っていた。

 そして学園でアマリエッタに再会できた時の喜びときたら。

 俺は天にも昇る気持ちだった。

 なのに彼女はすでにエディオ殿下の婚約者候補になっていて。

 俺は近づきたいけど近づけない絶対的な距離があってそのジレンマからいつもアマリエッタへの態度は素っ気なくなった。

 だってそうだろう?好きな女の子は王子の婚約者になるかもしれない存在で手を出せない状況で、俺は手を伸ばしたくても伸ばせないんだ。

 もやもやした気持ちで毎日が過ぎて行った。

 3年生になってエディオ殿下の婚約者がゾラ様に決まってアマリエッタが俺の婚約者になって時はもう、ほんと夢じゃないかって嬉しかった。

 でも、長年素っ気ない態度を取ってきたせいで、なんだかいきなり親しみを出すのに戸惑われた。

 明らかに婚約者になったんだからって態度を取るのもどうかと。

 アントールやタロイはいいよな。

 元々お互いが好きだってわかってたんだから。

 俺は微妙な関係になっていたからもう、俺はすぐにでもアマリエッタと仲良くなりたかったのに。

 毎日帰るとひとり反省会だ。

 昼食の時アマリエッタの好きなものを取り分けて一緒に分け合って食べたかったとか。

 帰りに雨が降っていて馬車に乗るまで抱き上げて連れて行ければよかったとか。

 それだけならまだしも他の男子生徒と楽しそうに話をしている所を見たら、昼食後中庭の陰に連れてどうしてあんなことをしたのかって問い詰めて何度もキスして俺のことしか考えれないようにしてやりたいとか。

 ほとんど変態の域に達してる。

 妄想はそれだけではとどまらなかった。

 家に帰れば一人で色々な事を考えた。

 制服の下はどうなってるんだ?教えろよって聞くんだ。

 ぐっとベッドに押し倒して唇を奪って彼女の首筋から胸元に舌を這わせる。

 彼女からはかぐわしいあまやかな香りがして俺はその香りを胸いっぱいに吸い込むんだ。

 そして彼女の胸をゆっくり、ああ、ものすごくゆっくり恐がらせないようにゆっくりとさらけ出してその可愛らしい桃色を‥

 彼女の蕩けるような匂いを鼻腔の奥に吸い込んでそのかぐわしい香りにゾクゾクしてみたい。

 そっと這わせた肌は俺の指に吸い付いて離れなくて。

 そしてドレスの中に手を入れて。

 それから‥ゆっくりと。クソッ!想像しただけで俺はもう‥

 俺は我慢できずに。

 俺は完全におかしくなりそうだった。

 いや完全に変態だろう。

 まったく何を思い出してるんだ!!


 

 王宮を後にしてがっくりとしょぼくれて屋敷に帰った。

 もう一度彼女に会って話をしなければと心を奮い立たせようとしていた時だった。

 鼻腔に感じた微かなアマリエッタの匂い。これが彼女が狼になった時の匂いじゃ?

 胸がざわついた。

 それがいい事なのか悪い事なのかの判断も出来ないまま俺は屋敷を飛び出していた。

 とにかくアマリエッタの所に行きたかった。

 彼女が求めてくれなくてもいい、ただ近くで無事かどうかを確かめるだけでもいいと。

 魂がもうどうしようもないほどアマリエッタを求めていた。


 彼女の家に行くとアマリエッタは狼になって震えていた。

 不安そうに怯えていて小さなロニオがそばでアマリエッタを抱きかかえていて。

 来ないでって拒否られたがロニオが事情を話してくれた。

 アマリエッタはロニオを守ろうとして変身してしまったらしい。

 動揺している彼女やロニオを安心させようと俺も狼に変身した。

 怯えているアマリエッタの狼姿にどうしようもなく胸がざわめき、こんな時にそんな事を思う自分に怒りを覚えギシリと自分の口の中を噛んだ。

 血の味が口に広がって痛みでやっと気持ちを切り替える。

 そして彼女を人間に戻すためにペパーミントを探しに部屋を出た。

 たいていの家のキッチンか庭にはペパーミントがあるのが一般常識だ。

 狼に取ったら嫌な薬草だが、人間に取ったら刺激的なスパイスになるらしいこの植物。

 まあ、そのおかげで何かあった時には重宝もするんだが‥

 思った通りアマリエッタの家の庭にペパーミントがあった。

 俺は鼻がひん曲がりそうになったけど、そんなのへっちゃらだ。

 アマリエッタの為なんだ。どんな事でもする。

 そっと彼女の鼻にそれを近づけそして彼女を人の姿に戻すことに成功した。


 俺はどうしようもないほど気持ちが弱っていてこんな時なのに彼女と初めて会った時の事を話してしまった。

 するとアマリエッタはあの時のことを思い出したと言った。 

 マジか?ほんとに?

 俺は天にも昇るほどうれしかった。

 でも、彼女の気持ちは俺にはないのかもって思った。

 だって、婚約を解消したいって言ったんだから。

 でも、そんなの誤解だったってすぐにわかった。

 アマリエッタが不安そうに聞いた。

 「今も結婚したいって思ってる?」

 「当たり前だろ!俺にはお前しかいない。もし、結婚出来ないなら一生独身でいようと思っていた。俺は諜報機関で働いているし危険な仕事だから公爵家を継ぐのはリビアンにするつもりだった」

 「それって私が好きって事?」

 「当然だ!好きに決まってる。ずっとずっとあの日会った時からアマリエッタに心を奪われたんだ。もう離さないからな。覚悟しろよ!」

 はっきり言うともう我慢できなくて唇を奪った。

 貪るようなキスをしてやっと唇を離した。

 アマリエッタの美しい銀色の瞳が潤んでて眦から宝石のような涙が零れ落ちた

 俺はその宝石のような雫を指で受け止めた。

 真っ直ぐに俺を見つめる眼差し。

 「ヴィント、私もあなたを愛してる。もう二度と離さないで‥」

 「ツッ!ああ、二度と離すもんか。もう絶対逃がさないからな」

 俺はまたアマリエッタの唇を奪った。



 アマリエッタは狼だった事でお婆様は手のひらを返した。

 俺達の婚約はそのままに結婚は半年後になった。

 エディオ殿下とゾラ様の婚約はもちろん破棄となり、殿下はしばらく周辺諸国の外遊へと旅立った。

 ゾラ様はバーラ国に連れ戻され厳しく教育を受け直すらしい。

 エディオ殿下は傷心旅行っていう奴かも知れないがアマリエッタは最初からそんな気はなかったんだから、まあエディオ殿下には潔く諦めてもらってよかったと思う。

 

 あれから俺達はふたりきりになると狼になって野や森を駆け巡ったりじゃれ合ったりするようになった。

 古の血を引いているせいかふたりの絆は日々強まり、古の獣人が番と言っていた求めてやまない存在になっていると思う。

 俺達は互いを思いやり愛しみ助け愛する存在だと確信している。

 アマリエッタも同じ気持ちだとわかるんだ。

 そしてこんな存在に出会えた奇跡に感謝している。

 俺は生涯アマリエッタを愛し守りるとここに誓う。



                     ~おわり~


 拙い話に最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。はなまる



 

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