17彼の屋敷に行きます2
豪華な客間に通されるとヴィントにソファーに座るように言われロニオと一緒に座った。
ふかふかのソファーに足元の絨毯はヒールが沈み込むほどふかふかだ。
そこにお婆様が挨拶に見えた。
私は急いでロニオと一緒に立ちあがった。
「始めましてヴィントの祖母のマリー・サルバートよ。あなたがアマリエッタさんね。ふたりにはもう母がいないから私が母親代わりなの。どうぞよろしくね」
「こちらこそ。マリエッタ・ロータネクと申します。それから弟のロニオ・ロータネクです。どうぞよろしくお願いします」
「ええ、リビアンと同じ年と聞いてるわ。ロニオこれから仲良くしましょうね」
マリー様はロニオの前にしゃがみ込んでロニオに挨拶をしてくれた。
「ロニオ・ロータネクと申します。姉がお世話になります。どうか私ともどもよろしくお願いします」
ロニオは完璧な挨拶をした。
「まあ、すごいわ。お姉さんのことまできちんとご挨拶できるなんて‥リビアンも見習わなくちゃいけませんね。さあ、今日はゆっくりして行ってね」
マリー様は気さくに声を掛けてくれた。
さすが元王女様だわ。
年をとってもそのお顔はとても神々しく金色の髪は艶やかに結い上げてあり紺碧色の瞳は皺のある目尻の中からもくっきりと存在をあらわにしている。
緊張するが優しい雰囲気に安心する。
どう呼べばいいんだろう?とっさに頭が真っ白になりそうになるがしっかりしなければと声を出す。
「あの‥ヴィント様のお婆様とお呼びしてもよろしいでしょうか?「オホホ‥まあ、アマリエッタさん。私の事はマリーと呼んで頂戴!」
そう断言してもらったので遠慮なく。
「は、はい、マリー様。実は領地で取れた果物で作ったジャムをお持ちしてまして‥いえ、もし良ければ‥その‥」
「まあ、ジャムは大好物よ。早速いただくわ。ありがとう。でも、アマリエッタその爪はねぇ‥」
マリー様はジャムをそばにいた侍女に預けると私のドレスや爪に視線を這わす。
私はとっさにぎゅっと手を丸めてネイルを塗った爪を隠す。
「‥‥」
「まあ、新興貴族でお母様も亡くなったのよね。きちんとした躾も行き届いていなくても仕方がないかもしれないわね。でも、これからはそう言うわけには行きませんよ。あなたにはヴィントの婚約者としての自覚を持っていただかないと」
「申し訳ありません」
「まず、ネイルはもっと色味の薄い色にしなさい。ドレスはまあ一応合格ラインかしら‥それにお化粧も‥」
「はい、気をつけます」
私は一気にいたたまれない気持ちになりながらヴィントをこっそり見る。
どうせあなたも同じことを思ってたんでしょうね。
ああ、もう帰りたい。
何とか仲良く出来ればって気持ちを切り替えようと思ったのに。
私の心は荒んでいく。
そこにヴィントが口をはさんだ。
「お婆様、アマリエッタは今日初めてここに来たんですよ。それに婚約したのはほぼ王命。今のは言い過ぎです」
えっ?私はヴィントを見つめた。
彼はお婆様に呆れたような顔をして文句を言っているようだが。
「ヴィント。こういうことは最初にきちんとしておくべきなのよ。彼女の振る舞いはサルバート公爵家の沽券にかかわる事なのよ。あなたからもきちんと話をしなさいと言ったでしょ!」
お婆様も負けてはいない。
「お婆様それはよくわかっていますから、後は僕たちで話をさせて下さい」
ヴィントが庇ってくれたがほとんど効果はないような?
ああ、この家はお婆様が実権を握ってるんだわ。
お母様は亡くなられて実質公爵家夫人手の采配を振るっているのね。
はぁぁ~、こんな所に嫁がなきゃならないわけ?
先が思いやられそう‥
「まあ、いいわ。我が家のしきたりをしっかり教えて差し上げなさい」
マリー様は捨て台詞のようにそう言うと早々に退室した。
何よ。ものすごく感じ悪い!!
それにヴィント様も当てにはならないような気が‥
うわっ、最悪じゃない。




