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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第6章_夏空の下
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15話《重なり合う肌》

「んっ……ぁ、はぁ……」


 額に感じるひんやりとした感覚。耳にわずかに聴こえる物音。遠くにあった意識が徐々に覚醒し始め、閉ざされていたルミの瞳がゆっくりと開かれていく。


「あっ、ルミ起きた?」

「か、れん……さん」

「ちょうどご飯できたよ。起きられる?」


 小さく首をかしげる歌恋かれんに、ルミは横になったまま首を左右に振った。


「じゃあそのままで。食べにくいものじゃないし、少しずつなら大丈夫でしょ」

「何、作ったんですか?」

「ミルク粥だよ。私が風邪引いた時、よくお母さんが食べさせてくれたの」


 スプーンで一口分をすくい上げ、軽く息を吹きかけると、歌恋はそのままルミの口元へと持っていく。


「あーん」

「あ……んっ」


 口を少しだけ開けて、差し出されたミルク粥をゆっくりと食べる。ゴクリと飲み込んだ後、ルミはもっと欲しいというように、小さく口を開いた。


「美味しかった?」


 返事は返さず、こくこくと首を上下に振って頷くルミ。それを見て、歌恋は満足そうな笑みを浮かべて、またすくって食べさせた。

 通常の数倍の時間をかけて、ルミは無事に食事を完了させた。吐息を一度漏らし、天井を見ながら満足そうに彼女は笑みを浮かべる。そんな様子を見て、歌恋も思わず笑みを浮かべた。


「ご満悦だね。気にいってもらえて嬉しいよ」


「……ご飯も美味しかったですけど、歌恋さんがあーんしてくれたのが嬉しかったです」

「かわゆいこと言ってくれるな」


 優しくルミの頭を撫でてあげ、歌恋は食器を持って再び立ち上がる。


「どこ、行くんですか?」

「片付けしてくる」

「嫌です」


 ぎゅっと服の裾を握りしめ、瞳をわずかに涙で濡らし、どこか不安そうな表情をルミは浮かべていた。


「一人に、しないでください」


 少しだけ震えた声。必死に引き止めようと強く握りしめる手のひら。風邪を引いていれば、不安になったり弱気になってしまう。ルミもきっとそういう状況なのだろう。だけど、好意を寄せている相手、恋人が、そんな言葉を投げかけ、自分を引き止めようとしていることに、ときめかない人間などいるのだろうか。

 歌恋は頭の片隅であることを思い出した。前にたまたま観たアニメか映画でこんな言葉があった。



『風邪で弱っている子はいつもの三割増しで可愛い』



「はぁ……」

「歌恋、さん……」


 振り返り、歌恋はそのままベットに横になるルミに覆いかぶさった。

 不安げに見つめてくるルミ。すると、歌恋がゆっくりと顔を近づけてきて、ルミは反射的に目を閉じてしまう。


「ダメ、先輩……風邪移っちゃう」


 フルフルと震えながらそう口するが、期待していないわけではなかった。唇に感じるであろう柔らかい感触を待っていたが、それは頬で起こった。


「さすがに、病人を襲うわけにはいかないよ」

「へ?」


 耳元でそう囁き、歌恋はそのままルミの横に寝転がると、ぎゅっと手を握った。


「風邪、引いちゃいますよ」

「大丈夫、私ここ六年ぐらい風邪引いてないし。それに、ルミからの風邪なら大歓迎」


ニコッと笑みを浮かべ、歌恋はそのままルミを抱き寄せて優しく頭を撫でてあげた。


「始業式は一緒に登校しよう。もちろん、帰りも」

「……はい」


 互いに目を伏せ、重なり合う体の体温を感じながら、二人は眠りについた。


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