7話《可愛い》
夏の暑さが続く八月。夏休みも終盤になり始め、学生は残り少ない夏休みを友人と、家族と、恋人と共に過ごす。
「どれにしようか」
人で溢れるショッピングモール。その水着売り場にやって来た歌恋とルミ。店内に販売されている水着を歌恋は手に取り、彼女の後ろで恥ずかしそうにしているルミの前に差し出した。
「これとかどう?」
「あ、えっと……も、もう少し露出が少ないのがいいです……」
「えぇー、絶対似合うと思うのに」
「わ、ワンピースタイプが……」
「だーめ」
明日行くプールの水着を選びに来て、せっかくならお互いに選ぼうと、今は歌恋がルミの水着を選んでいるが、ルミは顔を赤くして否定するばかりだった。
「室内だから焼ける心配もないし、大丈夫」
「だ、だって私、先輩みたいにスタイル良くないし……」
両手で自分の胸を押さえながら、そう呟くルミ。その言葉に、顎に手を添えながら歌恋は考える。
「よし、じゃあこれかな」
並べられた多くの水着の中から一つ手にして、そのままルミに渡し、更衣室へと背中を押す。
「え、先輩?」
「はい、着替えておいで」
「い、今ですか?」
「サイズ合わないかもだしね、ちょうど良さそうならそれね」
「で、でもこれ……」
「着替えたら呼んでね」
ほぼ強引に言葉で押し、歌恋は更衣室のカーテンを閉め、中からルミが声をかけるまでは、更衣室近くの水着を眺めていた。
「か、歌恋先輩……」
「着た?」
「は、はい。で、でも……」
カーテンは一向に開かず、その向こうから聞こえる慌てるルミの声。しばしカーテンの前に立っていたが、歌恋はそのまま声もかけずに、躊躇わず、カーテンを開いた。
「ふひゃ!」
「……なんだ、似合ってるじゃん。恥ずかしがることないのに」
ルミが着ているのは、白いオフショルビキニ。ボリュームのある白いフリルに、下のビキニは花柄で可愛らしいデザイン。肩の露出はあるものの、通常のビキニに比べたらやや少なめ。
「は、恥ずかしいですよ……肩と足、すごい出てます」
「水着だから仕方ないよ。サイズはどう?」
「だ、大丈夫です」
「そう。ピンクと迷ったけど、白がよく似合ってる」
特に狙って言ってるつもりはないが、歌恋は素直にルミを褒めちぎっていく。ルミの顔は徐々に真っ赤なリンゴのようになっていき、カーテンを勢いよく閉める。
「着替えます!」
「照れなくてもいいのに」
「もう、先輩のばか」
「着替え終わったら、次は私の選んでね」
返事の声は帰ってこなかった。きっと照れているのだろうと思う歌恋は、じっとルミのいる更衣室のカーテンを見つめ、ゆっくりと右手を口元に持って行く。
さっきまでの表情とは一変し、顔が赤くなり、どこか照れた様子を浮かべていた。




