5話《心揺らす甘い欲望》
「はぁ……」
買い物に行く途中、前を通った公園に、同行中の従弟妹二人が全速力で入って行った。
止めようとも思ったが、少しぐらいならいいかと思って、歌恋は屋根付きの休憩スペースで二人の様子を眺めた。
「かれんちゃーん!」
「おーい」
滑り台の上から、全力で歌恋に向かって手を振る二人。テーブルに肘をつきながら、歌恋は手を振り返した。
父の弟の子供。女の子の方が愛で、男の子の方が恋。二人はよく歌恋に懐いており、会うたびに歌恋の側へとやってくる。
「無邪気だなぁ……」
公園を全力で楽しむ二人を見つめた後、歌恋はテーブルの上に突っ伏した。
暑く、眩しい夏の日差しの中、暑さを凌ぐための日陰空間。どこかでこの感覚を味わった事があるなと、ぼーっとする意識の中で、歌恋は自分の記憶を巡らせた。
「はぁ……」
水族館に入る前に、ルミと二人で、開館されるまで日陰で待機していたことを思い出す。自分が絶対着ないような服装に、ふわふわの髪の毛が、汗で濡れる頬に張りついていた。その時の彼女の姿が、頭の中にはっきりと浮かび、胸が苦しくなる。
「ダメだなぁ……」
「かれんちゃん?」
不意に聞こえた声に思わず体を起こして振り返った。歌恋のすぐそば。腰掛けていたベンチに手をおき、顔を覗き込むように前のめりになっている愛と恋。
「大丈夫?お腹痛いの?」
「具合悪いの?」
不安そうな表情を浮かべる二人。きっと、歌恋の姿を見て怖くなって、急いでやってきたのだろう。
「大丈夫だよ。まだ遊んできていいよ」
「いい。早く用事済ませてお家帰ろ」
「で、お家であそぼ」
歌恋の右手を、二人で握ってにっこりと笑顔を浮かべて彼女を見上げた。
「そうだね。暑いのやだし、早く用事済ませよ」
「あ、さっき出る前に、かれんちゃんママがアイス買っていいって」
「じゃあ買いますか」
「僕、バニラのアイスがいい」
家を出るときと同じく、歌恋を真ん中にして、恋と愛は彼女の手を握る。
道中は二人の学校での話を聞いた。最近の話題や、この前あったこと。そんなたわいもない話。
「かれんちゃん、彼氏できた?」
「はっは。できてたらここには来てないよ」
「いないの?」
「だったら、僕がかれんちゃんの彼氏になる」
恋は甘えるように握っていた歌恋の手を頬に持って来て、スリスリとする。その様子を見て、愛が不機嫌になり、恋と同じ行動をとった。
「はいはい。張り合わない」
「かれんちゃん。恋ばっか贔屓しないでね」
「してないしてない。平等だよ」
従弟妹に謎の取り合いをされながら、歌恋は夏空の下を歩いていく。




