6話《独占欲の嘘》
「神薙さん、花火大会行くんだね、春宮さんと」
夕月が去った後、椎葉は歌恋にだけ聞こえる声でそう尋ねて来た。振り返った歌恋は、突然の問いかけに慌てて「うん」と返答した。それを聞いた椎葉は、小さな声で「そうか」と呟いた。
「僕も行こうと思ってるんだ、よかったら僕も混ぜてくれないかい?」
にっこりと浮かべる笑み。いつもだったら大勢でワイワイしながらお祭りを楽しみたいところだが、歌恋は申し訳なさそうにしながら断った。
椎葉にはルミが人の多いところは苦手だからと、それっぽい言い訳をした。 実際は、ただルミと二人っきりになりたいという独占欲があったからだった。
「……そっか、それなら仕方ないね」
「本当にごめんね、できれば大人数の方がいいんだけど」
「気にしないで。僕もできれば、高校最後の夏祭りを、みんなで楽しみたかったよ」
「県外の美大だよね」
「うん、だから……」
その時、近くでバイブ音がなった。自分のスマホかな?と歌恋は自分の鞄から取り出して確認するが、特に連絡などは来ていない。
「僕の方だ」
自身のスマホを操作しながら、椎葉はそう答えた。彼はじっと画面を見つめると、小さく頷いて、ポケットにスマホをしまった。
「それじゃあ僕はそろそろ行くよ」
「あぁうん」
「それじゃあ。またね、神薙さん」
小さく手を振り、椎葉はそのままレジへ向かった。
歌恋もその後ろ姿に手を振りながら彼を見送る。
「あっ、聞くの忘れてた……」




