2話《写真》
「それにしても、よく撮れてるよなー」
気持ちも落ち着いて、三人でテーブルを囲みながら歌恋が買って来たケーキを口にした。
駅前のケーキ屋の新作ケーキをむしゃむしゃと食べるが、テーブルの隅にまとめていた例の写真を、夕月は一枚一枚見ていく。
「先輩。そんなの見ないでください。汚れます」
「でも、本当にうまいぞ。盗撮写真なのが勿体無い」
夕月は見ていた写真の一枚を歌恋に渡し、彼女はそれをしぶしぶ受け取り、写真を見た。
それは学校帰りの写真で、顔は写っていないが、笑みを浮かべるルミの横には歌恋の姿があった。
「確かに……良く撮れてます」
「だろ。というかこいつ、水族館にも来てたみたいだぞ」
並べられた写真は、この前水族館に行ったときのものだった。全てルミがメインではあったが、ところどころ歌恋の姿も映ってる。ピントはちゃんとルミに合わせてあり、それ以外はぼけ、撮った人物が誰を写したいのかが一目でわかる。
「こんな至近距離に……」
「ズームだろ。こんなに近かったら、流石にバレるって」
「でも、魚以外にカメラ向けてたら不自然じゃないですか?」
歌恋はその日のことを必死に思い出そうとするが、人も数もかなり多かったため、カメラを構えていたりと不振な人物の姿はなかった。
「いったい誰が……」
歌恋は、一枚、また一枚と写真を見ていく。だけど、ある一枚の写真を見て、歌恋の動きがピタリと止まり、じっとその写真を見つめた。
「ん、歌恋?」
「先輩、どうかしましたか?」
「え、ううん。先輩、この写真、私の方で回収してもいいですか?」
「構わないが……なんでだ?」
「単純にルミの側に置いときたくないんです。思い出して、ルミが怖い思いをしちゃうから」
ニコッと笑いかけながら、歌恋はルミの頭を優しく撫でた。その自分を思ってくれる優しさが嬉しいのか、ほんのり頬を染めながら、ルミは歌恋に勢いよく抱きついた。
「すっかり仲良しだなぁ、お前ら」
しみじみと口にし、夕月は肘をつきながらケーキを貪っていく。
ケーキを食べ終え、片付けを済ませると、そのままのんびり三人で過ごした。
しかし、歌恋のスマホに母からメッセージが届き、買い物を頼まれてしまった。
「あぁ……ごめんルミ。買い物頼まれちゃった」
「いえ。すみません、急に呼び出して……」
「いいよ。またなんかあったら呼んでね」
数回優しくルミの頭を撫でてあげ、荷物を手にして立ち上がる。
「ケーキごちそーさん。気をつけて帰れよ」
「はーい。それじゃあお邪魔しました」
軽く手を振り、見送られることなく、歌恋は春宮家を出て行った。




