9話《胃の苦しさと心の痺れ》
「うぅ……ぎもじわるい……」
家に帰って部屋でゴロゴロしていれば、あっという間に夕方となった。母の呼ぶ声が聞こえていつも通りにリビングへと足を運んだ。その時、食卓に並べられた料理を見た瞬間に、歌恋の顔は青くなり、頭を抱えながら思い出した。
豪勢に並べられた食事は、母がよく作ってて楽しいと言っている凝ったものばかり。歌恋は母の料理は好きだ。だけど、量が量だった。
「さぁ、たくさん食べていいわよ」
「あ……う、うん……」
満足そうに、嬉しそうな笑みを浮かべる母親に「食べられない」なんてことは、歌恋も、すでに食卓についている父も口にすることもできず、少しばかり重く暗いトーンで「いただきます」と口にして、限界を迎えるまで胃に料理を詰め込んだ。
「あぁ動いたら吐きそう……もうしばらくはおかゆで良い気がする……胃がぁ」
ベットの上で唸り続ける歌恋。その時、ルミからメッセージが届いた。内容は明日のことで、部室に行くから付き合って欲しいというものだった。
続けて送られてきたお願いスタンプに思わず笑みがこぼれ、歌恋は了解のスタンプを送った。
「可愛いなぁ……」
不意にこぼれた言葉。心臓が甘く痺れ、幸福感で身体中が満たされ始める。頭がぼーっとして、まるで空気の中を漂っている感覚に襲われる。
「かれーん!早くお風呂入りなさい」
だが、母の声が聞こえた瞬間に現実へと戻され、歌恋はゆっくりと体を起こしてベットを降りた。
まだお腹は苦しい。だけど、それ以上に少しだけ頭がぼーっとしてしまっている。




