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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第3章_夏の恋
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2話《後輩として異性として》

「おー、懐かしい」


 更衣室で袴に着替えた夕月ゆづきは、二年ぶりの感覚に懐かしさを感じていた。


「更衣室も昔と少しも変わってないな……おっ、ここの落書きまだ残ってるのか」


 卒業してから一度も顔を出していなかったため、更衣室の様子を目にするだけでも在学中のことが嫌でも頭の中に浮かび上がる。


「あの」

「ん?あーえっと、高崎たかさきだっけ。いまの弓道部部長の」

「はい。二年の高崎慎也たかさきしんやって言います。先輩のことは存じ上げてます」

「ん?そうなのか?」

「俺が中学の頃に、高等部の試合を見たことがあってその時に」

「あぁそうなのか?なんか気恥ずかしいな」


 頬をかきながら照れくさそうにするが、高崎は尊敬するOBが来て嬉しそうという表情ではなかった。


「あの!」

「ん?」

「は、春宮はるみや先輩と神薙かんなぎ先輩って、お付き合いしてるんですか?」

「え、俺と歌恋かれん?」

「……とても、仲がいいので」


 不安そうな表情を浮かべる彼に、夕月は腕を組みながら小さく頷いた。


「とりあえずさっきの質問の答えとしては、付き合ってない。だな」

「そう、ですか」


 ホッとした表情を浮かべる慎也。そんな表情を見て、夕月は急に笑い始める。何がおかしいのかわからず、不愉快そうに「なんですか」といえば、お腹を抱えながら夕月は謝罪する。


「わかりやすいなって」

「……なんのことですか」

「まぁ俺から一言、可愛い後輩に伝えよう」


 窓によりかかり、夕月はニッコリと笑みを浮かべる。


「どんなに我慢したって、いつかはボロが出るからな。歌恋みたいに」

「え?」

「さぁて、久々に引きますか」


 大きく背伸びをしながら夕月は更衣室を出ようとした。だけど、彼の手首を慎也は掴んだ。

 特に気にした様子もなく夕月は慎也を見るが、慎也は頭の中で彼の発した言葉の意味を考えた。でも、当然それがわかるはずもなく、どうしても夕月の口から聞きたかった。


「どういうことですか」

「何が」

「神薙先輩がなんですか!」

「……あんまり大きな声出すと聞こえるぞ」

「っ……答えてください」


 言葉をかみ殺すように、外に聞こえないほどの声で慎也言った。その様子を見て、小さくため息をつきながら夕月は頭をかく。どう言えば慎也が納得するか。でも、余計なことを言って歌恋とまた喧嘩になるのはごめんだった。


「残念だけど答えない」

「なんでですか」

「俺と歌恋の間では終わったことなんだ。含みあのある言い方をした事は謝る。でもな、ただ見てるだけで満足できるほど人間の欲求ってのは単純じゃない。独占欲は絶対にある」


 夕月はゆっくりと手を伸ばし、自分よりも少しだけ身長の高い慎也の頭を撫でた。


「結果がどうであれ、いつかは伝えないといけない。後悔しないためにも」


 笑みを浮かべて、夕月は更衣室を出た。慎也はしばしその場に立ち尽くし、そのままその場で膝を抱えた。


「あぁ……勝てる気がしない」


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