11話《お出かけの後》
「ご満悦だな」
「ですね」
水族館を楽しみ、いつものように歌恋はルミを家まで送った。そのまま帰ろうとしたが、ルミがご飯を食べていってほしいと歌恋を引き止めた。まるで捨てられた子犬のような表情をするため、歌恋は断ることもできなかった。
母に晩御飯はいらないと答えれば、まるで呪いの言葉を唱えるようにブツブツとネガティブな言葉を口にした。慰めの言葉も込め、明日の晩御飯は母の好きに作っていいといえば、さっきまでの沈んだ様子とは一変して、明るい雰囲気に変わり、「遅くならないように帰ってくるのよ」と一言いって通話を切った。
「どうだった?」
「いやぁ楽しかったですよ」
「それは何よりだ」
「えぇ。それに、途中まで知り合いと一緒でしたし」
「知り合い?」
「はい。私と同じクラスで、ルミと同じ部活の椎葉です。覚えてませんか?絵で結構賞とかとってましたけど」
「んー……あんまり。顔見たらわかるかも」
「だったら、先輩も明日来ませんか?暇だったら」
明日の撮影のことを夕月には話しておらず、ルミが作ってくれている晩御飯ができるまで、詳細を彼に説明した。
「私としてもそっちの方が助かります。準備があるので、先に行かないといけないので」
「んー、まぁ明日は講義もないし、バイトも夜からだから別に構わないぞ。久々に水崎先生にも会いたいし」
「それは良かったです。ルミー、聞こえてたぁ?」
「ふえぁ!?な、なんですか?」
火を止め、お玉を手に持ってこちらへとルミはやってきた。癖のある長い髪をイルカのヘアゴムで一つにまとめて、彼女専用のエプロンを身につけている。
「合法ですよね」
「我が妹ながら、高校生に見えん」
「もう、なんの話ししてるんですか!」
「ごめんごめん。明日、私は準備で先に行かないといけないから、夕月先輩と来てってこと。流石に椎葉には頼めないし」
「兄さん、くるの?」
眉間にしわを寄せながら夕月を見つめるルミは、明らかに嫌そうな表情をしていた。
「俺だってOBなんだ。それに、歌恋がダメなら、自然と俺だろ。お前、その椎葉ってやつと一緒に行けるのか?」
ぐうの音も出ず、ルミは俯きながら小さな声で「無理」とつぶやいた。それに対して「だろ?」と答える夕月。
「嫌かもだけど、よろしくねルミ」
「おい、嫌かもってなんだよ」
「はい、嫌ですけど我慢します」
「ルミまで!?」
頷いたルミはそのまま台所に戻っていき、夕月はそのまま机に突っ伏した。
「最近、お前ら俺に酷くないか?」
「そんなことないですよ」
「いや、ないわ。俺、年下の女にいじめられる趣味ないんだけど」
「はいはい。そんなこと言わないで。はい、先輩」
「ん?」
歌恋が夕月の前に出したのは小さな袋だった。水族館のチケットをくれたお礼も兼ねた彼へのお土産。
「キーホルダー?」
「食べ物の方が良かったですか?」
「いや、いいよ。ジンベイザメかぁ。かっこいいな」
「気に入ってもらえたのなら良かったです」
「まぁな」
「兄さん、運ぶの手伝って」
「お、できたか」
「ルミ、私も手伝うよ」




