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夏の向日葵  作者: 暁紅桜
第2章_夏に感じた熱
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8話《甘さと苦しさ》

「はぁ……すごく楽しかったです」


 流れる人混みを避け、壁際に立っている二人。

 ルミは先ほどの高揚感の余韻に浸っており、そんな様子を見て、歌恋かれんも満足そうに笑みを浮かべた。


「あっ、ルミ甘いもの食べない?」

「え?」

「あそこ」


 歌恋の指差す方には水族館内にある小さなアイスクリーム屋さん。お店のそばでは、小さな子供や若い女性、カップルが美味しそうに買ったアイスを食べていた。


「食べたいです!」

「よしっ。では、お姉さんがおごってあげよう」

「え、大丈夫でよ。自分で出します!」

「いいからいいから」


 お店には八種類のアイスがあり、全ての色がバラバラで、同じ色はなく、とても綺麗だった。まるでパレットの上に並べられた絵の具のように色鮮やかだった。


「ルミ決まった?」

「えっと、私はイチゴで」

「じゃあ、私はシンプルにバニラかな」


 それぞれ店員に注文すれば、コーンに乗った白と赤のアイスが手渡される。


「んー、冷たくて美味しいです」

「だね。やっぱり夏はアイスだね」


 横目でルミの食べている様子を歌恋は見つめた。彼女が食べているいちごはピンク色ではなく、どちらかといえば赤に近い色をしていた。通常のいちごとどう違うのだろうと、歌恋は少し興味を抱いた。


「一口ちょうだい」

「えっ……」


 ルミの手首を掴んで、歌恋は彼女のアイスを人舐めした。普通のいちご味のアイスよりもとても強くいちごの味がした。しかも、自分の食べたバニラとの相性がものすごくいい。今度来た時はこれを頼もうと思いながら歌恋は「ごちそうさま」と満足そうに笑みを浮かべる。


「ルミ?」

「ず、ずるいです!」

「え!?」


 急にムッとしたかと思えば、ルミも歌恋の手首を掴んでアイスを人舐めした。


「る、ルミ……さん?」

「……ん。バニラも美味しいですね」


 お返し。と言わんばかりの満足そうな笑顔。普段の彼女からは想像できない悪戯っ子な表情だった。

 もう十分彼女の色々な表情を見たつもりだったが、初めて見たそれに歌恋の胸が少しだけ苦しさを感じた。


「先輩?」

「え?あぁ……ごめん。びっくりしちゃって」

「私だってびっくりしました。だから、おあいこです」


 壁に寄りかかって、ルミは夢中でアイスを食べ始める。

 歌恋も同じように壁に寄りかかってアイスを食べるが、胸の苦しさは消えず、ほんのり顔を赤く染めながら静かにアイスを食べた。


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