第03話 シャルロットとの出会い(石田紗菜の自信)
※このエピソードは、第01話から遡ること約7ヶ月前の「二人が初めて出会った時」の物語(サナ視点)です。
光元国歴 2013年5月1日(水) ゴールデンウイーク
わたしは、石田 紗菜と申します。
サナと呼んでください。
14歳 中学2年生です。
神様、ごめんなさい。
わたしが間違っていました。
世の中には無理というか、将棋や囲碁の詰み状態からは逆転できないことを身をもって感じましたので、ゆるしてください。
なぜ、そう考えるようになったのか、聞いてくれますか?
◇
ある日、親友のアユミが何度も何度も熱心に乙女ゲームと呼ばれるWEBブラウザゲームを勧めてきました。
物語がいい感じに進むたびに入るCMがうっとうしいゲームでした。
CMが終わるまで他のことをしていたら、CM視聴確認クイズがあるのです。
乙女ゲーム制作者は、策士でした。
「CMを見れば無料という賞品だけでは、本当にCMを見ているかどうか信用できない。
だから、CMを見ていないと答えられないクイズをCM後に出すことにしました。
という訳でスポンサーの皆さんは、安心してCM料をお支払いできます。
そして、CMを見るプレイヤーは、進行した部分までのセーブ権が掛かっているので真剣です。
それが嫌なら課金してセーブしてください」
という方式で、無料プレイできるようにしたという話を知りました。
サナ
「悲しいですね。 ひとを信じることが出来ないなんて。
CMを見ていないことがバレていたとわ。
それにしても、この制作者は賢いですね。
わたしと張り合えるくらい賢いひとはスーパーレアですね。
誉めてあげましょう。」
◇
サナは文句を言いながらも、CMも熱心に見て、セーブする権利を得て、乙女ゲームをクリアしたのだった。
サナは、ひとりのときに、乙女ゲームの感想を述べていた。
「苦労して、乙女ゲームをクリアした感想ですが、悪役令嬢のシャルロットの打つ手が甘すぎますね。
オソラゼル王太子の婚約者の座が大事なら、ヒロインのスィーティを責めるのではなく、オソラゼル王太子を攻めるべきでしょうに。
安っぽい挑発に乗りすぎですわ。
ヒロインのスィーティが裏で笑っていることが想像できますわ。
どこからか、美しい女性の声が聞こえてきた。
「言うは易し、行うは難しですよ。
そこまで言うなら実際にやってみませんか?」
サナは、返事をしてしまった。
「はあ、わたしが口先だけの三下だと言うのか?
だったら、悪役令嬢をわたしが言う通りに動かしてみてよ。」
美しい声は、くすくすと笑いながら、サナに返事をした。
「ディスプレイの中の世界に入れてみろ!ですか?
屏風に描かれた虎を追い出せと言う小坊主と逆ですね。
良いでしょう。
向こうにも聞いてみるのでお待ちください。」
サナは待たされることに、いらだってしまった。
「誰だか知らないけれど、時間稼ぎですか?
いつまで待てばいいですか?」
美しい声が律儀に名乗ってくれた。
「わたしは、第8神 願望実現の女神 グローリア と申します。
お待たせしました。
では、こちらをご覧ください。」
グローリアという女神が、手のひらを向けて示す方向を見ると、四角い窓が有った。
窓の中には、金髪縦ロールの美しいが気の強そうな女性が驚いたような目で、まばたきをしながら、私を見ていた。
女神グローリアは、咳ばらいをひとつしてから、説明を始めた。
「では、石田 紗菜と シャルロット・ホワイトウィングの人間関係を築きましょう。
ふたりでチカラを合わせて、それぞれの願望を実現するために、協力してくださいね。
あなたたちの未来がより良くなることを願います。
それでは、シャルロットは、紗菜にお願いしてください。
セリフは覚えていますね。」
金髪縦ロールの美しいが気の強そうな女性が、大きく縦に首を振った。
シャルロットという名前のようだ。
シャルロットは私に右手を伸ばしてきた。
私は、女神 グローリアにうながされて、左手を伸ばすことになった。
わたしたちの手のひらが重なった。
シャルロット・ホワイトウィングは、女神グローリアから教わったであろうセリフを言い放った。
「もう一人のワタシ! チカラを貸して! ソーシャライズ サナ!」
「socialize」(別表記:ソーシャライズ)とは、社会的な交流を持つ、人間関係を築く、または他人と親しくなることを意味する英単語である。(出典:weblio.jp)
一瞬だけ、ふたりの手のひらが光り輝いた。
◇
シャルロットは、目を瞬きさせて驚いている。
先ほどとは、シャルロットの雰囲気が変わっていた。
シャルロットの身体に宿る魂は、サナの魂に入れ替わっていた。
サナのこころの声が聞こえてきた。
『なんということでしょう。
わたし=石田 紗菜は、シャルロットに呼ばれて、入れ替わってしまったようです。
そして、目の前には、ゲームの中に描かれていた豪華なベットや家具がありました」
第8神 願望実現の女神 グローリアは、入れ替わったことを見届けて、満足そうな笑顔を見せていた。
「では、石田 紗菜と シャルロット・ホワイトウィングの願望である
「ヒロインとの戦いに勝利」
を頑張ってくださいね。
できるまで元の世界には帰れませんし、断罪されて処刑されたら、ゲームオーバーです。
そのときは、来世に期待しないでくださいね。
まったねー」
女神グローリアの姿は、サナの目の前から消えてしまった。
◇
サナに背を向けて、神の世界に戻ったグローリアは、自分に酔いしれていた。
「二人の少女の魂を入れ替えることで、二人の少女の願望を実現させる。
これぞ、【一石二鳥】、いいえ、1回の奇跡で、二人の少女が幸せになれるのだから、
【一跡二幸】かしらね。
二人の少女の需要と供給が一致した幸運に感謝しましょう!」
サナの乙女ゲームに対する感想は、
【知恵を提供したいという供給欲求】
として、女神グローリアに解釈されたのでした。
◇
シャルロットの中にいるサナは、グローリアがいた場所に向かって、文句を言っていた。
「ちょっと待って、これはダメでしょ!」
もう居なくなったけれど、そこに向かって言うしかなかったからだ。
部屋の外から、バタバタと走ってくる音が聞こえる。
ドアがバンと大きな音をたてて開き、メイドが入ってきました。
「どうしましたか? 至らない点があれば、おっしゃってください。」
メイドの声が震えている気がした。
サナは震えるメイドを見ながら、理由を考えていた。
『そうか、オソラゼル王太子との仲良くできないから、シャルロットは情緒不安定で不機嫌をまき散らしているのね。 そう言えば、不機嫌ハラスメントって言葉があったなあ。』
メイドが、これ以上、おびえることが無いように、シャルロットの中にいるサナは、笑顔で優しく話しかけた。
「ごめんね。 びっくりさせちゃったわね。
愛しのオソラゼル王太子が、スィーティという女の子に夢中になっていることがダメだと思うのよ。」
メイドは胸に右手を当てて、まっすぐな目で、シャルロットに反論した。
「サステナは、いいえ、わたしは、シャルロット様には、ばか兄のオソラゼル王太子よりも、賢い弟ダイチゼル王子の方がふさわしいと思います。
あんなのスィーティという世間知らずにくれてやれば良いではありませんか?」
先ほどまで、おびえていたとは思えない堂々とした話し方に圧倒されてしまったサナだったが、メイドの言葉には価値ある情報が含まれていた。
『このメイドは、サステナというのか?
シャルロットの記憶によると、小さいころから支えてくれる頼りになる存在だけれど、自分の意見を押し付けてくるところが、うっとうしいときがある。
なるほどね。 でも、サステナは正しいわ』
サナは、サステナの手を握りながら、感謝の気持ちを伝えた。
「ありがとう。 サステナ。
ダイチゼル王子の名前は久しぶりに聞いたわ。」
サステナは、シャルロット(中身はサナ)の目に知性の輝きを感じたので、進言するチャンスだと安心した。
「そうですね。
シャルロット様が最後にお会いになった日は、3年ほど前になりますね。
後継者争いにならないように、辺境で修行させられているのでしたね」
サナは、ダイチゼル王子の存在は特別だと感じた。
なぜなら…
『わたしの胸がドキドキしている。
どうやら、シャルロットにとっては、ダイチゼル王子の方が魅力的に感じるらしい』
サナは、ダイチゼル王子の情報を集めたいと考えた。
「そうね。 ダイチゼル王子はお元気かしら。」
サステナは、自分のことでもないのに、胸を張りながら鼻高々という様子で語りだしてくれた。
「大丈夫ですよ。
王太子ではないという一点を除けば、あらゆる面において、オソラゼルよりもダイチゼル王子の方が魅力的ですからね」
サナは、サステナが不敬罪に問われないように、注意することにした。
「サステナ?
呼び捨てではなくて、王太子を付けましょうね。」
サステナは悪びれた様子も無く、素直な返事をしてくれた。
「はーい。 でも、災い転じて福となすですよ。
ダイチゼル王子にお手紙でも書けばどうですか?」
サナは、その提案に賛成という気持ちで答えた。
「そうね、そうするわ。
サステナのおかげで、気持ちが軽くなったわ」
「良かったですわ。
それでは、手紙を書き終わったころに一休みできるように、お茶の準備を致しますね」
「ありがとう。 よろしくね。」
『手紙を書くことで、頭の中がすっきりした。
絶望的に思われた状況だが、なんとかなりそうだ』
サナは気持ちの整理がついて、晴れやかな顔でつぶやいた。
「わたしが本命じゃない男性って、どうでもいいのよね。
というわけで、オソラゼル王太子は、さよならしてもいいや」
サステナが入れてくれたお茶を飲みながら、サナは次の一手を考えていた。
◇
貴族が集まるパーティ会場。
貴族たちのご子息や御令嬢が多く集まる社交パーティは、情報交換や腹の探り合いをするために、重要な場所だ。
料理に手を付けるよりも会話が優先されていた。
手に持っている飲み物も、あまり飲まれていなかった。
そこには、着飾ったシャルロット(中身はサナ)の姿も有った。
『わたしは、久しぶりに、社交界に来ていた。
映画に出てきそうな美しいドレスで着飾った女性たちが扇子を口元に当てて、ひそひそ話をしながら、こっちを見て大笑いしていた。
うんうん、分かるよ。 人の不幸は蜜の味って、ゲームの中の異世界でも変わらないのね』
貴婦人Aが、シャルロット(中身はサナ)に近づいてきた。
「まあ、シャルロット様、よくパーティに参加する気になれたわねえ。
わたしだったら、自分の部屋で寝込んでいますわ」
サナのシャルロットは、驚いた表情を見せながら返事をした。
「まあ、お身体の調子が優れないのですか?
無理なさらないでくださいね。
でも、あなたが話しかけてくださったおかげで、ここに来て良かったと思いましたわ。
ほとんどの方は遠くから見るだけですからね」
貴婦人Aは、顔をゆがめて怒り出した。
「公爵令嬢の貴女に話しかけてくるなんて、礼儀知らずだとおっしゃりたいの?」
サナのシャルロットは、落ち着いたまま優しく返事をした。
「パーティに参加してきたひとに声を掛けることは、歓迎のためではありませんか?
ここについて一番に声を掛けてくださったあなたと最初の一杯の紅茶を飲みたいですわ。
今日、美味しかったケーキを教えてくださいませんか?」
貴婦人Aは、きょとんとした顔をしていたが、いっしょにケーキを食べてくれた。
サナのシャルロットは、ケーキを食べ終わったあとで、貴婦人Aに笑顔で話しかけた。
「あなたのおかげで、パーティの良いスタートを切れました」
わたしたちは笑顔で分かれて、つぎの社交相手を探しに行った。
◇
『次は誰に話しかけようか?』
サナのシャルロットは、会場内を見渡していた。
しばらくすると、ヒロインのスィーティが目に入った。
探していなくても、Gがカサカサ歩いていたら、気付いてしまうようなものなのだろうか?
※G=ゴキブリ
シャルロットの取り巻きたちが、ヒロインのスィーティを取り囲んで、なにやら文句を言っているようだ。
そして、スィーティは、声を殺して涙を流していた。
『あっ? なんて上手なウソ泣きだろう。
私と仲良くなれそうだ』
と感じたけれど、
『ここは、シャルロットの利益になるように動かなければならない。
つまり、オソラゼル王太子からは波風を立てずにフェードアウトしたい。
つまり、お別れしたい。
普通、別れ話をしようものなら、男が逆上して殺しに来るものだが、向こうから他の女性に心変わりしていくれるなんて、カモがネギしょって来た。
いや、違うな、渡りに船というべきか。
海が二つに割れて道ができるようなくらい嬉しい』
と感じる。
サナのシャルロットは、シャルロットの取り巻きたちに近づきながら、周囲の人たちに聞こえるように大きな声で、かつ、穏やかな声で言いきった。
「あなたたち、なにをしているの? おやめなさい。」
取り巻きたちは、まさか、シャルロットに止められるとは予想していなかったようで、きまり悪そうに言い訳を始めた。
「ですが、わたしたちはシャルロット様のために、無礼者を説教しているのですわ」
わたしは、心の中で思った。
『うわあ、出た。 お為ごかしだ。
誰誰のためと言えば美談になると信じている卑怯者は、ゲームの中という異世界にもいるのだな。
そう言えば、人付き合いが上手という奴は、いじめの尻馬に乗る奴が多かったな。
やれやれ』
サナのシャルロットは、キッと取り巻きたちをにらみ据えながら、はっきりと言い切った。
聞き耳を立てている連中の耳に届くように、大きな声でゆっくりと告げた。
「わたしは、そんなことを望んでいません。
今すぐ、おやめなさい」
取り巻きたちは、納得できないのか言い訳を止めなかった。
「でも、それだと、シャルロット様が可哀そうすぎます。」
サナのシャルロットは、あきれたように、意味が分からないという表情を見せながら、問いただした。
「わたしは、かわいそうなのですか?
どうしてですか?」
わたしの訳が分からないという表情を見て、取り巻きたちは自分たちの正当性を主張しようと懸命だった。
「オソラゼル王太子は、シャルロット様の婚約者です。
それなのに、色仕掛けで間に割り入ろうとするこの女が悪いのですわ。」
サナのシャルロットは、そろそろ逃げ道を作ってあげようと考えていた。
「あなたたち、婚約というのは、お試し期間です。
結婚してからも上手くいけそうかどうかを確認するためです。
ですから、婚約期間中に現れてくれたスィーティさんには、感謝しかありませんわ。」
取り巻きたちは、意外そうに驚いていた。
「そんな!
シャルロット様は負けを認めるのですか?」
サナのシャルロットは、ますます訳が分からないという顔をして見せた。
「なぜ、負けになるのですか?」
取り巻きたちは、もう言い返すネタが思いつかないようだ。
「そ、それは…」
サナのシャルロットは、長い話を終わらせるタイミングは、ここだと考えていた。
「まとめに入りましょうか?
恋愛は自由です。
誰が誰を好きだ!という気持ちは止められませんし、変えられません。
それに、文句を言う方が間違っています。
もし、あなたたちが、わたしのことを好きだと言ってくださるのなら、二度と、このようなことはしないでください。
わたしを好きになってくださる方々が、誰かを泣かせているなんて、耐えられませんわ」
ワタシは、涙を浮かべた。
ウソ泣きなら、わたしの方が得意だ。
感動した物語を思い出したら、涙なんて自然と出てくる。
ワタシの推しヒロイン※が、
「冬香、冬香ー」
と泣きだしたシーンを思い出したら、秒で泣ける。
※理想の美女7人に愛される生活。
062【挿絵】 13日目 冬香、一番大事な女性
取り巻きたちは、ようやく、今が引き際だと気づいたようだ。
「シャルロット様、ワタシたちが間違ってましたわ。」
サナのシャルロットは、満足そうな笑顔を取り巻きたちに向けた。
「分かってくださって、うれしいわ。
次に誰かを泣かせたら、あなたたちとの美しい友情は神にお返ししますわ。」
『そうなったら、うちとの取引が無くなって、財政難になって、パーティに出るどころじゃなくなるぞ。と脅しをかけてやった。
さすがに、シャルロットを大義名分にしたイジメはできないと理解しただろう』
ワタシは、取り巻き連中の青ざめた顔を見て、
『ようやく理解したか』
と思えたのだった。
◇
社交パーティの翌日、ワタシは、シャルロットの父と兄に、心配そうな顔で詰め寄られていた。
パーティで、わたしがオソラゼル王太子をあきらめたという噂が、わたしの父と兄に伝わったからだ。
父は、シャルトット(中身はサナ)の真意を知りたいようだ。
「それで、シャルロットは、それで良いのか?」
サナのシャルロットは、涼しい顔で答えた。
「オソラゼル王太子のことですか?」
兄は、シャルロットの味方だとアピールしたい様子だった。
「わたしの可愛いシャルロットを泣かすなんて、ゆるせん。」
サナのシャルロットは、平静な表情で兄に、今の心情を説明した。
「泣いてませんよ。
憑き物が取れたかのように晴れ晴れとした気分です。
それよりも、ダイチゼル王子との婚約を進めて頂けませんか?
オソラゼル王太子の心変わりという負い目があるから、先方も断ったりしないでしょう」
兄は、ワタシの冷静な様子に驚きながらも、提案に賛成してくれた。
「お前というやつは?
でも、兄は、ダイチゼル王子の方が好きだな。」
サナのシャルロットは、うんうんとうなづいた。
「わたしもですわ。
お父様、王様関連の利権については、影響ないですよね。
取引停止にならない限り、わたしは、王様に文句を言う気が有りません。」
父は、シャルロットのしたたかさに、一瞬、思考が停止した後で、ひとこと言った。
「シャルロットは、しっかりしているな。」
サナのシャルロットは、当然ですわという表情で、ことわざを暗唱した。
「お金こそ、この世のすべて。
お金において、なにに寄る辺ぞ。
ですわ。」
兄は、妹の現金さに安心したのだろう。
「その割り切りが見事としか言いようがない」
父は、娘が良いなら、いいだろうと達観していた。
「では、王様には、ダイチゼル王子のことを頼んでおこう。」
ホワイトウイング家の家族会議は結論が出たのだった。
◇
王宮にて…
そのころ、オソラゼル王太子は、スィーティさんを王様と王妃様に紹介していた。
オソラゼル王太子は、興奮しながら、今が人生最高のときという様子で、両親に報告した。
「父さん、母さん、ボクたちは愛し合っているんだ。」
スィーティも、オソラゼル王太子に続いた。
「シャルロット様も、わたしたちの仲を認めてくださいました。」
王様は、信じられないという感情を込めて、ふたりに確認した。
「そうなのか?」
王妃様は、冷ややかな笑顔で、スィーティさんに問いかけた。
「スィーティさんのような美しいお嬢さんはスーパーレアですわ。
本当に、オソラゼルを愛してくださるの?」
スィーティは、しめしめとばかりに笑顔で愛想よく答えた。
「もちろんですわ。」
王様は仕方なさそうに、ひと息ついて、結論を下すことにした。
「では、オソラゼル。
平民として暮らすが良い。
異国の地に送るまでの間は、ふたり一緒に幽閉することにする」
オソラゼル王太子は、まだ状況を理解していない…
「幽閉とはいったい」
王様は、あきれ果てていた。
「分からないのか?
シャルロットを射止められなかったお前には、なんの価値も無い。
王太子は、弟のダイチゼル王子に変更する」
オソラゼル王子は、冷や汗をかきながら、自分の失敗を無かったことにしたいらしい。
「おまちください」
王様は、もう遅いという表情で返事をした。
「待ったら、いくら払ってくれるのだ?」
オソラゼル王子が助けてもらおうと母親である王妃様を見たのだが…
「美しい母を見て育ったから、美人に免疫があると期待していたのですが、全然でしたね」
計画が狂ったスィーティは、沈む船から逃げ出すねずみのようだった。
「そんな? 王太子ではないオソラゼル王子には魅力を感じませんわ。」
王妃様は、スィーティにとって無慈悲な、とどめの一言を返した。
「これからは、ふたり仲良く暮らしてくださいね」
王妃様は、スィーティに満面の笑みを向けたが、冷たい微笑みだった。
オソラゼル王子とスィーティは、衛兵に連れられて、王宮を追い出されたのでした。
◇
オソラゼル王子とスィーティに対する処置は、すぐに、ホワイトウィング家の当主である父に知らされた。
オソラゼル王子とスィーティが平民として、国外に出されることを除いては、なにごとも無かったように、事態は終息したのだった…
シャルロット(中身はサナ)は、安心したと同時に、達成感を感じていた。
白と黒をひっくり返すゲームで、最後に逆転したような気分だった。
『というように、無理ゲーだと思った悪役令嬢の逆転劇が、あっさりと実行できてしまった。
いいや、うぬぼれたら、また、あのグローリアという女神にどんな難しいゲームをさせられるか分かったものじゃない。
しばらくは謙虚に慎ましく生きようと心に誓った』
将棋や囲碁で、感想戦をするように、サナは勝因を分析していた。
『思い返せば、メイドのサステナのおかげで冷静になれた。
彼女がいなかったら、頭に血が上って、スィーティを暗殺する方法を考えていたと思う。
そうなったら、大失敗した所だ』
「だから、日記に書いておこう」
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サステナが支えてくれたおかげで、運良く上手く行った。
サステナのことは、高い給料を払ってでも傍に仕えてもらうべきだ。
ぜったいに、金を惜しんではイケない。
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差し当って、お父様に高級ケーキをおねだりして、サステナといっしょに食べたいと二人分を買ってきてもらった。
サステナは、高級ケーキを美味しそうに食べてくれた。
「シャルロット様、こんなに美味しいケーキは生まれて初めて食べました。
わたしは幸せです」
サナのシャルロットは、サステナに御礼が出来て満足していた。
「そう良かったわ。
これからも色々なケーキを食べましょうね。」
サステナは、目を輝かせて喜んでくれた。
「シャルロット様、うれしいです」
サナのシャルロットは、サステナを仲間にしようと考えた。
「そして、いっしょに太りましょうね」
わたしは、ニンマリと笑った。
サステナの笑顔が消えて、真面目な顔で断られてしまった。
「それはダメです。
太ったら無価値になります。」
サナのシャルロットは、冷や汗をかきながら、文句を言った。
「サステナは厳しいな」
と、ふたりで笑いあった。
◇
光元国歴 2013年11月1日(金)
サナが気が付くと元の世界に帰っていた。
第8神 願望実現の女神 グローリアが、目の前に現れた。
「石田 紗菜 素晴らしかったですわ。
シャルロット・ホワイトウィングとのソーシャライズは大正解でしたわ。
これからも、おふたりの頑張る姿を楽しみにしていますわ」
と言い残して、グローリアという女神は去っていった。
ワタシは、
『これから”も” という言葉が引っ掛かった』
が、気にしないようにしたかった。
ただし、もとの世界に戻ってきたら、6ヵ月も経過していた。
そして、シャルロットの6カ月についての記憶が私の頭の中に流れ込んできた。
そして、ワタシの日記帳にも、いろいろと書かれていた。
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あなたの素晴らしい成果に感謝します。
御礼として、それに見合う成功を収めておいたわ。
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ワタシが【成功】の内容について知るまで、2~3日も掛からなかった。
第03話 おわり
お読みいただき、ありがとうございます。 作者のサアロフィアです。
読者の皆様に、【大切なお願い】があります。
少しでも「続きが気になる!」「面白かった!」と思っていただけましたら、 【ブックマーク】と、 広告枠の下にある【☆☆☆☆☆評価】で応援していただけると、執筆の励みになります!
目安はこんな感じでお願いします!
★☆☆☆☆ 「つまらなかった」(苦情の代わりに!)
★★★☆☆ 「まあまあかな」
★★★★★ 「最高!」「更新がんばれ!」
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